美しさは、失敗との境目にある
ルーヴル美術館のピラミッド、美しいと思いますか? 邪魔だと思いますか?
ニコラウス・アーノンクールという指揮者がいました。かなり独特の芸風で、もう5年前に亡くなったのですが、そのリハーサル映像というのが出てきました。
ベートーヴェンの交響曲第5番のリハーサル風景ですが、1楽章の練習を終えたところで、「美しかった。素晴らしい。」と楽員を讃えた後にアーノンクールがこんなことを言っています。
美しさを追求すれば、それはどうしたってギリギリの線を攻めることになる。だから失敗の可能性も高くなる。それでも追求するから我々は美しさを獲得できる。すごくいい言葉だな、と思います。
全然、違う例ですが、ラグビーのワールドカップで日本が南アフリカと戦って勝ったことがありました。あの時、最後のプレーでペナルティを獲得した日本は、ペナルティキックで確実な同点引き分けを取りにいくのではなく、負けるリスクを覚悟でスクラムを狙いにいきました。ラグビーを美しいと言っていいかどうかわかりませんが、失敗との境目にあったものだろうと思います。
もちろん、美しさを狙って完全に失敗してしまった例も世の中にはたくさんあります。例えば、Power Mac G4 Cubeのように。
これ、本当に美しかったんですけどね。工業製品としては、技術の面でも商業面でも大失敗でした。
授業はどうか。大失敗はいけませんよね。だって、児童にとって、その授業はただ一回のものなのですから。でも、まったく何の挑戦もない授業というのも退屈なものです。
幸いにして、私が所属している国立大附属小は、「失敗を恐れず挑戦しないと授業をする意味がない」くらいのところです。
「もしかしたら外すかもしれないけれど、でも絶対に意味のある挑戦になるはずだ。」
そういう信念を持って取り組むと、不思議とところどころで綻びは見えても全体としては学びのある実践になっていきます。ということで、今日も失敗を恐れずに新しいことに取り組みましょう。美しさは、その先にしかないのですから。
そんなわけで、ルーヴルのピラミッド、僕は美しいと感じる派です。皆さんはどうですか?
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