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境界に生きる人たち

 ウクライナ。仲の良くない国々の境界に位置する地域。それぞれ陣営の勝手な思惑の犠牲になり得るという事実を、今回の紛争で改めて実感させられた。最初は、有事にはならないだろうみたいな報道だったが、実際には攻撃は行われ、何の罪もない民間人も犠牲になっている。

 平和ボケしていると言われる戦後生まれの日本人。私もまたそうである。学生時代に起きた湾岸戦争の時もそうだった。まるで、「対岸の火事」。本当にこんなことが起きているのか?実感できていない。しかし、ここ韓国では、少し事情が違うような気がする。なぜなら、ここ韓半島も、また「境界」。他人事ではない。

 「北朝鮮」と「韓国」。この2つの国も、共産圏と資本民主圏のぶつかり合いがあり、多くの犠牲を出しながら分断された。多くの日本人にとっては、仲の良くない「別の国」という意識が高いかもしれない。しかし実際には、40代以上の韓国人にとって、北朝鮮人は、同胞であり同じ民族だという意識が強く、同じ民主主義、資本主義で、表向きは同胞なはずの日本人は、にっくき「敵国」という意識が根強く残っている。このことは世代によって、はっきりと色がちがう。

 分断されたことで、離ればなれになった家族は普通に会うこともままならず、両国の政治に上手く利用されてきた。上様の勝手な都合で犠牲になるのは、いつも、何の罪もない普通に暮らしたいだけの人たち。政権によって、北朝鮮との関係は変わる。今の文政権は親北の思想であるため、波風はたっていないが、今度の大統領選挙で、政党が変われば、また関係は変わってくる。落ち着かない地域なのである。

 「統一できればいいのにね」と私が言うと、韓国人の夫はこう答える。「日本政府も含めて他の国は、誰も韓半島の統一なんて望んではないよ」

 今のウクライナ紛争の状況と同じだ。この境界にある地域の色が変わることによって、自国を危険にさらしたくないという国たちの思いが絡んでくる。

 もし、韓国が北朝鮮、中国側につくとなれば、日本やアメリカは嫌がるだろうし、その反対であれば、中国が嫌がる。ここ韓国と北朝鮮は、そんな危なっかしい「境界」に位置している。何かあれば、ここは戦地になる可能性もなくはないのだ。

 そんなことを、韓国人は無意識に抱えながら生きている。今回の有事でもいろいろ思うところはあるだろう。韓国人が常にダイナミックに「今」を一生懸命過ごしているのには、そんな背景があるからかもしれない。

 正直言って、日本に生を受けた戦後生まれの平和ボケ日本人としては、共感したくてもできない部分だと思う。しかし、ウクライナ紛争で傷ついた民間の人たちをことをニュースで聞いて見て、心がざわつくのを感じる。私の息子たちは、ハーフではあるが韓国国籍だ。負の感情がよぎる。

 


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