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思い出を溢れるほどに

無機質な病室の壁に、思い出を色付けしてもらった。

春の海。
あの夏の日。
秋のフェス。
冬を待つ海の空。

吉太郎と過ごした日々。
ささやかな時間。

海の冷たさも、吉太郎の重みも、空の青さも、すぐにそこにあった笑顔の明るさも、溢れる愛も、もう戻らない。

そして、私だけがフレームから消えていなくなる。

それまでは、壁いっぱいに広がった溢れる思い出と愛を浴びていたい。

輝いていた日々の温もりと、笑い声だけに包まれていく。

静かに、穏やかに。
深い眠りにつくまで、ゆっくりと。

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