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外れたままの網戸

少し外出するのに天気が気になって窓を開けたら、網戸が外れた。思わず「まじか……」と独り言が漏れる。数分ほど網戸とサッシをガチャガチャしたものの、はまる気配はない。少し遅い時間帯だったこともあり、元に戻すことを諦めた。

たったこれだけでの出来事で、猛烈にドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』を思い出してしまった。こういうときに、頼れる誰かがいてくれたらなあと、ため息をつきたくなる。

少し前、酔った友達から電話越しに「結婚はしないでしょ?」とか言われたばっかりだったので、ちょっと複雑な気持ち。(結婚するかしないか)6:4くらい?と言われた。たしかにそんな感覚はあって、うまい返しができなかった。結婚というものに囚われたくない気もするし、恋愛から降りてその枠におさまりたい気もするし。

というか、そもそも結婚どうこうじゃなく、わたしは頼れる誰かがほしいんだろうなとも思う。

それは寂さでもあり、甘えでもある。そして自分の経験上、誰かひとりに依存してうまくいくわけじゃないのもわかっている。

外れた網戸を直してくれたり、苦手な家具の組み立てをしてくれたり、重い荷物を一緒に持ってくれたり。そういう誰かと暮らしたいとか一緒にいたいと思う気持ちと、結婚とか同棲は、やっぱり紐付けないほうがいいんだろうな。結婚ってそういうことじゃないもんな。

それでも、寂しいとか誰かに頼りたいとかいう気持ちが自分にあるんだということは、ちゃんと覚えておこうと思った。無理に強がってへっちゃらぶって、自分に嘘をつき続けて生きる人生は、きっとしんどい。


『大豆田とわ子と三人の元夫』に出てきた、とわ子(松たか子)の家の外れた網戸は、最後どうなったんだっけ。小鳥遊さん(オダギリジョー)に直してもらったんだっけ。一度観たのに忘れてしまっていて、調べて最終回を観返して、ようやく思い出した。

小鳥遊さんに直してもらった網戸はまたもや外れてしまい、最終回でお父さんが直してくれて、さらに、あんなに外れた網戸を嫌っていたとわ子が、自分で直していたのだった。そのときのとわ子の表情は晴れやかで、とてもよかった。網戸ひとつで大げさだけど、とわ子や自分や誰かの人生を思った。

わたしが住んでいる部屋の網戸は、今も外れたまま、窓に立て掛けるみたいに置いてある。強い風に飛ばされる前に、明日になったらもう一度自分で直してみたい。


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