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“命をつなぐ義務” ベスタの話

小惑星ベスタは、1807年に発見された火星軌道-木星軌道間の小惑星帯に位置する小惑星の一つである。ベスタは他の小惑星とはちょっと違って、内部に地球型惑星のような層構造を持っているのだそうだ。もう少しサイズが大きければ惑星になっていた星、なのかもしれない。

ベスタというその名は、ギリシア神話の『竈の女神』が由来だ。コンロが主流の現代日本ではあんまりピンとこないかもしれないが、竈とは炊飯を行う道具で、家(社会の最小単位)を構成する要の一つである。同じ釜の飯を食った仲、みたいな言葉にちょっと名残は残っているだろうか。占星術の上では、『火を使って煮炊きをし、食べ物を家族で分け合って命をつなぐ原理』を象徴する星といっていいだろう。とても重要な存在である割に、ベスタの神話は少ない。基本的に家の中担当なのである意味仕方ないのかもしれない。他の神様が外に行って戦ったり恋愛に身を投じたりしている間、ベスタは次の食事のことを考え、食料の調達と調理を考え、それをどうやって家族に提供するか考えているような存在、なのである。

そういうわけでベスタは基本的にあんまり目立たない……のだが、人間という生き物が根本的に持っている『生き残る力』を司る、とても重要な小惑星である。私が実際占う場面では、家・子孫・家系・誰かを食わすこと・台所関係が絡んで来たときによく投入する小惑星である。つまりは『己の家を存続させる力』がベスタの担当なのだが、ベスタはセレスと違って『育てる専門ではない』、パラスとの差は『武力は持たない』、ジュノーともかなり近いけれど『権利の主張より己の義務が先、妻・母とは必ずしも関係ない(※結果的に妻・母に反映されることはある)』という趣の位置にいる。

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