見出し画像

秋にしては暑い昼の日の日記

制作中は睡眠中も脳が休まらない、と思う。
脳の切り替えや忘れるのが下手で、達成感を感じられないと何かがずっとつかえたままだ。

夢の中にも制作しているシナリオのキャラクターが登場する。それは大体悪夢だ。
だから早く完成させたいという焦る気持ちも芽生えるが、焦ると面白いものにはならない。
やっと完成させたと思っても、人を集めて会場を抑えてテストプレイと修正を繰り返す。

ようやく新作の3度目のテストプレイを終え、来月半ばに向かって修正真っ只中。
エンディングを大幅に変えた。キャラクターの設定も。
最初のプロットを書いてから2年。
随分時間がかかってしまったように思う。

「今生きているのはただ運が良かったから」だと思える程度には人生が死と隣り合わせだった。
いつ死んでもおかしくない。
どんなに情熱や時間を注いだものでも、発表しなければ死体と同じだ。
発表がクオリティ以外の、他人の個人的な理由でなかったことになった作品もある。
なかったことになったときに謝罪の言葉を口にできない人間は自分を正当化するのが上手いが、大抵周りの人が代わりに謝ってくれる。
だから周りの人が可哀想だし「謝ったら死ぬ病気なんだろうな」と思うことにして諦める。
この業界にいて学んだのは口が上手く綺麗事を言う人は信用してはいけないということだ。

話が逸れた。
とにかく今回はリリースしよう、と思う。


修正作業を終えて、近所でピザを食べた。
そのイタリアンはピザが耳までふかふかで美味しい。
通い始めてから4年になる。
お気に入りのビスマルクを注文しようとしたら、初めて見るイタリア人のウェイターに「ないよ!ない!」と強めに言われた。
一番好きなメニューだったのにな、と残念に思いながらマルゲリータを注文した。
最近は身体の調子が悪くてお酒を飲んでいないから、1本850円のサンペグリノを2本注文した。


なんだか世の中が全体的にイラついてる。
できるだけ食らわないように、影響されないように一人でいる時間を多く持つ。
愛犬のぽこさんと散歩をしていて小さな交差点に信号待ちをしていたら、自転車に乗った妙齢の女性が後ろから爆速でやってきて大声で「通しなさい、ここは道ですよ!」と叫んだ。
赤信号だというのに自転車はそれを華麗に無視して走り去った。
交通事故に遭ったような嫌な気持ちが残った。



けれど全体的には良い日だった。

修正作業もかなり進んだし、マルゲリータは美味しかったし、野良猫にごはんを配っている近所のおばさんに久々に会えたし(彼女は私とは目を合わせず、ぽこさんと会話をする)、1ヶ月前にどこかに落としたと思っていた大切なジュエリーが靴下の中から出てきたからだ。
まるでサンタクロースからの贈り物だ。

大切な人からの贈り物を失くすのは初めての経験で文字通り血の気が引いたし、警察署に紛失届まで出しに行った。
先日のランチで友達のキャニーとなつこジュエリーを落とした話をしたとき、キャニーは「親切な人がきっと届けてくれるよ」と私を励まし、なつこは「落としたことも思い出じゃん」と斜め上のポジティブ発想をくれた。友達っていいよね。

ジュエリーが靴下の中から出てきたことを二人にLINEすると、一緒に喜んでくれたことが嬉しかった。


ジュエリーを贈ってもらったことも、落としたと思って落ち込んだ日々も、友達に励ましてもらったことも、なぜか靴下の中から発見したことも、全て大切なエピソードとなった。

明日も良い日でありますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?