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~第138回~「百味膳と福種銭の話」

氷川神社の特殊神事「大湯祭」の本祭が12月10日に行われました。 当日のお供え物は米、酒、百味膳、菱餅、伊勢海老、長芋、串付の大鮒になります。

その中の「百味膳」という特殊な神饌は、海川の物八種、野山の物八種を熟饌(調理した神饌)して御膳に入れたもので、本殿、摂末社あわせ百膳をお供えします。

また、この日は特別に、御祭神の大己貴命(大国様)と少彦名命(恵毘須様)の御札である福神札や福熊手、福財布、そして福種銭を授与しております。 福種銭は「ふくたねせん」と読み、古くから民間で信仰された縁起物のひとつで、お賽銭の一部をお祓いした縁起の良いお金と替えて商売の元金(種銭)とするものです。 手元に置いておくものではなく使うもので、このお金を自分のお金とともに使う=世の中に種をまくと、巡り巡って大きな福が自分に還ってくるとされます。 種銭は昔、文字通り種籾を用いたそうです。

その年採れたお米を御神前に備えて豊作の感謝をし、神社で豊作祈願をした種籾をいただき、翌年種籾を蒔いてまた神社にお米を御神前にお供えしてきたものが、時代を経て現在の福種銭になりました。 百味膳やお供え物からは、地域の実りを神様に感謝する心が、福種銭からは神様からの福を独り占めするのではなく皆で福を分かち合う心が伝わってきます。

未来にも伝えていきたい日本人の心ですね。


〔 Word : Keiko Yamasaki Photo : Hiroyuki Kudoh 〕

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