見出し画像

残されたDNAからAIが犯人の顔を推測し、顔認識で犯人を捜すシステムの危険性

●概要

アメリカの非営利団体EFFがカリフォルニア州で犯罪現場に残されたDNAから犯人の顔を推測し、それをもとに顔認識システムで合致する人物を捜すという捜査を開始したことを取り上げ、批判している。DNAから顔を復元するシステムを提供するのはアメリカのParabon NanoLabs社だ。これに類する捜査方法は以前から使われていた。
たとえば、VICEの記事によれば監視カメラなど移った犯人の顔を顔認識システムにかけても見つからない場合、犯人に似ている有名人の写真で代用して検索して該当する容疑者を見つける。あるいは特徴をきわだたせる加工を行って検索する。写真に写っていない顔の一部を生成したり開いた口を閉じたり、似ている2人の顔を合成したりしてしている。
最近では、AIの推測の上乗せも行われている。Distributed Denial of SecretsのSnapshot Phenotype Reporthttps://snapshot.parabon-nanolabs.com )はDNAから詳細なプロフィールを推測しているのだ。

EFFは警察のこうした捜査を止める法律はなく、深刻な人権侵害に結びつく危険性を訴えている。

●感想

犯人に似ている有名人の写真で代用するって、もはや捜査とは呼べないいい加減さのように思えるのだけど、なにか科学的根拠でもあるんだろうか?
そもそもDNAから顔やプロフィールを予測するってほとんど占い、あるいは単なる差別や人権侵害としか思えないんだけど、どういうことなんだろう?
過去の顔認識システムや犯罪予測システムが、AIは「ゴミを入れればゴミを生む」というセオリー通りに、「偏見捜査記録を入れれば偏見に満ちた犯罪予測を行う」あるいは「逮捕記録を入れれば、有罪となった犯人ではなく逮捕されやすい人間を犯人として選ぶ出す」という結果となって騒ぎとなったことがある。
どう考えても学習元のDNAサンプルがまんべんなく人種を網羅しているとは思えない。そもそも中国の顔認識AIは世界市場で有力な理由は、アジア人など欧米でサンプルの取りにくい人種の顔認識精度が高いからだ。現状の欧米の顔認識システム精度が中国より劣っているなら、DNAサンプルから顔を予測するシステムの精度も劣っているはずだろう。少なくともアジア人など欧米でサンプルを取りにくい顔に関してはそうだ。

Cops Running DNA-Manufactured Faces Through Face Recognition Is a Tornado of Bad Ideas
https://www.eff.org/deeplinks/2024/03/cops-running-dna-manufactured-faces-through-face-recognition-tornado-bad-ideas

Police Are Feeding Celebrity Photos into Facial Recognition Software to Solve Crimes
https://www.vice.com/en/article/xwngn3/police-are-feeding-celebrity-photos-into-facial-recognition-software-to-solve-crimes

好評発売中!
ネット世論操作とデジタル影響工作:「見えざる手」を可視化する
『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)
『犯罪「事前」捜査』(角川新書)<政府機関が利用する民間企業製のスパイウェアについて解説。

本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。