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ニュース検索とYouTube検索を寡占していた中国国営メディア

アメリカのブルッキングス研究が2022年5月に公開した「WINNING THE WEB: How Beijing exploits search results to shap views of Xinjiang and COVID-19」( https://www.brookings.edu/articles/winning-the-web-how-beijing-exploits-search-results-to-shape-views-of-xinjiang-and-covid-19/ )を紹介したい。


●グーグルとビングのニュース検索、YouTubeでの検索で広がる中国国営メディア

・調査概要

2021年11月1日から2022年2月28日の120日間、下記の12語について、グーグル検索、グーグルニュース、ビング検索、ビングニュース、YouTubeでの検索結果を収集した。日本の731部隊も入っている

新疆関連
 Xinjiang: 新疆
 Uyghur: ウイグル
 Kashgar: 新疆ウイグルのカシュガル市
 Urumqi: 新疆ウイグルのウルムチ市
 Adrian Zenz: アメリカで新疆を研究している学者。中国国営メディアの攻撃のターゲットのひとつ。
 Xinjiang Debunked: 中国国営メディアがよく使用する新疆ウイグル自治区住民に対する中国政府の扱いを指す言葉。
 Xinjiang Terrorism: 中国国営メディアが中国政府の対応を正当化する際に使う言葉。
コロナ関連
 Fort Detrick: コロナがアメリカの生物兵器であるという陰謀論に登場する基地。
 Unit 731: Fort Detrickと関わりで登場する日本の731部隊。
 EVALI Virologist: EVALI(電子タバコあるいはベイピング製品使用関連肺障害)の研究者。
 EVALI Coronavirus: EVALIとコロナを結びつける陰謀論。
 Huanan Seafood Market: コロナの最初の患者が発見されたと言われている場所。

・調査結果

調査の結果、中国のデジタル影響工作は手間とコストの割に効果が上がっていないと言われているが、気がつかない領域で広がっていたことがわかった。このレポートはグーグルとビングのニュース検索およびYouTubeでの検索で中国の国営メディアが16%以上を占めていることを発見した。「Xinjiang」(新疆)で検索すると、ニュース検索では88%、YouTubeで検索すると98%の確率で中国の国営メディアが検索結果に表示された。ちなみに731部隊で検索すると、ニュース検索では100%、YouTube検索でも90%以上だ。

「WINNING THE WEB: How Beijing exploits search results to shap views of Xinjiang and COVID-19」( https://www.brookings.edu/articles/winning-the-web-how-beijing-exploits-search-results-to-shape-views-of-xinjiang-and-covid-19/ )
「WINNING THE WEB: How Beijing exploits search results to shap views of Xinjiang and COVID-19」( https://www.brookings.edu/articles/winning-the-web-how-beijing-exploits-search-results-to-shape-views-of-xinjiang-and-covid-19/ )

パンデミックに関連する言葉で、新疆に関連する語句に比べ、中国を支持するコンテンツを返す可能性が低かったが、SNSプラットフォームがCOVID-19コンテンツのモデレーション行っていたためだろう。

「WINNING THE WEB: How Beijing exploits search results to shap views of Xinjiang and COVID-19」( https://www.brookings.edu/articles/winning-the-web-how-beijing-exploits-search-results-to-shape-views-of-xinjiang-and-covid-19/ )

中国には広範なコンテンツホスティングとインフルエンサーのネットワークがあるため、一見独立したソースで共有されたコンテンツを特定するのは困難である。そのため、今回の調査は検索結果における中国国営メディアの影響力を過小評価している可能性が高い。今回の調査のデータセットでは、中国政府の公式な関係者ではないが、中国国営メディアのコンテンツを定期的に再掲載している少なくとも19の異なるメディアが検索結果の上位に表示された。これらの19のメディアを加えるだけでも、検索結果における中国国営 メディアの出現回数が10%近くも増加することになる。
日本のTBSも中国国営メディアを拡散していた。

「WINNING THE WEB: How Beijing exploits search results to shap views of Xinjiang and COVID-19」( https://www.brookings.edu/articles/winning-the-web-how-beijing-exploits-search-results-to-shape-views-of-xinjiang-and-covid-19/ )

・対策の提案

中国国営メディアと国際メディアとの協定がこうした拡散を促進している。見直しが必要である。
検索に際して、信頼できる政府機関などの情報も合わせて検索する習慣を広げる。
プラットフォームは怪しい検索結果については通知を表示する。
検索アルゴリズムの透明化。
などを提案している。

●感想

ニュース検索とYouTube検索でこれほど露出していたとは思わなかった。しかも、過小評価していることは確実でこのレポートで言及した19のメディアを加えるだけで10%アップということは実態はどこまで進んでいるんだろう?
731部隊で日本はなにも対策していないのだなあというのがよくわかった。

【修正:TBSを日本のTBSかと勘違いしていました!ご指摘ありがとうございました】TBS(インドのメディア)は中国国営メディアの情報を拡散していたが、日本でもテレビ朝日が中国国営メディアに誤報を提供していたこと( https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2021/07/post-26.php )を思い出した。2020年2月21日テレビ朝日のANNニュースはアメリカCDDが発表していないこと(おそらく誤訳)=アメリカのインフルエンザがコロナである可能性を放送し、これを中国の人民日報やグローバルタイムズ、CGTNは日本のテレビ局の発表として、アメリカがコロナの発生源という話に結びつけて拡散した。


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