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【映観】『エルヴィス(Elvis)』(2022)

『エルヴィス(Elvis)』(2022)
監督: バズ・ラーマン
出演: オースティン・バトラー、トム・ハンクス

エルヴィス・プレスリー伝記映画。
あなたは、エルヴィスて呼ぶ、プレスリーて呼ぶ、フルネームでもいいよ。E.Pが気に入った。
もう言わずもがなではあるが、やはり敬遠してしまう人も多いコトだろう、あゝディナーショーの人だとか、
もうこのご時世、名前さえ知らない人もいるだろう、寂しいコトだけどそんなコトもあるだろう。

ロックンロール(Rock’n’Roll)は、1950年代半ば頃、誕生したとされている。
(アメリカの白人のカントリー・ミュージックと黒人のブルース、黒人霊歌を結合したものとも、リズム・アンド・ブルースを白人化したものとも言われている。wiki)
もうこの時点で、興味のない方は退席した方がいい。

僕もE.Pを受け入れたのは遅く、30歳過ぎた頃くらいだった。
やはりディナーショー的なノリが、シナトラみたいで、ラスベガスでショーとかのショービジネスは、出がPUNKなので受け入れ難かった。
だから退役後の彼の凄さに気付いたのは遅かったし、誰だって年齢を重ねれば角も取れ丸くなっていく。
この映画をみれば簡単に角が取れたとは言えないが、いつだってE.Pが抗っていたコトだけは確かだ。
ロックが何なのかと問われれば、抵抗だと答える。
若者はあらゆるものを疑い、それを壊そうとする、その伴奏にロックがハマったのだ。
所詮ただの循環コードであるが、それが故に、土着的な高揚と原初のリズムを感じ興奮する。
それを初めて白人として提示したのがE.Pでした。
黒人音楽をパクったと言ってしまえばそうなのかも知れないが、この時代には黒人分離政策があり、平等だと認めながら隔離し蔑視はつづき、E.Pが音楽でその垣根を壊した功績は計り知れない。
黒人が歌えば罵られるが、白人が歌えば拍手で迎え入れられた時代だった。
E.Pは、53年Sun Records(インディーズ)で初めてのレコードを録音した。

55年、トム・ハンクス扮するパーカー大佐の登場、RCA(メジャー)との契約、一気にスターダムへ駆け上がっていくことになる。
56年テレビ放送でのE.P独特の震える下半身パフォーマンスで、若いファンは狂喜乱舞したが、道徳心溢れるいわゆる頭のお堅い大人たちは顔をしかめ、非難が相次ぐ。

これはいつの世も変わらない事象ですが、その道徳的とか宗教的とかいう観念がうざったい若者には、逆に刺激となって火は燃え盛り、人気絶好調、この反骨精神がロックの持つ魔力のひとつ。
その後、いい子ちゃんで居ろと、犬と差し向かいで"ハウンドドッグ"を歌わされ苦汁をなめる。

さらに58年兵役(ここで奥さんプリシアと知り合うので良しとするか)
60年まで軍隊の任につき、その間に最愛の母が亡くなり、退役後はパーカー大佐の目論みで、クソもミソもごった煮にしたような映画出演三昧となってしまう。
それから約10年(56年含め)計31本の映画、この映画でジェームス・ディーンに憧れていたと語るが、本当なのだろうか?
あまりにも内容のない映画を乱発している間、時代はビートルズの誕生と共に大きく動き、彼は取り残されていく。
そして68年 TV X`mas LIVEでの奇跡の復活。
上下革をまとい黒づくめE.Pのカッコよさよ、ルーツへGet Back!
この映画ではここでのパーカー大佐とスタッフ、E.Pとの確執が描かれてる。

69年から、ラスベガス・ショーがスタートする。
凄いのはこの映画です!
『Elvis: That’s the Way It Is(エルヴィス・オン・ステージ)』(1970)
これは30年後21世紀初頭、新たにリメイクされ映画館で上映された。
この映画がKINGにハマる切っ掛けになり、あまりの"LOVE"に、リハーサル・楽屋での彼の一挙手一投足に魅了された。
映画の半分を費やし、素のE.Pをひたすら追いかけ、それから実際のショーが始まり最高潮を迎える。
この映画を見れば、なぜ彼が偉大なのかを知るコトができる。

それから70年代はずっとベガスのショーに費やし、終焉へと向かう。
1977年8月16日メンフィスの自宅グレイスランドで死去(42歳没)
死因は処方薬の極端な誤用による不整脈とされているが、憶測はさまざま、生存してると思い込んでいる人もいる。
元妻プリシラ・プレスリーは在命であるが、娘リサ・マリーは2023年に心臓発作で亡くなっている。
この映画でジャクソン5がテレビに出ていて、あゝその後マイケルと結婚し離婚するんだなぁ、それからニコラス・ケイジとも。
あまりにも偉大すぎる父の元に生まれた苦悩は計り知れない。
E.Pの売り上げから50%もの収益を得ていたパーカー大佐は、81年の裁判でその権利を取り上げられ97年に心臓発作で死去。

史実なので書きました。
最後は、オースティン・バトラーがエルヴィスに見えてきました。
E.PにROCKの何たるかはすべて詰まっていて、始まりであり終わりであるという不思議な感情、
Rock’n’Rollが生まれて約70年、この物語はもはやバイブルに近いから彼は神なのか、いやピーナッツバターたっぷりのエルヴィスサンド、マザコンでシャイ、依存症のピストル狂、ぜんぶでどれでもなく、言ってしまえばその"愛"で魅了し傷つけるような諸刃の剣。
Rock’n’Rollは悪魔と神が表裏一体の音楽、その化身がエルヴィス・プレスリーだった。


一骨画: King Of R&R