『五輪貴族』 春風亭いっ休

スポーツ観戦の楽しさがまっったく分からない。
スポーツを1時間も見せられるぐらいなら、アリの巣を1日じゅう眺めている方がまだマシ。それぐらい興味が持てない。

そもそもスポーツに全然詳しくないから、というのはある。
私は自分でスポーツをするのも嫌いだ。小さい頃から体を動かして遊ぶのが好きじゃなくて、体を動かさないから運動神経が悪いままで、運動神経が悪いからますます遊ばなくなって……という負のスパイラルで、どんどんスポーツが嫌いになった。体育の授業以外でスポーツはほとんどやってこなかったし、やっても全然楽しくなかった。
そんなものに詳しくなるわけがなく、ルールや技術を教えられても全然覚えられなかった。だから、他人がやっているのを見ても、何が起きているのか理解できないのだ。サッカーの試合を見ても、大人数でボールを追っかけ回しているようにしか見えないし、柔道を見ても、2人でじゃれあってるだけにしか見えない。スゴ技が飛び出しても、スゴさが伝わってこない。

けれど、それだけではない。赤の他人の勝ち負けに、全く興味が持てないのだ。
だって、親戚でも友達でもないんだよ? まあ、知らない人であっても、今までの努力が報われたらいいねーぐらいは思うけれど、努力してきたのは対戦相手も同じなんだから、どちらかに勝ってほしいとは特に思わない。
選手の人柄や外見に惚れ込んでファンになって、その人を応援するというのは理解できる。でも、ただ地元のチームだからとか、日本人選手だからとかいう理由で応援する人々の気持ちはよく分からない。地元が同じであっても、多少親近感が湧く程度で、私にはやっぱりただの他人としか思えない。試合を観ることすらなく、オリンピックで日本人の取ったメダルの数だけ聞いて一喜一憂する人に至っては、本当に理解できない。

そういうわけで、東京五輪については、基本的に賛成でも反対でもなく無関心だった。賛成する人が多いんなら勝手にやればいいんじゃない?程度の気持ちだった。
しかし、ここ1年半ほどのゴタゴタがあってから、オリンピックが俄然、楽しみになってきた。「本番ではどんなトラブルが起きるのかな〜?」「開幕したら、国民は本当に今までのことは忘れて熱狂するのかな〜?」「これで目論見どおり政権支持率アップするのかな〜?」みたいな興味が、かつてないほど湧いてきている。
そうそう、もう1つ楽しみなのが、「この選手たちの中の誰が未来の五輪貴族になるのか」ということ。IOCのバッハ会長をはじめ、五輪貴族と呼ばれている人たちは、元オリンピック選手だった人が多い。他にも、前・五輪担当大臣で今は東京五輪組織委員長の橋本さんは言うまでもないし、財務大臣の麻生さんも昔、オリンピックに出ていた。「競技一筋!みたいな顔したこの選手たちも、いずれ貴族になっちゃうのかな〜?」「いや、実はもう貴族の片鱗が見られるかも?」と想像しながら見れば、興味のなかったスポーツも大いに楽しめそうだ。

そうですね、私はたぶん性格が悪いです。

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