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話の聞き方。相手にめっちゃ関心は持つけれど、それを直接ぶつけないのが大切だよね

今まで何回か若い方にインタビューライティングについて教える機会があったのですが、「インタビューの際に何を一番大切にしていますか」という抽象的な質問に対して、私がいつも一番に答えていたのはこれでした。

「相手に興味関心は持つけど、自分の興味関心から質問をすることは、できるだけ控える」

私は質問をする行為って、やり方によっては暴力になると思っています。

不意に深い質問をされて「なんであなたにそんなことを話さないといけないんだよ?」と思ったこと、ありませんか?

例えインタビューの場であっても、相手との適切な関係性を築けなければ、質問をされた相手はそう感じてしまうものだと思います。

無理やり上着を引っぺがすような、「太陽と北風」でいう北風のような態度を取る聞き手に対して、話し手は決して心を開きません。

では、どういうインタビュアーが「北風」になってしまうのか。

それは、自分の興味関心「だけ」に従って相手に質問してしまう人だと思います。

私が聞きたいから聞く。

そこに相手の存在はありません。

「あなたがどんな人だか知らないけど、とりあえずこちらの欲しいものをよこせよ」というコミュニケーションは、もはや脅迫です。

不快感どころか身の危険すら感じた話し手は、ますます自分の大切なものを自分の奥深くへとしまい込んでしまうでしょう。

では、相手に不信感を抱かせずに、こちらの聞きたいことを語ってもらうにはどうしたら良いのか。

それは「こちらの聞きたいことを語ってもらう」という目的は一旦脇に置いておいて、まずは相手の話したいことをしっかりと話してもらうことです。

相手が「今この瞬間に話したい」と思っていることを話せるような聞き方をする。

そのためには、相手をよく観察して、相手が今どんな気持ちになっているのかを想像しながら聞くことが大切です。

例えば、私はよく質問の順番を入れ替えます。

次の質問は2番の予定だったけど「今相手は5番を話したい気持ちになっているな」と思ったら、迷わず5番の話題を振る。5番で話したい話を相手がしきったな、と感じたら2番に戻ってくる、というように。

他にもいろんな工夫をしながら、相手が自然に呼吸できるような聞き方を心がけています。

もちろん、ここぞという場面で質問は挟みますが、相手の気持の流れを邪魔しないように、タイミングを見計らって最小限にする。

そういう姿勢で聞き続けていると、話し手と聞き手の間にあたたかい関係性が生まれ、話し手の気持ちに余裕が出てきます。

そして話し手は、だんだんと本音に近いことを話してくれるようになります。今まで考えたことがなかったことも、その場でたっぷり時間を使って考えてくれるかもしれません。

そうして話し手が自分の奥深くに潜って見つけてきた言葉は、全く使い古されていない新鮮な言葉です。オリジナルで、人を深く感動させる力を持ちます。

私はそういう言葉こそが、インタビュー記事を書く上での宝物になると思っています。

話し手の気持ちを何よりも大切にするインタビューはエネルギーが必要ですが、それだけの価値がある。

記事を読む人にとってだけでなく、話し手にとっても「良い時間だったな」と思ってもらえるインタビューに私がこだわるのは、そういう理由です。

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