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SNS大手がモデレーションを緩めた結果、極右過激派がマイナーSNSから大手SNSへ大移動

一時期は監視強化された大手SNSからマイナーなSNSに活動場所を変えた世界各国の極右過激派グループが大手SNSに戻っていることをGlobal Project Against Hate and Extremism (GPAHE)が報じている。

Far-Right Extremist Accounts Surging on Mainstream Platforms
https://globalextremism.org/post/far-right-extremist-accounts-surging-on-mainstream-platforms/

2023年6月から2024年3月にかけて、これらのアカウントのいくつかは、X、YouTube、TikTok、フェイスブック、インスタグラムなどで大幅な伸びを示している一方、テレグラムでは登録者を減らしている。このレポートでは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、オーストリア、フランス、ギリシャ、イタリア、ポルトガルでの極右グループ、極右政党、個人の大手SNSでのフォロワーや投稿の増加と、Telegramなどでの減少を検証している。とりあげた全ての国で大手SNSでのフォロワー数の増加や投稿の増加といった活性化を確認されており、その一方でTelegramでの活動の低下が確認された。

たとえばアメリカの白人至上主義グループWLMのXのフォロワーは2023年6月の8,839人から14,000人へと58%増加したが、Telegramは1,106人から1,252人とそれほど伸びていない。極右インフルエンサーのJack PosobiecのXフォロワーは210万人から240万人(14%増)に増加し、YouTubeのチャンネル登録者は12,600人から18,600人(48%増)に伸びた。その一方で、Telegramチャンネル登録者は162,649人から146,867人(マイナス10%)と減少した。

世界各国の白人至上主義、ナショナリスト、アイデンティタリアン運動(ヨーロッパを中心とした白人至上主義の一種)、陰謀論者、反ユダヤ、反移民、反イスラム、反中絶、反LGBTQ+などが大手SNSに復活し、躍進している。

●感想

実は一方で匿名アカウントによる誤・偽情報の発信と拡散が増加しているという記事もあった。

Anonymous users are dominating right-wing discussions online. They also spread false information
https://apnews.com/article/misinformation-anonymous-accounts-social-media-2024-election-8a6b0f8d727734200902d96a59b84bf7

この記事では中露の干渉の可能性を匂わせているが、極右過激派が大手SNSに戻ってきているタイミングに合わせて、それを煽る活動を行っている可能性は否定できない。

さらに事態を悪化させているのはXのイーロン・マスクだ。

Elon Musk Didn’t Want His Latest Deposition Released. Here It Is.
https://www.huffpost.com/entry/elon-musk-didnt-want-his-latest-deposition-released-here-it-is_n_66133d2ce4b0d81853f9a766

イーロン・マスク自身が陰謀論をネットで拡散した件で訴えられており、驚くべきことに下記を認めた証言している。

・陰謀論を拡散したことを認めた。
・自分自身の訴訟について、よくわかっていない。
・自分の買収以降、Xの企業価値は急落している。
・伝統的なレガシー・ニュースを批判し、Xのコミュニティ・ノートを絶賛。

大手SNSはモデレーションを緩和しているが、Xにいたってはオーナー自らが陰謀論を拡散している。極右にとっては絶好のチャンスとしか言いようがない。

以前に何度か書いたことがあるが、大手SNSプラットフォームは「ここをやりすごせば再び好き勝手できる時代が来る」と考えているような気がする。特に世界選挙イヤーの2024年は山場なので、ここで権威主義者が躍進してくれれば規制は緩む可能性が高まる。
EUではSNSへの規制がどんどん強化されているものの、極右が台頭しているのも事実で極右政党の力が増大すれば規制は有名無実になりかねない。
近年あえてモデレーション部隊を削減したのはそのためなのかもしれない、という気がした。そこまでの意図はないにしても、マイナーSNSに利用者を奪われるわけにはいかないと考えてはいそうだ。


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