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各駅停車で房総半島の先くらいまで行ってみた。

「南へ行くといいよ」
いろいろなことで行き詰まっていたら、そんなアドバイスを頂いた。私の吉方位らしい。noteを始めたら、やはり南を目指したひとの記事も見つけた。

どうも今の私は南に行ったほうがいいようだ。

Googleマップで自宅から指を南にたどってみた。東京湾の真ん中に出た。船に乗るべきだろうか。釣り船にでも乗って東京湾産の鮮魚の一匹でも釣るべきだろうか。
さらに南に指をたどっていくと、アクアラインをつっきり房総半島の先端の館山に触れた。
都内の自宅から千葉方面に出かけるなら木更津や君津が近い。でもやや南からは反れる。ど南はやはり、館山だった。

行ってみたい。
希望のない毎日をただやりすごす日々、どこかに行きたいという気持ちすら忘れていた自分に湧いた感情。房総半島のことも館山のことも何も知らず思い入れもない。何の意味もない旅だが、出かけることにした。

「温泉いいよ」というアドバイスも頂いていた。連休がなく泊まりは厳しかったが、ちょうど館山に天然温泉使用の健康ランドがあるのを見つけた。健康ランドなら予約もいらず、気軽にふらっと行ける。ここを目指そう。

仕事が休みの、とある平日の昼すぎ、私の房総半島の先っちょへの旅が始まった。

東京都内から房総半島を目指す手段には、電車と高速バスとがある。実はアクアラインを使える高速バスのほうが時間が短く、乗り換えもないので楽そうだ。だが、私はあえて電車を選んだ。車内で本を読みたかったのと、房総半島の広さや大きさを体感してみたかったからだ。

ゴールデンウィークも過ぎた五月も半ばの平日の昼間。便利な特急や急行の便もなく、各駅停車を乗り継いで約三時間の行程だ。

まずは総武線各駅停車で錦糸町へ。

たくさん並んだ車両がいい感じ

ここから内房線に乗り換え、千葉駅へ。千葉駅でさらに乗り換え、君津を目指す。


君津までの車窓の風景は、だんだん大きなビルが減っていって戸建て住宅が多くなるなぁ……という感じ。ベッドタウンに並ぶ建て売り住宅の群れを眺めていてもあまり観光している感じはしない。千葉から君津までは約50分。読書が進んだ。

君津でさらに内房線を乗り換え、館山を目指す。

このあたりから、車窓の景色が変わってきた。新緑あふれる山々や田植えを終えた田んぼが窓の外にいっぱいに広がる。

やがて、海が見えだした!

浜金谷という駅では、不思議な岩が並ぶ峰がそびえていた。後で調べたら鋸山という山で、採石をしていたらしい。この景色はちょっとすごかった。上りと下りの電車のすれ違いのためにしばらくホームに停車していたので、ゆっくりながめることができた。

ホームから鋸山を眺める。
ギザギザの峰。ちょっと不思議な眺め。

そしていよいよ目的地、館山へ。

館山駅は開業100周年だそう。
記念のロゴマークがあった。

君津から館山までが約一時間。電車が進んでいくたび窓の外がどんどん「山!」「海!」とどどんと変化していくので、旅に出た感が強く感じられてよかった。

ハイシーズンは急行などがあるはずなのでこんなにかからないと思うけれど、車窓の景色を楽しんだり、ゆっくり本を読んだり音楽を聞いたりしていると、合計約三時間という長時間でも退屈はしなかった。
何より自分がいま房総半島を縦断している!と思うとなかなか面白かった。


海沿いのヤシの木。
南にたどり着いた感慨がちょっとわいた。


ここの健康ランドに行きました。
規模はちいさめだけど、綺麗な施設だった。

平日の健康ランドはめちゃくちゃ空いていて、ゆっくり温泉に浸かれた。ほぼ貸し切り状態の露天風呂でずっとぼんやり湯に浸かっていた。美味しい地魚や地野菜のお料理も満喫できた。


さすが海の近く。お刺身が美味い。
天せいろ。野菜も美味しい。

南を目指した旅は大成功だった。
まとめてみたら、すんごい地味になったけれど、本人としては自由にゆったりできて楽しかった。またときどきここに来てみてもいいかもしれない。

少し足を伸ばして出かけるたび、そういう好きな場所が増えていく。好きな場所や心地よい思い出は、いくつあってもいいものだ。

帰りの駅のホーム。
地方の駅の誰もいないホームが好きです。