黒と茶の幻想 恩田陸

「三月は深き紅の淵を」の第1話に出てくる劇中劇の話がモチーフになっている話。こちらを読んでからのほうが楽しめるかなと思います。
大学の同級生の彰彦、利枝子、節子、蒔生の4人はY島へ「三顧の桜」を捜す旅行へ向かった。

ここからネタバレ含む感想

彰彦の発案で企画された旅行を4人がそれぞれ1章ずつ語りを務めながら話が進んでいく。
最初は、利枝子。高校生から蒔生と付き合ってきたが、蒔生から利枝子の友達の憂理が好きになったと告げられ突然の別れとなる。そんな二人だったが、それぞれ別の相手と結婚し平凡な結婚生活を送ってると思っていたら節子から蒔生が離婚したという話を聞かされ心が騒めく。
彰彦は、紫陽花の花嫌いな理由を思い出す。それは、高校の同級生との別れだった。実の姉に執着されていた彰彦は姉が自分の大切な人を奪っていくことに心を痛めていた。
蒔生は、憂理が亡くなったと知らせを聞き施設に赴いたそこには変わり果てた憂理の姿があり、憂理最後の一人芝居で使ったリボンを渡された。
節子は夫が余命いくばくもないことを隠して旅行へ参加していた。そこで、紫色の割烹着を着た人物に追いかけられるという夢の話をして彰彦がその真相を考える。
4人が蒔生を中心として発する複雑な心境がじわじわと浮かび上がってくる感じが微妙な心の動きでよくわかるようになっている。結局、蒔生は自分以外の人生は背負えない人なのか…というのが私の感想だが、憂理がらみで利枝子と別れたというよりも利枝子の理解不能な部分が嫌だっただけなのか…だとすると憂理を口実にする理由がよくわからないな…と思った。
わりとカラッとしていた節子が最後の語りか…と思ったら結構重い日常を背負ってで、ここでも過去の出来事に蒔生が絡んでいた。語りの最後は蒔生かと思っていたが予想が外れた。最後まで読んでも、憂理があそこまで思いつめてしまった理由が不可解であった。
「三月は~」のシリーズものなので、今後また再登場もあるかもしれないがこのシリーズの行きつく先がなかなか見えない。いや、そうゆうコンセプトのものかもしれないけれど…。

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