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【シャニマス二次創作】ノーカラットより引用【帰ってきた泥酔合同web再録】


はじめに

※泥酔合同とは?などの説明です。知っていて本文に興味がある方は次章が本文です。

〇帰ってきた泥酔製作合同とは?
 作者(作り手) ”” 泥酔でシャニマス二次創作をする合同誌の第二弾です。主催は犬飼さん。
 「酒を飲む →書く(描く) →推敲しない、書いて即送り付ける
という愉快で、主催する側も参加する側もんかどうかしてる合同誌だ!

https://x.com/283DeeeepDrunks/status/1736763393242280287?s=20

今はシラフなのに埋め込みリンクがうまくいかない、どうして、まぁいっか

〇レギュレーションどすえ
 再掲許可が出た、というか決められているので再掲します、なお再掲の際にはレギュレーションとして、推敲や修正が認められています、、修正推敲していません。誤字もそのままお楽しみください。先に謝っておきますが、キャラクタ名で誤字があります。本当にごめんなさい。

シャニマス泥酔合同寄稿 『ノーカラットより引用』 俵田圭一/ケイ

 283プロダクションのプロデューサーは兎にも角にも「いい人」である。
 「へぇこれイギリスのウイスキー?炭酸水もなんだ、へぇ~、旅行番組はテッパンだよねぇ。 今度ウチでもやろうか、イギリス行きます!略してイギます!なんちゃってね」
 ばはははは、とさほど面白くもない中年男性の下ネタと判定するにはギリギリのジョークに場がにわかに湧いた。特別面白いと思わなくとも笑い声というものは上げられるものだが、その盛り上がりが彼がその場で一目置かれる立場である査証である。彼の隣で控えめに笑っている好青年がプロデューサーであるが、どことなく困ったように口角を歪めており、あまり快く思っていないのは明らかだ。彼にとってこの飲みの場はほぼ仕事、つまるところ接待であるのであった。ここから快くもない業界人の飲み会の様子を書き連ねても良いのだが、正直こういった描写は読者の没入感を高めることができる効果を期待して入れるものであるので、読者各位にはそれぞれ経験のある、あんまり面白くもないのに強制的に参加させられ、しかも相手が酒豪の時を思い出して欲しい。
 かいがいしく周囲の様子を確認し、料理のとりわけやお酌をこなしていたプロデューサーだが、先ほどまで上機嫌だった先方上司が不気味なまでに沈黙していることに気がつくのが遅れてしまっていた。どれだけ明るく饒舌な人間でも、皆一様に沈黙するそれはつまり合図でもあった。荒い呼吸に、時折混じるしゃっくりが不気味に響いて、プロデューサーが慌てて水のジョッキをそっと握らせた瞬間だった。イギリスじゃなくてシンガポールでしたね、ついそうこぼしたシャニPのシャツに激しく余波を飛び散らせながら、胃の中身を逆流させたのであった。
 「神様みたいにいい人でした。」
 それ以上の会を続けるような空気にも嫌な顔一つ見せず介抱をし、タクシーにその上司をのせる彼を見て、そうこぼしたのは参加者の一人である。

 283プロダクションの休業日は、設定上水曜日ということになっている。接待は火曜の夜で、なんだかんだと参加者の介抱だの挨拶をして、シャニP自身がタクシーに乗り込んだのは日付が変わるころであった。タクシーの運転手に告げ到着したのは、勝手知ったる283プロダクションである。どこまでもワーカホリックな彼は、自宅に帰るにせよ、接待の場に持っていく訳にもいかないしと資料を取りにやってきていた。おおよそは店舗でふき取ったとはいえ吐しゃ物で汚れたシャツをビニール袋に詰め込み、なんだかんだと彼も飲酒をしていた影響だろう、どこかしらしみついていそうで気分が悪かったので、シャツの下に着ていたTシャツも脱いでしまって、一緒に袋に詰め込んだ。こういった時の為に事務所のデスクに常備してあるはずのシャツを取り出そうと、引き出しをがらりと空けたが、そこになにも入っていない。そういえばこの間コーヒーをこぼして使ってしまったのだったということに気づいたシャニPは、どうももう取り出して着る気にもなれないシャツと、念のためもう一度何も入っていないデスクの引き出しを確認し、なんてことだと天を仰いだ。
 幸いなことにズボンは汚れずに済み、脱いでいないし、社用車までの距離を半裸で走り抜けてしまおうかとも考えかけたが、深夜のアイドル事務所から半裸の男が走り出して高級車に乗り込むなんて、万が一のことがあればとんだ事件である。それに酔いが醒めるまで運転する気はないとはいえ、飲酒後に社用車に乗り込むのもリスクだ。幸か不幸か時間は遅く、時間がかかるがこれしかないかと、まだ汚れが少ないTシャツを流しで思い切りジャバジャバと水洗いをした。朝になるまでには乾いているだろうそれをもう一度着るしかないだろう。問題はそれまでの服装であった。
 朝になったら去るつもりだし、このまま過ごすというのもひとつの選択肢ではあったが、いつでも来れるようにと事務所の合鍵を所持しているアイドルがいつやってくるか分からない以上、流石にそれは避けたいものだ。しかし、予備のシャツがない以上、ここにはもうエプロンしかない。スーツのズボンに半裸エプロン姿で出迎えるくらいなら、まだ着ていない方がマシな可能性すらあった。当然アイドルの衣装を着る訳にもいかない、そもそも入らないし、と頭を片手でガシガシとかきむしり悩むシャニPの脳裏にひらめいたのは、数週間前に届いていた小包だった。
 それは、事務所の確認前ファンレターの山の中、更には要チェック用品の箱に放り込まれたままだった。手作りにせよ既製品にせよ、ちょっとしたぬいぐるみなどはよく届くものの一つであるのだが、アイドル事務所という特性上、それをそのまま本人に渡すのは危険であるとして、簡易とはいえ金属探知などをかけるのも彼の仕事の一つである。一度開封して中身を確認し、半笑いでもう一度その袋に戻したそれは、アグリーセーター、とんでもないセンスのセーターであった。

 なぜそんなものが届いたのかと言えば、直接的にはクリスマスまで遡る。白瀬咲夜がプロデューサーに送った虹色のアグリーセーターに、田中摩美々の虹色アグリーマフラーをきちんと着用し、その写真はアンティーカのメッセージツールで共有されて、全員が笑顔になった出来事で終わっていれば良かったのだが、運悪く、いや運よくだろうか?その直後にグループで出演した番組の、しかも生放送のトークコーナーで、最近のお気に入りとしてついそのことについて言及してしまったのである。
 「あれ、なんやったっけ? 咲夜が贈っとった、すごかセーター!」
 「あぁ、アグリーセーターのことかい? ふふ、事務所でちょっとしたパーティのようなことがあってね」
 「あはは、あれは確かに面白かった、来年はぜひみなさんもサンタ服じゃなくアグリーセーターもご候補に!」
 「アグリーって、いいよって意味やったっけ?」
 「恋鐘ちゃんそれは……agree……」
 Uglyとは違う単語であるという霧子の訂正は残念ながら届くことはなく、むしろ恋鐘の疑問に加速をつけてしまった。
 「いいよセーターってこと? 枕みたいやね~」
 朗らかに笑う恋鐘に深い意図はなくとも、どうしようもなく展開しずらい話題である。この場にいる人間にはちゃんとそれは伝わっても、センセーショナルに発言の一部を切り出されてしまうこともあり得るしと、アンティーカの視線が交差する。誰がどうフォローをいれようか、そんな逡巡の中、霧子が彼女にしては思い切りよく声を上げた。
 「ま、摩美々ちゃん……! カナダ出身の、、様々なジャンルのロックを歌うシンガーソングライターさん……の名前は……!」
 「えっ、……えっ?」
 困惑という感情をありありと見せつける摩美々に注目が集まる。その状況に少し焦ったような困ったような表情を見せたが、数瞬後、どうにもキツネにつままれたような顔で頬を震わせながら口を開いた。
 「ア、アヴリルラヴィーン……」
 普段はあまり見せない困惑顔に、五人での仕事の際は控えめであまり主張をしない印象の霧子の突然の高難易度クイズ、あまりのシュールさに視聴者の脳内は引き寄せられ、アヴリルラヴィーンは見事トレンド入りを果たしたのであった。
 そうやってうまいこと誤魔化すことができたとはいえ、その会話のきっかけになったアグリーセーターに注目をしたファンも少数いたようである。数着のアグリーセーター、しかもいったいどうやったらそれを売ろうと考えたのだろうかと思う様なデザインのセーターが、プレゼントとして届いていたのである。

 裸の素肌にそのアグリーセーター、そのサイズしかなかったのか、成人男性サイズであるを着たシャニPは、改めてまじまじと見降ろしてその異様さに慄いた。胸から二股に分かれたサメの顔面が立体的に飛び出し、背中側に尻尾が飛び出ている。それを着て立っていれば、サメが着用者の胴を突き抜けているように見えるだろう。外に着て出るのはもちろん、例え内輪のパーティでジョークとして着用するにも邪魔である。でもまぁ、裸でいるよりはましというものだろう、Tシャツが乾くまで仕事でもしようかとも考えていた彼だったが、胸の前で揺れる二つのサメの頭をいなしながら集中するのは無理だと早々に諦めて、少し休もうとソファに座り込んだ。
 そうするとなんと意外に落ち着くのである。背中から飛び出しているサメの背がソファとシンデレラフィット、ゆったりと息をついた彼の意識は、心地よい酔いの酩酊の影響もあり、ゆったりと沈んでいったのだった。

 プロデューサーが胸からサメを二頭突き出して眠り込んでいる。
 平日の朝に事務所へやってくるのは、学生ではないアイドルたちになるが、この日所用で朝事務所にやってきていたのは、桑山千雪であった。
 最初、なんだこの状況はと困惑を見せた千雪であったが、彼女が事務所に立ち寄ったのも大きな用事ではなく、この後はそこまで気乗りのしないような寮の自室で家事などをする予定だったのもあって、ぐっすりと寝入っているシャニPの寝息に合わせてゆらゆらと揺れるサメの素朴な表情は、正直彼女好みでもあり、珍妙なその状況に彼女一人が同居していることに、彼女の創作意欲が猛烈にかきたてられてしまったのだった。
 衣装の修復や、ちょっとしたアクセサリーの自作なども可能なようにと、事務所に置いてある端切れや素材をかき集め、彼女の燃える創作意欲はシャニPの胸のサメのアレンジを猛烈な速度で完成させていく。
 右のサメはあれよあれよと緑のロングヘアーが生え、それらをあえて緩めに後ろでまとめられ、柔らかい印象の眉をつけ足され、小さなぶち柄の猫のアイマスクを額にそっと添えられれば、それはもう誰がどう見ても283プロダクション事務員の七草はづき……のサメであった。
 左のサメには頬に線を入れ、どことなく厭世的なような、鋭くも優しく見守っているような目つきに調整していく、伝わりづらくはあるが、見る人が見れば分かるだろう、プロダクション社長、天井努……のサメである。
 驚くべくは彼女の集中力に、彼の眠りの深さだろうか。スヤスヤと響く寝息が、死んでいる訳ではないという証拠になっていたし、一通りの作業を終えた千雪はじっくりと三人、いや一人と二匹、……いや一人だが、を見つめ、自分の仕事に満足げに息をついた。はづきに関しては付き合いも長い、参考資料もなくともかなりの再現が出来たのではないかと思えたが、社長に関しては難しかった。顔を見る機会がない訳ではないが、独特の気配を演出するには繊細なハサミの技が必要である。引きで全体を見てみれば、やはり社長ザメの調整が甘い、天井だけに、なんてことを思いつつ、千雪は事務所に常備している愛用の裁ちばさみをぬらりと光らせる。この調整が大事なのだ。
 「おはようございます」
 「―――――えっ」
 美琴さんは、どう思ったんだろう
 この最悪な
 メンバーのこと

 スヤスヤと眠るシャニP、胸で揺れる事務員ザメに社長ザメ、真剣な顔で裁ちばさみを構える桑山千雪。
 さらりとデスクからレッスン場の鍵を借り、そのまま自然と外に出た緋田美琴はつぶやいた。
 「本当変わってるよね、この事務所。」

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