見出し画像

2023年度広島叡智学園『ズシッと』入試分析(国語分野)【最新!】

※2023/07/16:追記
2023年8月6日(日)・20日(日)に「叡智1次選抜対策 夏期講座」をオンラインで実施します。
毎年、大変ご好評をいただき、定員枠もございますため、お早めにご確認ください。(下記より詳細をご覧いただけます)

こんにちは!公立中高一貫校対策のiBASEです。

4月2日に、広島叡智学園の最新年度の適性検査が
公開されました。

入試終了後のヒアリングで、
「問題、変わってる!」
と聞いていたので、この日を待ち望んでいました!
(当日問題を持ち帰ることはできません。)

問題を分析していると、
「なぜ広島叡智学園は入試傾向を変えたのか」
「広島叡智学園が育てたい国語力とはどのようなものか」など、様々な思いが伝わってきました。

本記事ではそれらを、少し専門的な知識を織り交ぜながら出し惜しみはなく「ズシッと」共有したいと思います。

『サクッと』概観をご覧になりたい方は、こちらをチェック!

※以下の記事は具体的な設問について言及しています。広島叡智学園に挑戦する方は、
「納得のいくまで」
「時間無制限で」
自分の力で格闘することをおすすめします。


出題形式

問題文

このような出題がなされました。

⑴別紙の【資料】について,次の問いに答えなさい。
(問い)あなたは,【資料】からどのようなメッセージを読み取りましたか。
読み取ったメッセージを,表現の工夫とその効果にふれながら書きなさい。

R5適性検査B


出題の通り、資料(広告)が提示され、その広告が伝えたいメッセージについて、表現の工夫とその工夫による効果について触れながら書く問題です。

解答欄

1cm×19cmの行が16行

解答欄からも読み取れる叡智の意図

実は「解答欄」にも情報は詰まっています。

去年までは「400字」の原稿用紙が与えられていました。

この用紙が伝えるメッセージは

原稿用紙の使い方を知っていますか?
400字でぴったりまとめてくださいよ。
1文字でも超えたら減点しちゃうかもしれません。

というものです。
一方で、今年は「1cm×19cmの行が16行」与えられました。

この用紙が伝えるメッセージは

最低限のルールを守っていたら良いですよ。
400字ぴったりじゃなくてもいいですよ。
小さく書いたら420くらいかけますからね。

というものです。

おおよそ、1行に25文字程度書くことができるため、(一行を真ん中に線を引いて二行にすることは御法度!)16行となると文字数的には去年と変わらず、合計で400文字程度に落ち着きます。ですが、原稿用紙の使い方を参照しながら、400字できっちりまとめ切る力は問われなくなったといえるでしょう。

近年、作文の原稿用紙が解答欄として与えられることは少なくなってきています。

最新の大学受験では白紙が渡され、そこに自分で図や絵を扱いながら(もちろん字で埋めても良い)自分の意見をまとめる、という出題形式のものもみられます。

もしかすると、回答用紙が白紙になり自分でレイアウトを考えながら情報をまとめる練習をしておくと良いかもしれません。

出題意図

共通テストとの類似


実はこの出題、ある入試問題に大変似ています。

それは「共通テスト」です。

共通テストは、2回の試行問題を経て、3年間の本試験と追試験と、合計8回開催されています。

そしてなんと、令和三年度の追試験以外の7回で、
資料を読み取る問題が出題されています。従来のような長文だけではなく、資料読み取りの問題を出題することは、共通テストの特徴とも言えます。

特に今年の共通テストと広島叡智学園の問題は、
示し合わせたかのように出題が似ています。

簡単に今年の共通テストについて説明しましょう。

今年の共通テストではまず、
「本文」・「本文と同時代の広告」・「構想メモ」が提示されました。

そして設問内でその構想メモを元にして書かれた、
本文全体の題材や表現効果について考察した文章が提示されます。

その文章にはところどころ空欄があるので、
その空欄に入る選択肢を選ぶ問題でした。

かなり似ていませんか?

難易度的には、資料を読み取り、穴抜けではなく自分で記述せねばならない叡智の問題の方が、高いのではないかという気すらしますね。

新しい学習指導要領


それでは、共通テストは資料の読み取りを出題するようになったのでしょうか?

それには、高等学校の新しい学習指導要領が関係します。

新しい学習指導要領は、高等学校においては、2022年度から実施されています。その特徴の一つに、日本語の学習に取り組む際、「論理国語」「文学国語」の2つのアプローチを用いられることが挙げられます。

簡単に文学国語と論理国語について、説明します。


文学国語
とは、日本語の文学的な表現や感性的な表現を重視するアプローチで、日本語で書かれた文学作品から感性や美的な価値観を学習することが目的です。

一方論理国語とは、日本語の論理的な表現や論理的思考を重視するアプローチで、論理的な文章や議論を通して、正確な表現力や論理的思考力を学習することが目的です。

以下に文章例を作成してみましたので、ご覧いただけると感覚的に文学国語と論理国語が掴めると思います。

【文学国語的な文章の例】
「桜が散りゆく季節、別れの時が近づいているような切ない気持ちに包まれる。風に揺らめく花びらの美しさに思いを馳せつつ、桜の淡く短い人生に別れの寂しさを感じるのだ。」

【論理国語的な文章の例】
「日本の経済成長を支える一つの要因として、労働力の増加が挙げられる。しかし、少子高齢化が進む現代社会においては、その労働力の供給が不足することが懸念されている。この問題に対しては、外国人労働者の受け入れ拡大や、高齢者の就業支援など、様々な施策が必要とされている。」

このように、文学国語と論理国語は目的やアプローチが異なります。

新しい指導要領では、これらをバランスよく取り入れ、生徒の言語能力の総合的な発展を図ることを求めています。

資料読み取りとは?


この「文学国語」と「論理国語」を一つの出題で試すことのできるのが「資料読み取り」です。

今回、共通テストも広島叡智学園も資料として広告を扱いました。

広告の文章は、短くインパクトのあるメッセージを伝えるため、またたくさんの人の注意を引くため、表現の工夫が随所に見られます。加えて、社会に発信するためのものであるという特性から、誰もが同じ情報を伝達するために論理的で効果的な文章構成がなされています。

つまり、ポスターを読み取るためには、
文学国語の力と論理国語の力が必要となります。

共通テストの現代文には、それぞれ文学国語と論理国語を別で問う設問があります。資料読み取り問題は、二つの国語力を併せた実践的な力を評価するため、出題されていると予想されます。

広島叡智の問題に話をもどしましょう。

広島叡智学園の問題は、読み取ってからさらに「自分の言葉で」まとめる必要がありました。

読み取ったことをまとめることにも、文学国語と論理国語の力は必要になります。

まず、表現の工夫とその効果は感覚に訴えかけてくるものです。感覚的なものを言葉で説明するためには、文学国語の力も必要になります。また、ポスターの文章の意味や背景を読み取り、正確に理解していることを採点官に伝えるためには、論理的に文章を構成せねばならず、論理国語の力が必要になります。

中高一貫校の先頭を走る広島叡智は、指導要領の変更及び、たくさんの卒業生が受験するであろう共通テストの潮流を敏感に入試に反映し、さらにアウトプット能力も試す、というアレンジを加えています。

今年求められた力


先ほど新しい学習指導要領における、文学国語と論理国語について述べました。しかし、これは今後10年間の指針についてのもので、今後しばらくはこの二つの力を見るために作問してくるだろう、という長期的なものです。

よって次に、短期的に「今年」求められていた力について解説します。

今年の問題に回答するためには、視覚情報と言語情報を統合的に処理する力(多重表象能力)が必要でした。

多重表象能力とは、物事や概念を複数の視点から捉え、それを脳内で表象する能力のことです。

具体的には、物事の形・色・音・味・臭い・触感などの感覚情報、さらには物事の分類や関連性などの言語情報を統合的に処理し、多様な視点やアプローチから物事を理解する力です。

例えば、ある人が「車」という単語を聞いたとき、
その人がイメージする「車」は様々な要素で構成されています。形状・色・駆動方式・メーカー・年式・排気ガスの匂いなど、その人の経験や知識に基づいて膨大な情報が結びついています。また、その人が過去に見た車の中でも、特に印象に残った車がイメージに反映されている可能性があります。

このように、複数の要素を組み合わせてイメージを構成する能力を、多重表象能力と言います。

これは、極々自然に人間が日常的に行っている認知活動のひとつであり、絵画や小説などの芸術作品や、新しい発明や技術の開発などに、重要な役割を果たしています。

あまりにも自然におこなっていることを他人に伝えることは難しいです。

例えば、歩き方を歩き方のわからない人に伝えることを考えてみましょう。私たちはほとんど何も意識せずに歩くことができます。しかし、一歩一歩を踏み込むためにはたくさんの筋肉をたくさんの神経で
コントロールすることが必要で、それを一つ一つ説明することはかなり難しいですよね。

同様に、私たちはごく自然に広告を見て、自然に情報を読み取り、自然に表現の工夫で感化されています。

しかし、それを言葉で説明することはかなり難しいことなのです。

広告を見るために必要な力を、要素に分けてみましょう。

1.言語表現の分析

広告文句やキャッチフレーズ・タイトルは特殊な表現がよく用いられ、その言語表現を読み解くことが必要です。(文学国語)また、その表現が持つ意味や伝えたいメッセージを正確に理解するために、論理的思考力が必要になります。(論理国語)

2.イメージの分析

広告には写真やイラストが、製品やサービスが持つ価値や特徴を伝えるために多く使用されています。そのイメージとメッセージがどのように結びついているかを考えることも必要です。

3.文化や社会の背景の理解

広告は文化や社会の背景に根ざしたものであるため、その背景を理解することが必要です。今回の場合、東日本大震災について事前に知っていなければ
かなり回答は難しかったでしょう。

4.感性や想像力の発揮

究極的に言うと、広告は感性や想像力を刺激するものです。「なんとなくその商品を欲しくなる、その場所に行きたくなる。」ことが重要です。そのため、感性や想像力も必要になります。

このように広告を見る際、私たちは自然に様々な要素を統合的に処理しています。

しかし、その処理は極めて感覚的で自然的なことであるため、今回のように問いとして出され、言葉にすることは難易度が高いといえるでしょう。

総評


広島叡智学園は、高等学校の学習指導要領の改訂で重要視される、「論理国語」と「文学国語」の両方の力を測るため、以前の「論理国語重視」から傾向を変更させました。

また、その問題を解くためには、多重表象能力及び
読み取ったものを言葉にする力が必要でした。

全体的に、テクニックが通用せず、今までの学校生活の中で培われた感性及び国語力が如実に現れる良問だといえます。

練習方法

来年も傾向が変化する可能性はかなりありますが、
この問題を解けるようになるための練習方法を最後にまとめます。

1.色々なものを、読む、聞く

多くの文学作品や論理的な説明文を読むことで、文章の構造や表現方法、思考の流れを理解する力がつきます。また、映画やドラマ、ニュース,youtuveなどを視聴することでも、同様の力を養うことができます。興味のある日本語が使われいるものを、「楽しむこと」がまずスタート地点です。(楽しむこと、面白味を感じられることは実は高度です。)

2.言葉にする

自分の言葉で発信する、アウトプットを繰り返すことで、自分が理解しているかどうかを確認することができます。漠然とコンテンツを楽しむだけではなく、「なぜ自分は面白いと思うのか」「どこが楽しいのか」といったことを「分析する」ことが重要です。

親子の「どんな映画だった?」「Youtubeおもしろかった?どんなところが?」といった対話は大変効果的です。その際、初めからまとまっていることはほぼないと言えますが、何か話そうとすることが大切です。

3.たまに書いてみる

全てのコンテンツについて、面白味や表現についてまとめる文章を書いていると、コンテンツを楽しむことが苦痛になります。しかし、自分が感銘を受けたり、表現の工夫に自然と目が向いた際は、それを話言葉だけではなく、書き言葉でまとめると良いでしょう。

さまざまなコンテンツを体験し、楽しみ、
楽しみを言語化して、ときにそれを書き言葉にする、というシンプルな行為の積み重ねが当日は助けになってくれるでしょう。

長文になってしまいましたが、ご一読いただきまして誠にありがとうございました!

iBASEは、本年も広島叡智学園の対策を行っていきます。

国語科としては、広島叡智学園の適性検査をただ解けるようになることではなく、今後中高大の学びの基盤となる国語力を育成できた結果として、
適性検査も解けるようになることを目指しています。(そのためにはこれ以上ない問いです。)

もし広島叡智学園の受験に対して不安な点やご質問等ございましたら、いつでもご連絡いただけますと幸いです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?