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目標管理に役立てるデザイン思考!? 〜 何していいか分からないときに何をすべきか?

目標管理デザイン思考は、まるっきり別の目的のための、ぜんぜん異なるプロセスのように思われているので、デザイン思考を目標管理に役立てるというと、「何を言ってるんだ!」という声が聞こえてきそうです。

もちろん目標管理の考え方とデザイン思考が同じものだということではなく、ある種の状況では、デザイン思考の考え方を目標管理に重ね合わせると、いろいろと役立つことがあるよ、という話です。

では、「ある種の状況」って、どんな状況なのか?

それは、たとえば全社目標に「新たな価値を創造する」みたいなことが掲げられていたとして、各部門長が「新たな価値」って何なのかがピンときていない。だから各部門のメンバーも、「新たな価値を創造する」ための取り組みっていわれても、具体的に何をしたらいいのか見当もつかない。

だから「新たな価値」を生み出す取り組み目標を立てようにも、目標設定シートに何を書けばいいのかサッパリ分からない。

という状況のこと。

何していいか分からないときにやるべきこと

こういうときに人事部門がやりがちなのは、「目標設定シートが埋められない!」という声を受けて、「たとえばこんな感じの目標を立ててください」リストを作成すること。

そもそも何をすればいいのか分からないので、「こんな感じの目標」でいいのかどうかも、それを達成することで「新しい価値」がどう生まれてくるのかについても分からないはず。

だから、とりあえずシートに何かしらの目標を書き込むことはできても、そこから「新たな価値」が生まれるわけがない。

では、どうすればいいのか?

じつは話は簡単。何していいのか分からないなら、まずは何をすればいいのかのヒントを探せばいい。とはいえ、何していいか分からないのだから、ヒントを探すにも「これをやればいい」というアイデアは何もない。

というわけで、答えは、「ヒントを見つけるために、できることを何かやる」になります。大事なのは、何していいか分からないときには、できることを「何かやる」ことで、皆目見当がつかない状況を脱する(きっかけを得る)ということ。

何かできることはいろいろとあるはず

たとえば全社目標に「新たな価値を創造する」が掲げられたものの、品質管理のような部門では、決められたことを決められた通りにキッチリやることがこれまで求められてきたのだから、「何していいかのヒントなんて転がってるわけがない」と思う人が出てくるかもしれません。

が、そのためのヒントを見つけるためにできることはたくさんあるんですね。

まずは業務の全体像を洗い出すこと。ヒント以前に、日々取り組んでいる業務の全体像がしっかり見えていないとしたら、まずはそこをクリアにする。

どの部門にどんなデータをどんなタイミングで提供しているのか? そのデータは、どんな目的で・どこで・誰に・どのように使われているのか?

「ヒントを見つける」とは、どこにどんなヒントが潜んでいるか分からない前提で、いまやっていることを体系的に見直すところからはじめれば、何かしらやれることは山ほどあることになる。

何かをするときはいろんなことに意識を向ける

品質管理の部門として定期的にデータを提供していたとしても、どこで・誰に・どのように使われているのかはハッキリしていないかもしれない。

だったら、そのデータが使われている場所に赴き、現場を見て、担当者を話をすれば、より詳しい状況が分かるだけでなく、ひょっとすると何かしらのヒントが得られるかもしれない。

もちろん、漫然と現場に足を運び、あたりを見回し、上の空で担当者の話に耳を傾けても、ヒントが見つかるわけがないので、しっかりと観察し、相手がやっている仕事がどんなもので、どういうこと考えながら仕事に取り組み、なぜデータが必要だと相手が考えているのかをしっかりと把握できるように意識を向けないといけない。

そうこうするうちに、「当たり前にやっているこのチェック作業、ひょっとしてこの人は面倒くさいと思っているのでは?」とか、「このあたりの状況をデータで可視化したリストがあれば、『わ、これは役に立つ』と思ってもらえるのでは?」なんてことが閃いたりすれば、何をすればいいのかのヒントを手にしたことになります。

そのうちアイデアが浮かんでくる(はず)

で、可視化したデータを仮の形でつくり、「こういうのがあったら役に立ちませんか?」と相手に見せると、「おお、これはいいね!」みたいな反応が返ってくれば、新たな価値の創造にむけた第一歩が踏み出せそうではありませんか。

というわけで、何していいか分からないときは、何すればいいかのヒントを見つけるために何かをする。とりあえずどこかに足を運び、あたりを観察しそこにいる人たちが何を考えながら・感じながら、どんなことをやっているのかに目を向ける

そうして「ひょっとしたらこんなことが起きてるのでは?」というアイデアが生まれてくるのを待つ。何かしらのアイデアが浮かんだら、これをとりあえずの形にして、相手の反応を見て、しっかりとしたものに仕上げていく

このプロセス、デザイン思考と同じなんですね。

デザイン思考を3つのステップで考える

デザイン思考は、一般的に5つのステップで成り立つプロセスとして説明されます。

しかしこれ、「何をどうしていいか皆目見当がつかない状況を抜け出す」プロセスとしてとらえると、大きく3つに分けることができそうです。

まずは、「何していいか分からないから、ヒントを見つけるためにとりあえず何かする」段階。そして、「何かしらのヒントをもとに、とりあえず具体的な形を(仮に)つくってみる」段階。最後は、「それでうまくいくかを確かめ、最終形に仕上げていく」段階です。

「デザイン思考とは?」については、いろんな人がいろんなことを言ってますが、おそらくもっともザックリと理解しようとすれば、この3つの段階からなる「何していいか分からない状況を脱するための方法論」だと考えればいいと思います。

と、まあそんな風に考えてみると、何していいか分からないときに何をすべきかがハッキリしてきます。

「新たな価値を創造する」ために何していいか分からないから、目標設定シートをどう書けばいいのか見当もつかない。そういう状況であっても、何すればいいのかのヒントを得るために、まずは何かを観察し、共感を持って状況をとらえるとすれば、どこに行って何を見ようか? 誰とどんな話をしようか? という方向で考えていけば、何かしらできそうなことは見つかるはず。

こうして「何していいか分からない」の壁を越え、「できることを何かする」の行動を生み出せれば、そのうちに何かしらのヒント(問題の定義)を探り出すことができる(かもっしれない)。

で、何らかのヒントが見つかれば、そこからアイデアを生み出し、とりあえずの形にしてみる(プロトタイピング)。そして変更・修正を加えながら(検証)最終的な形に仕上げていけばいいわけです。

何していいか分からないときの心構えと身のこなし

デザイン思考というと、どうしても「デザイン」という言葉に引っぱられて考えてしまいがちだし、ついつい「新しいもの幻想」にとらわれてしまいそうにもなりますが、「何していいか分からない状況を脱するための方法論」として幅広くとらえれば、細かいプロセスやステップに気をとられることなくいろんな形で試してみることができそうです。

「方法論」と書きましたが、これ、「まずコレをやって、つぎにアレをやって」という行動の順番の話じゃありませんよね。

「何していいか分からない」から「何もしない(できない)」のではなく、「何していいか分からない」からこそ「(とりあえず)何かする」と考え、行動する。で、その後に何をすればいいのかが分かってくるから、そこからまた新たな行動を開始する、という意味では、「方法論」というよりも、思考と行動の順番に関する意識を大きく転換するのが大事なんですね。

そんな風に考えてみると、ここで考えている思考と行動に関する意識の転換というのは、今井むつみが語る「ドネルケバブ」的な学びから、子どもが言葉をおぼえるときの学び(探求学習)に意識を転換することだということが分かります。

子どもはドネルケバブの肉片のようにすでに切り取られた知識片を「はい」と渡されて、それを暗記しているのではない。
切り分けられていない知識の塊をどのように切り出していくかを自分で見つけなければならない。言語を使うために子どもは「外にある知識を教えてもらう」のではなく「自分で探す」。
要素を見つけながら、要素どうしを関連づけ、 システム自体も発見していく。自分で見つけるから、 すぐに使うことができるのである。

何していいか分からないから、とりあえず何かやっているうちに、だんだんといろんなヒントを見つけ、これを関連づけながら、いろんな意味を自分で探し出していくこと。

「デザイン思考」って、そういう「方法論」、というのか、心構えと身のこなしのようなものだと考えてみれば、目標管理にかぎらず、さまざまな場面に応用することができるはずです。

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