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ねえ

この世界を共にするひとつひとつの身体には

それぞれの知覚した違う世界が映る


たくさんの世界線が存在しあって

今日のこの世界がうまれる


手をのばしてものばしても

きっと捉えることは難しい

たくさんの美しく儚く

混沌とした世界たち


ねえ 羽をはためかせながら

花にとまり その羽を閉じて震わせる

あなたはどんなふうに世界を知覚しているのでしょう


ねえ 地上に出てきてその夏を生きて

土に還っていく

あなたは幼虫の時と成虫の時ではきっと体験している世界が違うのでしょう


ねえ わたしの世界からみると

土の中でいろんなものを分解しているように見える

あなたはどんなふうにいろんなものたちと出会っているのでしょう


ねえ

いろんなものたちを冷やしながら

熱を発している

あなたはそこに佇み何をみつめてきたのでしょう


ねえ

同じ言葉を話しているように感じる

こんなにも近いあなたとわたしは

少しずつ違う世界をこの身体に映しているのでしょう


ねえ

その世界に手を伸ばして

羽を捕まえた途端に

あなたの羽の鱗粉がこぼれ落ち

あなたの世界は変わってしまうかもしれない


ねえ

その世界の蠢めきをそっと包む

土を掘り返して新たなものをつくった途端に

成虫のあなたのからだに映る世界は

やってこないかもしれない


ねえ

あなたの生きる世界に水がなくなったら

あなたの世界は少しずつ薄く薄くなっていくのかもしれない


ねえ

あなたの世界とわたしの世界をつなぐ

言葉からこぼれ落ちたものが

もしかしたらわたしの世界なのかもしれない


近くて遠い

たくさんの

未だ見ぬ世界たち



手をのばしたらのばしたら

あなたの変わりゆくその世界はどうなるのでしょう


ねえ

変わりゆくその世界の痛みも

変わりゆくその世界の癒しも

のばした手から

わたしの世界に伝わるのでしょうか



ねえ

あなたの世界が変わる時

わたしの世界も変わっていて

この世界も変わっているのでしょう


変わりゆく世界たちが

生み出す今は

明日にはもう

違う今になっているのでしょう

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