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いつ聴いても癒される 実力派K歌手~イ・ソラ

 やっぱり私は、どこにいても「変わっている人」なのか?「この歌手の、この曲が好きなんだよね」と韓国人のオンニに話したら、「その歌手ちょっと精神的におかしい感じだよね。そんな人の曲が好きなの?」と返された。そう、、そうだったんだ。私もよく「変わってるよね」と言われる質なので、「類友」で、その歌手に惹かれるのかもしれない。

 その歌手とは、韓国人女性歌手イ・ソラのことだ。日本ヤフーにて検索してみると、同姓同名のモデルや芸能人の記事が出てくるため、彼女の情報を見つけるのは容易くない。今の時代のK-POPは浸透しているが、ひと昔前のKーMUSICは、やはりその域ではないらしい。

 こんなことをえらそうに書いてはいるが、だからといって、私はそっち方面に詳しいわけでもないし、そもそも歌自体にのめり込むタイプではない。どちらかといえば、スティーブ・バラカットやアディエマスなどの歌詞がないミュージックのほうが好みである。

 しかし、このイ・ソラの歌う姿には、見事に惹かれた。歌唱力もさることながら、体の奥底から湧き出る「情念」みたいなものを感じる。歌詞もまた良い。彼女の代表曲である「風が吹く」。聞いているだけで涙がこみあげる。

 上の動画にて歌っている女性がイ・ソラである。韓国人女性芸能人には珍しいベリーショートに化粧っ気のなさ。そして、何か奥深い情念が感じられるその表情からは、奇をてらうことなく、ひとつひとつの歌詞に想いをのせている彼女のまっすぐ通った芯の強さが感じられる。そこが、また好きだ。

 ところで、昭和生まれの方へ。「聖子ちゃん」派でしたか?「明菜ちゃん」派でしたか?私は、「明菜ちゃん」派でした(笑)二人ともかわいいし、歌は上手いし甲乙つけがたかった。しかし、私は、明菜ちゃんの歌にぶつけるあの何とも形容しがたい「重さ」が好きだった。思い切り魂をあずけているような、あの歌い方が好きだった。

 イ・ソラにも、それと似たものを感じた。歌詞うんぬんを超えた、何かその人自身からにじみ出てくる「何か」が人を魅了することは絶対あると思う。

 これは、外国の路上にて、即席ライブを行った際の動画だ。曲は「私を愛さないあなたへ」。どこにいても変わらない、彼女の歌い方。外国語の歌にもかかわらず、聴く人を魅了するその声と歌う姿は、通りがかりの人たちの歩みを鈍くさせていた。物珍しさから見ている人が多数であろうが、その中には、歌詞が理解できなくても、彼女から発される「何か」を「心で感じる」人たちは、きっといたと思う。

 私の好きな曲「TRACK9」をご紹介する。この曲を知ったのは、たしかYOUTUBEのおすすめに出てきたからと記憶している。

 私は、車窓を眺めながら物思いに耽ることが好きだ。だからか、まず曲の旋律と、この車窓風景に惹かれた。ここは、ソウルの真ん中を横切るように流れている、漢江(ハンガン)である。以前流行ったダンス曲「江南(カンナム)スタイル」の江は、この漢江のことを指し、江南とは、漢江の南側の地域で富裕層の街としても知られている。東京の港区みたいなところだ。

 その次に、私の心を鷲掴みにしたのが、イソラ自身が作詞した歌詞であった。

 歌詞の一部を私なりに意訳してみた。直訳しようと思ったが、やはりぎこちない感じになってしまうので、私の解釈を入れて意訳してみた。とはいえ、そこまで直訳と乖離はしていないと思う。

TRACK9

이소라 イ・ソラ

나는 알지도 못하는 채 태어나 날 만났고

私は いつの間にか知らないうちに 生を受け 「私」に 出会い

내가 짓지도 않은 이 이름으로 불렸네

私が つけてもいない名で 呼ばれていた

걷고 말하고 배우고 난 후로 난 좀 변했고

歩いて 話して 学んたら 私は すこし 変わっていた

나대로 가고 멈추고 풀었네

私なりに 歩み 立ち止まり 解いてみた

세상은 어떻게든 나를 화나게 하고

世間は どうやっても 私を 怒らせようとし

당연한 고독 속에 살게 해

当然な 孤独の中で 生きさせようとする

Hey you don't forget

고독하게 만들어 널 다그쳐 살아가

孤独にし わたしたちは せきたてられ 生きていく

매일 독하게 부족하게

毎日を 残酷に 物足りなくさせ

만들어 널 다그쳐 흘로가

わたしたちは せきたてられ 流されていく

~略~

이 하늘 거쳐 지나가는 날 위해

この空を超え 通り過ぎる 日のために


 この記事を書きながら、何度も聴いた。何べん聴いてもいい、私の心にグッとくる曲だ。学生の頃、よくこんなことを思っていた。

なぜ私は『私』なのか?なぜ、私はあの子ではないのか?勝手にこの世に『私』として生を受けてしまい、その枠の中でしか生きていくことができない。なぜ?生まれたきたワケは何?

 この曲を聴いたとたん、癒される気がした。イ・ソラの意図しているところは違うかもしれないが、私の持っていたそんな思いが、その歌詞の中に見えたからだ。

 これまで、そんな話を他の人にしたことがなかった。「頭おかしいんじゃない?」って言われそうで。しかし、最近「親ガチャ」などという言葉がトレンドになっていたことを思うと、意外と似たようなことを考える人は多いのかもしれない。ここnoteにて、初めて告白してみる(笑)ひょっとしたら、共感してくださる方がいるかもしれない。

 後半部分の歌詞も好きだ。勝手に生を受けてしまい、目に見えない「何か」に、つねに急き立てられながら、流されていく。2節には「平凡な不幸」という表現も出てくる。そんな彼女の言葉にひとつひとつ共鳴できてしまう。

 ところで、冒頭で話した韓国人のオンニだが、彼女は良家の末っ子で、本当に可愛がられたんだろうなと思われる雰囲気が全身から感じられる。歳は50になるが、真っ白のフリフリ系のワンピースを着て、「夫は私とキスしたがるけど、私はしてあげないの」などと、聞いているこっちが赤面してしまうようなことを、サラッと可愛らしい少女のような眼差しで話す。それは、決して、ぶりっ子(これ死語ですか?)的な、わざと作った不自然さが感じられないところが、彼女の、これまで周りにチヤホヤされてきたであろう人生を窺わせる。むしろ、微笑ましいというか何というか、にくめないキャラだ。

 そんな彼女には、とうていイ・ソラの孤独さがほとばしる歌詞は理解できないだろうな。


今回はdebun-dabensteinさまの素敵なイラストを使わせていただきました。ありがとうございます^^



 







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