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第3章:別居後の子育て-子どもに焦点を当てる 養育計画の作成~別離後の子育ての取決めガイド~

カナダ司法省のウエブサイトに掲載されている
Making Plans
A guide to parenting arrangements after separation or divorce
How to put your children first
という冊子の「第3章」を翻訳・紹介します。

 あなたと一方の親が夫婦であったとき、夫婦として、また親としての交流は結びついていました。別居や離婚をすると、それまでの夫婦関係から離れ、共同子育てをする新しい関係を築く必要があります。
 共同子育ての関係の大きな特徴は、子どもにとって何が最善かを考えることです。共同子育ての関係には様々な種類があります。共同子育ての内容は、あなたと一方の親がどの程度仲良くするかなど、様々な要因によって決まります。例えば、顔を合わせて子どものことを話し合える親がいます。一方で、それが難しく、メールや文章で、必要なときにだけコミュニケーションをとりたいと考える人もいます。

 共同子育ての関係とは、別居または離婚している親の間で、子どもにとって何が最善かに焦点を当てて考える関係のことです。共同子育ての関係には様々な種類があります。

 共同子育ての関係がぎくしゃくしていると感じたら、以下のルールを守ってみてください。
  ・口頭または書面で合意したことしか、お互いに期待してはいけません。
  ・あなたと一方の親とのミーティングは比較的フォーマルなものにする。中立的な場所(例えば、喫茶店)で、時間を決めて行い、話し合うべき問題をリストアップしておく。
  ・お互いに感情的にならないようにする。
  ・子育てに関連すること以外、個人的な情報を共有しない。
  ・メールや文章を深読みしない。怒りや皮肉のこもったメールを送った本人にそのつもりはないかもしれません。
  ・二人にとって支障がないコミュニケーションの方法を見つける。妥当な回答期限を定める。
 夫婦の関係から共同子育ての関係には、直ぐに変わりません。努力する必要があります。あなたと一方の親が共同子育てを実践する親としてのコミュニケーションを身に着けるまでには、暫く時間がかかるかもしれません。
 別居している親が子どものことで口論しても、実際に口論している原因は子どものことではないことがあります。二人の言い争いは、本当は夫婦だった頃に起こったことが原因かもしれません。子どもを通してお互いを支配しようとしているのかもしれません。一方の親に対する気持ちと、子どもに対する気持ちを切り離す努力が必要です。
 自分の身の安全が心配な場合は、一方の親と密接に協力しなければならないような共同子育ての関係は適切ではないかもしれません。
 第6章「特別な問題」では、安全面での懸念が継続している場合の養育時間のスケジュールや、意思決定方法に関する提案が掲載されています。

あなたや知り合いに危険が迫っている場合は、911に電話する、または最寄りの警察に連絡してください。


共同で子育てをするための幾つかのヒント

 共同子育てを身に着ける際には、以下のことを忘れないでください。
  ・怒りを脇に置き、子どものニーズを優先して協力する。
  ・礼儀正しく、一方の親に敬意を持って接する。
  ・皮肉、無礼、侮辱を避ける。
  ・コミュニケーションは簡潔に、要点だけを伝える
 特に、一方の親に対して強い否定的な感情を抱いている場合には、難しいことかもしれません。しかし、一方の親に敬意を持って接することで、あなたの話に耳を傾けてくれる可能性が高くなります。
 一方の親と友達になる必要はありません。しかし、子どもの利益のために親として協力する方法を見つける必要があるのです。
 子どもに関して一方の親と正直に話し合う準備をしておきましょう。夫婦だった頃は一緒に暮らしていたので、ある種のやり方が当たり前になっていました。共同子育ての関係では、何を期待し、誰が何をするのかを明確にしておく必要があります。
 例えば、どのくらいの頻度でお互いに連絡を取り合うのか。電話、メール、テキストメッセージ、それとも直接会って話すのでしょうか?緊急の場合を除いて、夜は電話をしないなど、連絡を取る時間帯にルールを設けるべきでしょうか。子どもを送り出すときに、お互いの家に入った方が良いのか、それとも外で待つ方が良いのか。
 誕生日、学校の休日、宗教上の休日(クリスマス、ハヌカ、イード・エル・フィトルなど)、文化的なイベント(パウワウやフェスティバルなど)、卒業式など、子どもの将来の特別な日について考えてみてください。両親が喧嘩をしたり、一方の親と一緒に過ごすことに罪悪感を覚えたりすることを心配していたら、子どもは楽しめるでしょうか。それとも、あなたと一方の親が意見の違いを脇に置いて、子どもを最優先する計画を立てた方が、このような場面が子どもにとってより有意義なものにならないでしょうか。
 共同子育ての関係の構築を手助けしてくれる専門家はたくさんいます。法的助言者、カウンセラー、メディエーター、養育コーディネーター子育てコーチなどが、一緒に子育てをする新しい方法を見つける手助けをしてくれます。

 養育コーディネーションとは、養育時間、養育責任、接触についての合意や命令があった後に、子育ての紛争を解決するための子どもを中心としたプロセスです。養育コーディネーターには、法的助言者、メンタルヘルスの専門家、ソーシャルワーカー、ファミリーセラピスト、メディエーター、仲裁者などがいます。

 子育てコーチとは、親が子育てに新しい戦略やアイデア、態度を取り入れるのを手助けする人のことです。子育てコーチは、将来に焦点を当て、親が問題解決のスキルを採用するのを助けます。

一方の親とのコミュニケーション能力を高める方法

 積極的なコミュニケーションスキルに取り組むことで、子育ての問題を解決することができます。以下に、コミュニケーションに役立つ提案をご紹介します。

 準備
 悩みやストレスを抱えていると、言いたいことを全て思い出すのは難しいものです。一方の親に話したい重要なことがある場合は、あなたの考えをポイント形式で書き出してみましょう。考えを書き出すことで、問題点をよく考えることもできます。

 聞く
 聞くことは簡単なようですが、相手の話を聞く前に話し始めてしまいがちです。これでは、相手は自分の話を聞いてもらえなかったと感じてしまいます。また、誤解を招くこともあります。
 カップルだったときは、相手との過去の経験に基づいて、相手が何かを言おうとしていることの結論に一足飛びするのは非常に簡単な場合があります。また、「神経を逆撫でする」ことも簡単です。一歩下がって、思い込みを脇に置くことが重要です。一方の親が何を言おうとしているかではなく、一方の親が実際に言っていることを客観的に聞くようにしましょう。
 一方の親の話を全て聞いてから、以下の行為をしましょう。
  ・自分がどう答えるかを決める
  ・話を始める

「私は」で始まる発言の使用
 問題に対する自分のニーズや感情を表現するために、「私は」で始まる発言を使うことができます。一方の親を責めるのではなく、自分がどう見ているのかに焦点を当てることができます。「私は」で始まる発言は、次のようなものです。
 「(僕は)サラが僕に会いたいと言うのを聞いて、とても悲しい気持ちになってるんだ。(僕は)水曜日に一緒に過ごす予定になってはいるけど、ここのところ仕事をしていることが多いんだよ。(僕は)二人で協力して、この問題の解決策を見出したいんだけど」
 一方の親が悪いと思っていることに焦点を当てた「あなたは」で始まる発言は避けましょう。
 「あなたは、私が会いたいときにサラに会わせてくれない」
 「あなたは」で始まる発言をすると、一方の親は身構えて、解決策を見つけるのが難しくなります。

 復唱
 一方の親が言ったと思われることを言い直したり、繰り返したりすることは、コミュニケーションの助けになります。復唱は、あなたが耳を傾けていることを示します。また、一方の親が言ったことを理解していることを示すこともできます。復唱は、一方の親が言っていることに同意しているとは限りません。ただ、相手の話を聞いたということを意味します。復唱とは、次のようなものです。
 「あなたが言っていることは、サラともっと一緒にいたいけど、水曜日は仕事をしていることが多くて難しい。だから、あなたの仕事のスケジュールに合った解決策を二人で見つけようってことよね」。

 子どもに焦点を当てる
 全員の話を聞き、問題点を明らかにしたら、二人で協力して解決策を見つけることが大切です。
 話し合いの焦点は、子どもが何を必要としているのか、子どもにとって何が最善なのか、という点に当てるべきです。どうすれば子どものニーズを満たすことができるでしょうか。また、実践的かつ現実的である必要があります。例えば、養育時間のスケジュールを話し合う際には、交通手段は勿論のこと、それぞれの親の仕事のスケジュールなどの問題を考慮する必要があります。
 子どものニーズに焦点を当てれば、それぞれの親が「望んでいること」や「諦めていること」から注意をそらすことができます。結果的に親にとって都合が悪くなるかもしれませんが、子どもにとって最善の方法をとることが大切です。子どもに焦点を当てるというのは、次のようなことです。
 「サラがあなたに会いたがっているのは分かっているわ。サラの行動予定表を見て、もっと頻繁に会える方法がないか考えてみましょうよ」。
 あなたと一方の親がお互いに解決策を提案するように促せれば効果的です。二人が積極的に関与した決定には、二人とも同意しやすくなります。複数の解決策を奨励するとは、次のようなことです。
 「サラがもっとあなたに会えるようにするには、私たちはどうしたらいいと思う?」
 「僕がサラともっと一緒に過ごすためには、どんな選択肢があると思う?」

 直接のコミュニケーションが取れない場合
 あなたと一方の親との間にまだ多くの葛藤がある場合や、過去に虐待があったために安全上の問題がある場合は、問題を直接話し合うことができないかもしれません。その代わりに、以下のような方法でコミュニケーションを図ることができます。
  ・メールやテキストメッセージを利用する:この方法では、自分の返事を送信する前に考えることができます。口論になりそうな問題を話し合っている場合は、メッセージを下書きして、しばらく放置してから送信するとよいでしょう。電子メールやある程度のテキストメッセージは、議論の記録として必要に応じて参照することができます。また、全ての書面によるコミュニケーションは、良い行動と悪い行動の両方を記録することができることを覚えておいてください。電子メールやテキストメッセージを使ったコミュニケーションのヒントは、「付録A:電子コミュニケーションの利用に関するアドバイス」を参照してください。
  ・メディエーターやカウンセラーなどの専門家の助けを借りる

離婚法に基づく義務

親には、離婚法に基づく、守るべき義務があります。

1.子の最善の利益
 裁判所から養育時間や親の意思決定責任を定めた養育命令を受けている場合や、離婚法に基づく古い監護命令(2021年3月1日以前のもの)を受けている場合は、子の最善の利益のために行動する義務があります。例えば、学校を選ぶ場合、あなたともう一人の親は、できる限り、どの学校が子どもにとって最も有益であるかを基準にして決定するべきです。

2.紛争からの子どもの保護
 離婚法に基づく裁判手続きに参加する場合、あなたには、できる限り子どもを紛争から守る義務があります。これは、例えば、訴訟の詳細について子どもと話し合うことを避けるべきであることを意味します。
あなたの子どもを保護するためのより多くの情報とヒントは以下にあります。

3.家族間の紛争解決プロセス
 離婚法では、適切である限り、メディエーションのような家事紛争解決プロセス(7ページの定義を参照)を通じて紛争の解決を図らなければならないとされています。家事紛争解決は、裁判プロセスよりも迅速で、費用がかからず、協力的である可能性があります。家事紛争解決の詳細については、「第5章:子育ての取決めを作成するための選択肢」を参照してください。
家事紛争解決は、全てのケースに適しているわけではありません。例えば、家庭内暴力があり、安全面での問題や懸念が継続している場合は、様々な選択肢について法的助言者に相談するのが最善かもしれません。詳細については、第6章の「過去に家庭内暴力があった場合の紛争解決」を参照してください。

4.完全、正確、最新の情報
 裁判所は、個々の家族にとって最適な命令を下すために、完全で正確な最新の情報を必要とします。つまり、あなたは必要な情報を全て提供し、それが正確で最新のものであることを確認する必要があります。例えば、裁判所は公正で正確な養育費の額を決定するために、両親の収入情報を必要とします。必要な情報を必要なときにすぐに提供することは、子の最善の利益になります。

5.命令に従う義務
 裁判所の命令には従わなければなりません。裁判所の命令に従わないと、重大な法的結果を招く可能性があります。
裁判所は、子の最善の利益になると判断した命令を下します。後になって、あなたの生活や子どもの生活に、裁判所の命令が予見できなかった変化が生じることがあります。裁判所の命令があなたや子どもの状況に合わなくなったと感じたら、改めて裁判所に申立てを行い新しい状況を反映した命令に変更してもらう必要があります。
裁判所の命令に従うことの重要性については、第6章の「合意または命令の条件に従うこと」の項を参照してください。

紛争から子どもを守る

 あなたが子どものためにできる最も重要なことの一つは、あなたと一方の親との間の争いから子どもを守ることです。離婚法に基づき、親はこの義務を負います。両親間の争いが少ないことは、別居や離婚後の子どものウェルビーイングにとって重要であることが、調査により明らかになっています。紛争は、子どもにとって有害な緊張感のある環境を作り出します。これは、肉体的虐待や精神的な虐待がなくても同じです。
 つまり、あなたと一方の親は、子どもの前ではお互いに敬意を持って接するべきなのです。
 争いが長く続くと、子どもにストレスや恐怖心を与え、感情や行動の問題を引き起こす可能性があります。例えば、研究によると、親同士の対立は以下の事項に影響を与えると言われています。
  ・子どもの身体的、心理的、感情的な健康状態
  ・子どもの社会的交流-交流相手は、あなたや他の家族、友人、さらには将来における自分の配偶者や自分の子ども
  ・子どもの学校での成績
 両親同士の対立が続くと、子どもの悪い手本となります。健全な方法で意見の相違を解決する方法を示すことができないからです。争いから子どもを守るために気をつけたいことを幾つか紹介します。
  ・子どもの目の前で口論しない。
  ・子どもに聞こえる場所で口論しない。
  ・子どもに自分と一方の親との間の伝言を頼まない。
  ・一方の親を懲罰するために、以下のようなことはしない。
    〇子どもを一方の親に会わせない
    〇子どもを一方の親の家族や親戚に会わせない
    〇養育費を支払わない
  ・子どもに一方の親を敵視して自分の味方をするように求めない。
  ・子どもの目の届くところに法的な書類を置いておかない。
  ・子どもに一方の親やその法的助言者との問題を話さない。
  ・子どもを自分の精神的なサポートに使用しない。
  ・子どもの不作法を罰するのに、一方の親と会わせない、話をさせないという手段を用いない。
  ・子どもが両方の親や親戚に興味を持つのを阻止しない。
  ・一方の親の悪口を子どもに言ったり、子どもが聞いてしまうような場所で言わない。
  ・他の人(友人、あなたの両親や親戚、新しいパートナーなど)にも、上述したことをさせない。例えば、子どもの休暇スケジュールなどについて一方の親と意見が合わない場合、子どもの前でその話をしてはいけません。代わりに、あなたと一方の親が電話で会話する時間を計画するか、電子メールやテキストメッセージでコミュニケーションをとることに同意してください。この方法でも紛争を解決できない場合は、カウンセラー、メディエーター、年配者、宗教的助言者、法的助言者などの人々に助けを求めることをお勧めします。


          対立の渦中にいるニック

 両親の声が大きくなるのを聞いて、ニックは胃が痛くなった。両親の声を聞いていると、胃がキリキリと痛んできた。物事はヒートアップしており、本格的な口論になるのは数分後だとわかっていた。彼は寝室のドアを閉めて、音楽の音量を上げた。
 彼が覚えている限りでは、両親はよく喧嘩をしていた。離婚する前もそうだったし、離婚後もそうだった。ニックの就寝時間のような小さなことでも、誰が養育費を払うべきかというような大きなことでも、口論になった。
最悪だったのは、いつもニックの前で口論をしていたことだった。ニックを迎えに行ったときに玄関先で口論し、ニックが寝ようとしているときに電話で口論したこともあった。一度はニックの学校の演劇でも口論になったこともあった。ニックは、他の子どもたちやその親、先生たちの前で恥ずかしい思いをした。その件で両親を許すのに長い時間がかかったが、それでも何も変わらなかった。両親はただ口論を続けていた。
 ニックは、両親が口論する原因は自分にあると確信していた。結局のところ、両親はいつも彼のことで口論していたのだった。彼がどこに泊まるか、誰がピアノレッスン費用を負担するか、誰が彼を学校に送るか。他に何か原因があるのだろうか?彼は学校に集中できず、ピアノを弾くことにも興味を失った。両親の怒鳴り声が聞こえるのではないかと思い、友達を家に呼ばないようになった。そのため、最近では殆どの時間を自分の部屋で過ごしていた。たった一人で。
 ニックの大好きな先生、アダムソン先生は、ニックが不機嫌そうで、成績が下がっていることに気づいた。ある日、先生はニックに「何か話したいことはないか」と尋ねた。ニックは、両親以外に話せる人がいることが嬉しくて、いつの間にかアダムソン先生に両親の喧嘩や自分の気持ちを全て話していた。
 アダムソン氏は、ニックの許可を得て、ニックの両親に電話をかけた。アダムソン氏は、ニックが両親の口論に責任を感じていること、それがニックにどのような影響を与えているかを説明した。ニックの両親にとって、自分たちの行動がニックにどんな影響を与えているかを聞くのはつらいことだったが、自分たちの行動を変えなければならないと考え始めた。
 その週の後半、ニックの父親は、ニックの母親と別居していたときに医師から勧められた家族カウンセラーに電話することにした。最初は一人でカウンセリングに通っていたが、何度かセッションを受けているうちに、カウンセラーからニックの母親にも参加してもらうように勧められた。ニックの母親は、カウンセリングを受けることでまた口論になるのではないかと心配したが、ニックのために試してみることにした。
 簡単ではなかったが、二人はカウンセラーと何度か会い、ニックを二人の対立から遠ざける方法を考えた。二人は、お互いにどんなに怒っていても、ニックをもっと愛していて、ニックに焦点を当てる必要があることに同意した。何か問題があった場合は、電子メールで連絡を取るか、カウンセラーと再度会って話し合うことにした。
 カウンセラーとの面談の後、ニックの両親はニックと向き合い、離婚の責任はニックにないことを説明した。両親は、ニックの前で口論したことを謝罪し、ニックが自分の気持ちをカウンセラーに話してみるのがいいかもしれないと考えていることを伝えた。
 ニックは、もう口論を聞かなくてもいいんだと安心し、良い方向に向かうと確信した。

親がときどき行うゲーム

 親が気づかないうちに、子どもを対立の渦中に巻き込んでしまうことがあります。別居中の親が子どもをお互いに対して利用しているという話を聞いたことがあるかもしれません。
 子どもは既に多くの変化や感情に対処しなければなりません。親がいつも意図している訳ではありませんが、親の対立の渦中に子どもを入れる必要はありません。このような行動をとる親は、たいてい怒っているか、一方の親とコミュニケーションが取れないと感じています。その理由が何であれ、子どもに悪影響を与えることになります。
 争いの渦中に子どもを入れたくはありませんよね。そこで、どのような行動を避けるべきか、幾つかの例をご紹介します。

 子どもを「賞品」にする
 両親が対立しているとき、どちらかの親が子どもを「味方」につけて「勝とう」とすることがあります。子どもに、自分が「正しく」、一方の親が「間違っている」と信じさせることが「賞品」なのです。一方の親は、子どもに離婚の原因を話しすぎるかもしれません。あるいは、一方の親がもう一方の親について否定的なことを言うかもしれません。
 子どもが傷ついては元も子もありません。時間が経つにつれ、子どもは最初に「勝った」親に腹を立てるようになるかもしれません。子どもが大きくなり、何が起こったかをより理解するようになると、自分が利用されたと感じるかもしれません。

 「交渉の切り札」としての子ども
 一方の親がもう一方の親を脅して、自分の思い通りに行動させることがあるかもしれません。
 「養育費を払わないなら、子どもに会わせない」とか
 「渡したお金の使い道を言わないなら、養育費の支払いをやめる」
 「新しいパートナーとの付き合いをやめないなら、子どもにはあまり会わせない」
 親がこのような行動をとるときは、子どものことではなく、お互いの関係を重視しているのでしょう。

 メッセンジャーとしての子ども
 時には、親同士が直接会話をしないこともあります。その代わりに、子どもをメッセージャーとして利用することがあります。
「お父さんに、お父さんの家にいるときは宿題をしなければならないと言いなさい」。
 「お母さんに、弁護士が私に電話してくるのをやめさせろと言いなさい
 「お母さんに、買ってあげた服を返してくれと言いなさい」
 これでは、子どもが対立の渦中に置かれてしまいます。これでは、子どもはストレスや不安を感じてしまいます。そうではなく、子育ての問題について、一方の親と直接コミュニケーションをとる必要があります。子どもを仲介役にしないようにしましょう。


         メッセンジャーのモニカ

 アニカとラメシュは、お互いに話すことを拒んでいました。
 そのため、アニカがラメシュにメッセージを伝えるときは、12歳の娘モニカに伝えていました。
 「お父さんに、あなたの修学旅行の費用を半分出してもらうように言ってね」。
 ラメシュも同じことをしました。
 「お母さんに、平日の夜遅くまで残っていないように言ってね」
 時には物事が非常に複雑になることもありました・・・。
 「お父さんが金曜日に迎えに行くのが嫌なら、隔週の火曜と水曜に教室まで送ってもらうようにしないと」
 モニカは混乱し、イライラするようになりました。彼女がメッセージを伝えると、お母さんやお父さんが怒ることもありました。彼女はメッセージを伝えるのが嫌でした。両親が自分に怒っているように感じたのです。彼女は責任を負うには若すぎました。お金のこと、スケジュールのこと、何もわかっていない。大事なことを忘れていたらどうしよう。
 ある日、アニカがモニカに父親に何かを伝えてほしいと頼んだところ、モニカが叫んだのです。「お父さんに言えばいいじゃない。大人なんだから」。
 アニカはショックを受けました。モニカが引き受けてくれると思っていたのですが、それは間違いだったようです。
 アニカが自分を奮い立たせるのには一日中かかりましたが、その日の夜にラメシュに電子メールを送りました。そして、モニカを介してではなく、二人で直接話し合う必要があると提案しました。
 アニカからのメールを受け取ったラメシュは、ひどい気分になりました。娘のことよりも自分たちの気持ちを優先させていたことに気づいたのです。ラメシュは、たとえ直接のコミュニケーションが難しくても、モニカのことを一番に考えなければならないことに同意しました。
 二人は2週間に一度、モニカのことだけを話す電話会を予定し、その間は必要に応じてメールでやり取りすることにしました。
 コミュニケーションをとるのは依然と負担でしたが、モニカに負担をかけてはいけません。

 スパイとしての子ども
 一方の親が、もう一方の親について子どもにたくさんの質問をすることがあります。
 「ママにはボーイフレンドがいるの?一晩中泊まっているの?」
 「お父さんは新しい車を買ったの?"」
 「ママは仕事を見つけたの?」
 このような質問は子どもを困った立場に置くことになります。子どもは、自分が親のことを密告しているように感じたくないのです。また、このような質問は子どもを混乱させます。親が何か悪いことを本当にしているのではないかと、子どもを不安にさせてしまいます。その上、親がこのようにして得た情報は信頼性に欠けることが多いのです。
 元パートナーのことを知りたいと思うのは当然のことですが、子どもがもう一方の親のことを「告げ口している」と感じないようにしなければなりません。


             スパイの罠

 パトリックは、父親に本当のことを言うのは気が引けます。
 「どう?ママには新しいボーイフレンドができたのかな?知りたいんだ」とパトリックの父親は言いました。
 パトリックの父親は、母親のことをよく聞いていました。父親のお金で新しい家具を買っているのか、夜遅くまで外出しているのか、どんな友達が家に来ているのか、などなど。パトリックが答えを知らないことも含めて、たくさんの質問をしてきました。
 パトリックは、母親に言われていたので、今回は何も言いたくありませんでした。母親と交わした約束を破りたくなかったし、父親に嘘をつきたくもなかったのです。そもそも、両親は離婚しているのに、なぜ父親は母親のことを尋ねるのだろう?
 パトリックは父親を愛していましたが、その一方で行き詰まりを感じてもいました。なぜ父親は、この行為がパトリックに影響を与えていることに気づかないのだろうか?

 ディズニーランド・ペアレント
 親は子どもが別居や離婚から受ける影響をもちろん心配します。時には親が離婚を贖ったり、子どもを愛していることを示すために、例えば、次のようなことをするかもしれません。
  ・高価なプレゼントを贈る
  ・休暇や外出に連れて行く
  ・家事を免除する
  ・門限など、年齢に応じた制限や責任を免除する。
 これらは、短期的には子どもを幸せにするように見えるかもしれませんが、悪い結果を招くこともあります。一方の親は、そんな高価なものを買う余裕がなく、罪悪感を覚えるかもしれません。プレゼントを贈る側も余裕がないことがあります。
 子どもにプレゼントを買ってあげても、離婚したことに対する埋め合わせにはなりません。また、どちらかの親が離れている時間の埋め合わせにもなりません。
 更にまた、子どもの家事や責任を免除しても、子どものためにはなりません。子どもには、あなたが仕組みやルールを与え、責任を持つことを学ばせる必要があります。子どもはあなたにそれを期待していますし、あなたの親としての仕事の一部は、子どもが最終的に責任ある大人になるのを助けることです。

 貶し合い
 子どもの前で、あなたや一方の親がお互いを貶めることがあります。
 「お父さんは頼りにならないわね」
 「お母さんは決められないだ」
 「どうしてお父さんはあなたをホッケーの試合に連れて行ったの?ホッケーなんてつまらないのに」
 一方の親について良いことが思いつかなくても、ネガティブなことは言わないようにしましょう。あなたが一方の親を批判しているのを聞くと、子どもは一方の親に対して悪い印象を持ってしまいます。また、子ども自身も批判されているように感じてしまうこともあります。

 子どもに金銭的な話をする
 両親が一緒にいる家庭でも、家族が好きなものを全て買うことができないことはよくあります。別居すると、1つの世帯を支えていた収入が2つの世帯に分けられます。そのため、どちらかの世帯が好きなものに使えるお金が減ってしまうことがあります。
 子どもが物を欲しがったり、活動に参加したがったりしたときには、その余裕がないことを説明しても問題ありません。例えば、「今はそんな余裕はないのよ」といったように。
 お金の問題を子どもに話したり、その問題を一方の親のせいにしたりしないように気をつけましょう。こう言ってはいけません。「お父さんが家を出て養育費を払ってくれないから、あなたをホッケーキャンプに行かせる余裕がないのよ」といったことは言わないようにしましょう。
 金銭的な問題は大人の問題であり、お金の問題を話すことは子どもに負担を感じさせます。お金の話をすると、子どもは親の対立の渦中に巻き込まれてしまいます。

自分への問いかけ:私たちの共同子育て関係はどうなっているか

1.これまで紹介した「ゲーム」に自分が当てはまっていませんか?
2.共同子育ての関係を改善するために、一方の親との遣り取りにどのような変更を加えたいと思いますか?
3.一方の親と話し合う必要がある具体的な問題を特定してください。本章の前半にある「共同で子育てをするための幾つかのヒント」で紹介されているコミュニケーションのヒントを使って、どのように問題を話し合いますか?どのようにしてコミュニケーションを改善できますか?

(了)

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