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『特殊効果技術者になるには』小杉眞紀、山田幸彦 (著)、ぺりかん社

 時々、手に取るんですが、ぺりかん社の「なるにはBOOKS」シリーズは、新しい職種の実際がどうっているかを知りたい時に便利。実はいまの中高生向きということもあって、新しい仕事をどんどんカバーしてくれていて、村上龍の『13歳のハローワーク』がどんどんアップデートされている感じ。今回はCGや特殊メイク、ミニチュアなど映像に特殊効果を加える技術者が紹介されているので読んでみました。

 『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞で日本映画として初めて米アカデミー賞へのノミネートを果たすなど、日本の特殊効果は海外でも高く評価されるようになってきました。(ちみにクリストファー・ノーランの『オッペンハイマー』はノミネートを逃しています)。『スター・ウォーズ』『未知との遭遇』『エイリアン』などが授賞したこの賞を日本映画が獲れば、どれほど大きなインパクトか…と楽しみなんですが、かつて日本の特殊効果部門はちょっと緩いというか寂しささえ感じていました。しかし、冒頭の現場インタビューに登場するVFXスーパーバイザーであるオダ・イッセイさんなどの熱い仕事っぷりを読ませてもらうと、こんなに頑張れることができる面白い仕事なんだな、ということがよく理解できます。

 また、実際の仕事の流れも企画、脚本段階のプリプロダクションから関わるなど、原題の映像作品(舞台も含む)に特殊効果がどれほど重要視されているかが理解できます。

 サイレント映画時代にみずからメイクして『オペラ座の怪人』などを演じたロン・チェイニーという役者のことや、『鎌倉殿』から大河ドラマでも使われるようになったインカメラVFXは書き割り→スクリーンプロセス→グリーンバックへのCG合成という技術の進歩に沿ったものだということが納得的に説明されていて、特殊効果がいかに映像作品にとって欠かせない分野であるということも理解できます。

 CGは大きく2DSGと3DCGに分けられるが、それを合わせるコンポジット作業でひとつの映像になるなど、現代の映像作品解説としても楽しめます。

 オダさんも所属するナイス・デー社に所属する技術者のインタビューが多いのですが、いまや週休2日で残業も少なく収入面でも一般企業と差がない状況になりつつあるというのには驚きでした。昔は徹夜が当たり前みたいな職種だったのに。

 でも、実際に、こうした業界に入るには「映画が好き」という情熱が大切というのは、中高生にとっては貴重なアドバイスにもなっている、とか。パイロ(爆発)も大きなジャンルなんだな、とか色々、学べました。

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