ぽっかぽか

父の部屋にある本棚には
たくさんのジャンルの本があった

難しい本から漫画まで。

小さい頃のわたしは
父の部屋に入っては漫画ばかり読んでいた

なかでもお気に入りが一つある

本屋のカバーがかけられた本をめくると
それはまた古い感じの
味があるタッチの絵の漫画だ

家族3人
父親と母親と小さな女の子が描かれている
普通のサラリーマンの
アットホームな話である

目はキラキラしてないし
線も細かく繋がっていない

ラフなタッチのイラストだ

タイトルは深見じゅんの
「ぽっかぽか」だ

調べてみると1987年から連載されたようだ
わたしが小学生の頃だ

毎日仕事に勤しむ営業職のただのサラリーマンと
昔はキラキラOLをしていた妻が
専業主婦となり
田舎の郊外に一軒家を買い
今は小さな子供を育てている

ぐーたら育てているのである
何も着飾っていない

等身大の生活がそこにはあるのだ

そしてどうしてそこまでこの本が好きなのか

それは
幸せとはなんだが
そこにはちゃんと描いてあるのだ

これを読むと父の思い出も蘇る
きっと幸せはそこにあるし
きっと私はそうなりたいと思える漫画だ

ぜひ読んでほしい

私が両親のことを
お父さんお母さんと呼ぶのではなく
「ちち!はは!」と呼ぶきっかけとなった本だ

私が母に
うちは熊手があるかどうか聞いた本だ

思い出が蘇る