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『ある愛の詩』

『ある愛の詩』という映画がNHK BSプレミアムで放送されていた。

現代はLove Story。これをある愛の詩って訳した人って、控え目に言って天才なんじゃないだろうか。

なぜかというと、この映画は、あくまであるカップルの話なのだけれど、シンプル過ぎるように聞こえる原題の『Love Story』にある通り、誰しもの恋愛に普遍的な面が描かれている、愛の物語だから。

まず、「愛の詩」ではなく、「ある愛の詩」としたところが天才。
語感が良い上に、物語のエッセンスを捉えている。

世界のすみっこに生きる、お家柄に差のある、いちカップルの恋愛の話。
でも、よくある親が反対してどうちゃらこうちゃら、という「身分の差による障壁」に焦点を当てたものではないと思う。

印象に残ったのは、主人公オリバー(男性)と父親との関係。
超エリートで富裕層な家庭の生まれの主人公は、移民でお菓子屋さんの娘ジェニーを好きになる。
もちろんオリバーはジェニー自身のことを好きになったのだけれど、なんだか「身分の差」を乗り越えた愛、というのに少し酔っているというか、そこに親への反抗がかなり見えているのだ。

でもジェニーの何がすごいって、自分が出身だということを嫌っているオリバーに、それも含めてあなただ、そのあなたが好きなのだというジェニー。

身分違いの恋に親が介入してきてどうこう、といういわゆるロミオとジュリエット的な「家対家」の構図ではない。(ロミジュリは身分差ではないけれど)
なんだけれど、自分にないものを求めて相手を好きになって、それって自分のコンプレックスとつながっていることが誰しもあるよね、という部分がすごく普遍的。

家柄だけでなくて、相手の見た目、家柄、学歴、エトセトラ、付き合った相手と違うところがあって当たり前だし、一人一人コンプレックスがあるけれど、自分にないものを持っているからこそ相手を好きになる。

自分は背が低いから、背が高い人に憧れる、とか。
数学が苦手だから、数学が得意な人に憧れる、とか。
真面目一辺倒だから、自由に生きていそうな人に憧れる、とか。

でも、この映画が描いているのはこのカップルの物語にとどまっている。
それが逆に、この物語が伝える恋愛の普遍性を映し出すのだ。

あとは、印象的なのは音楽。なんでこんなに切なさを誘うんだろう。
壮大で切ない旋律があるから、主人公たちが頑張っている時も、どこか寒々とした冬の気配がある。
物語の中の季節いう意味でも、オリバーにとっての人生の中の冬、という厳しい季節という意味でも。


これだけ語っておきながら、最初の10分くらいを見逃してしまったのが惜しい。

あらすじを読むと、主人公が二人の物語を振り返るような構成になっているみたいなので、そうするとより切なさが増すかもしれない。

映画は最初から最後まで観るのが大事ですね。

美しい映画で、シーン一つ一つやカメラワークに目がいくので、そういうところも含めて映画を楽しめます。

映画は総合芸術というか、特に名作は、あらすじを読んだだけでは全くその映画の伝えんとするところは分からないんだなあ、と思いました。

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