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光る君へ(11)恋愛って何?・大河ドラマで学ぶ脚本テクニック

大河ドラマ「光る君へ」が面白い。ということで、「「光る君へ」で学ぶ脚本テクニック」と題した動画を作っていくことにしました。動画といっても内容はスライドとテキストなので、noteにも載せていきます。今回は第11回の学びポイントです。
歴史の知識や「源氏物語」については一切触れませんので、予めご了承ください。

今回の学び

第十一回の学びポイントは、「構成」と「“恋愛”とは?」です。

構成

まずは「構成」についてです。
前回の動画で、第十回は「第一部」の終わりだと指摘しました。

第一回で始まったまひろと道長の愛の物語、それから兼家の天下取りの物語が、第十回でひとつの結末を迎えたという意味です。

その観点で言うと、第十一回は、「第二部」の始まりです。

今回のエピソードが、第一回のエピソードにそっくりであることに気づいた方も多いのではないでしょうか。

構成的に言って、第十一回は、第一回の「反復」となっています。
もう少し具体的に比較してみましょう。

第十一回で反復された主なエピソードはこの3つです。

ひとつは、兼家への直訴。第一回ではまひろの父・為時が官職を得るため兼家に直訴しますが、第十一回では、為時の代わりにまひろが直訴します。

それから、兼家一族の出世。第一回では娘・詮子が入内し、第十一回では孫の一条天皇が即位します。

そして、すれ違い。第一回、十一回ともに、まひろは道長(三郎)と“すれ違い”ます。その原因は、第一回では母の死、第十一回では道長の求婚です。

注目すべきは、これらが単純な繰り返しではないことです。
どのエピソードも、これからの「第二部」がより「ハードな」展開になることを予感させるものになっています。

第一回の直訴は聞き入れられて、為時は兼家の間者となりましたが、第十一回のまひろは拒否され虫けら呼ばわりされます。

詮子の入内では清明の家に雷が落ちますが、一条天皇の即位では、何者かが高御座に生首を置きます。

まひろと道長のすれ違いも、単なる反復ではなく、新たな段階に突入しました。
それについては、次の学びポイントで詳しく考えます。

“恋愛”とは?

2つ目の学びポイントは、「脚本における恋愛とはどういうものか?」についてです。

これは思いっきり単純に言えば、「惹かれ合う人物がくっついたり離れたりすること」ですよね。つまり、くっついたり離れたりという「運動」が大事なわけです。

で、そういう「運動」を起こすには、二人を邪魔する何かが必要で、それを最初の動画で「」と呼びました。しかもこの枷は、ひとつ乗り越えたらまた次というふうに、次々と繋いでいかないと、ドラマという「運動」にはならないわけですよね。

第十回でまひろと道長は結ばれますが、これは二人が枷をひとつ乗り越えたからです。その枷とは、愛する人の死に対する罪悪感でした。愛する人とは、まひろの母や共通の友人であった直秀です。どう乗り越えたかというと、「世を正す」という使命を持つことによってです。

まひろはその使命を道長に託し、道長はその使命をはたすために「政の頂を目指す」この一致をもって二人は枷を乗り越え、結ばれたわけです。

しかし今回、道長の「になってくれ」という申し出によって、新たな、そしてより強力な枷が出現しました。

道長が権力の階段を駆け上がるには、身分の高い女性を北の方、つまり正妻にする必要があります。身分の低いまひろではダメなのです。しかし、道長を愛しているからこそ、まひろにはそれが耐えられません。

二人を遠ざけるこの新たな枷は、「光る君へ」を、ロマンチックな「平安のロミオとジュリエット」から、現代の視線で見てもリアルな恋愛ドラマへと、一気にギアチェンジさせました。見事としか言いようがありません。


最後までお読みいただきありがとうございました。
今後も、こんな感じで学びポイントを取り上げていくつもりです。
背景画像:
From The New York Public Library https://digitalcollections.nypl.org/items/510d47e3-fe62-a3d9-e040-e00a18064a99

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