『夢のように』福永武彦

春は平安京の夢の跡を訪ね、夏は信濃追分でのほたる狩りに室生さんの面影をしのぶ。四季の景物、忘れえぬ人。ゴーギャン、ベートーヴェンなど芸術の感興。玩艸亭先生が近年たのしくつきあった心なぐさむものの記!

新潮から出た六冊の随筆集シリーズの一冊。このシリーズを読むのは三冊目だけれど、どれも福永武彦のリラックスした雰囲気が感じられて、とてもこの作家を身近に感じられる。

驚いたのは、結核の療養所で、後に結城昌治になる男性と交流があったという話。

清瀬市のサイトにはそのことについて説明があり、結城昌治がその頃のことを綴った随筆が引用されている。

有名な話のようだから、知らずに驚いたのはこちらの無知を曝すだけだけれど。

源氏物語ゆかりの地を巡って京都を旅する紀行文も良い。クラシック音楽や絵画について語る文章も、良い。本当に、良い随筆集である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?