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野崎敏彦「水族館のアシカはいくらで買える?3ステップでわかる 教養としての地方財政」

・本書は、15年間、約50自治体の支援をしてきた地方財政コンサルタントが、中学2年生でもわかるように地方財政についてやさしく解説した「地方財政の入門書」である。

・地方財政は、自治体が政策を実行するために必要となる経済的基盤である。地方財政は皆さんの日々の生活を支えており、誰にとっても無関係ではない。政策や施設などに使われるのは皆さんの納めた税金であり、安心・安全の暮らしの維持に直結している。

・著者は、愛知県蒲郡(かまごおり)市の財政業務の仕事をしている時(2006年頃)、同市が運営する竹島水族館の資産管理に携わる。市役所の所管課の資料を見ると、水族館のアシカの購入価額が記載されており、当時、竹島水族館では、3頭のアシカを飼育していた。
※1頭の額については、本書をご覧ください。
・アシカも、市が保有する立派な資産(固定資産)である。会計上、耐用年数8年で滅価償却され、飼育中に死亡すると、「固定資産除却損」という、血と涙もない感情科目で会計処理される。
・自治体が管理・運営する動物園のライオンやキリンもアシカと同じく、その自治体の資産なのだ。それら以外にも、
⚪︎美術品、工芸品、モニュメント
⚪︎緞帳(どんちょう)=小・中学校の講堂や公会堂の舞台などにある厚手の大きな幕)
⚪︎樹木
⚪︎ゆるキャラのかぶりもの
など意外な資産を保有・管理している。

・自治体の財政運営は、1980年代(昭和55年以降)から、バブル経済のピークを迎えるころまでは比較的安定していたが、1990年以降の長引く景気低迷の影響を受け、徐々に疲弊していき、近年は厳しい財政運営が続いている。
・このような財政難の中でも、自治体は、住民生活の安心・安全のためにさまざまな資産を今後も適切に管理していかなければならない。そんな中、「新しい公共(新たな公)」という考え方が注目されるようになる。
・新しい公共とは、「公共心を持って、社会で必要とされるサービスを提供活動や活動主体」を指し、平成20年代の初頭に国(内閣府)から発信された声明である。そこには、行政だけでは公共サービスに限界があるため、住民、企業やNPOなどの団体が公共サービスの受け手にとどまるのではなく、活動主体となり、それぞれがてきる役割を担い、まちづくりの主役になってほしいという期待が込められている。同時に、活動に参加する人々が、住民のために役立っているという充実感、満足感を得ることも目指している。
・「新しい公共」の活動領域については、
①行政機能の代替
②公共領域の補完
③民間領域での公共性の発揮
が本書で述べられており、具体的には、
「道路や公園の維持管理(掃除や除草など)を住民の手で行う(①)」「ゴミの分別を行う(②)」「空き家を二地域居住などのために活用する(③)」が述べられている。
※その他の具体的な例ならびに新しい公共の詳細については、本書をご覧ください。

・本書では、「知ってびっくり!まちのお金の七不思議」「なぜ、まちにはお金がないの!?」「まちに「新しい家計簿」がやってきた!」「借金「メタボ」なまちが「健康」になるためには?」「お金とまちの課題が一気に解決!知っておくべき地方自治体の取り組み」という章で構成されており、「水道料金がまちによって8倍違う理由」「毎年3月に道路工事が増えるのはなぜ?」「まちのお金を圧迫する三大事業(道路編・下水道編・病院編)」「各自治体の事例(福井県福井市〈"攻め"の投票所の開設〉・長野県白馬村〈クラウドファンディング型ふるさと納税〉・愛知県春日井市〈空き家→シェアオフィス〉」など、「現状→問題点→解決策」の3ステップで各節をわかりやすく解説した内容となっている。

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