「山の名前のお菓子屋さん」

学芸大学が最寄り駅だった高校時代に「マッターホーン」というお店をなぜか時々利用した。
今となってはなんでこんなところで高校生がお菓子を買っていたのかわからないし、そんなに美味しかったかどうかも覚えていない。ただ、遊んで遅くなってしまった翌日に母親のご機嫌とりをするのに買っていくんだと先輩が言っていて、それいいな真似しようと思ったのだけぼんやりと覚えている。

イラストレーターが手がけた女性のイラストのパッケージが可愛らしくて、それだけでここで買い物することが嬉しかった。ちなみに喫茶もあるけれど、高校生にはちょっと入りづらくて、結局利用したことはなかったと思う。

高校を出ると学芸大学も特に縁のない街になってしまったので、今は手土産にすることはないけれど、この辺りで遊ぶと、たまにこのお店を思い出す。機会があったら何か買って食べてみたいなぁ(包装紙が可愛いから)と、今でも思う。それとも、今こそイートインするチャンスだろうか。でもイートインすると包装紙が貰えないんだよね。

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それとは別に、最近引っ越しをして、最寄りの駅にもう1つ山の名前のお菓子屋さんがある。成城学園前の「アルプス」。イートインはいつも順番待ち。お年賀の時期は予約しておいたほうが確実だ。最近、藤沢で買うなら「葦」より「日影茶屋」や「クドウ」だと言うかなり保守的になって来た両親のお土産に、これならどうだと何度か買って帰った。

高齢者に片足を突っ込んでいる夫婦二人きりなので、量は多くなくていいだろうと、ちょっと小ぶりの箱に入ったお菓子を選んだ。

彼氏が実家に初めて来たときに買って行った「小さなチーズケーキ」も、年明けに落語を見に連れて行ってもらった時にお礼に渡した「薄くていっぱい巻いてるロールケーキ」も、とても好評だった。アルプスの包装はしかし唆らない。かなり昔ながらの薄いピンクの紙袋に、曲線的な字体でお店の名前が書かれている。ピンクと言っても可憐な乙女を通り越していて多分これはババくさい。このババくささを乗り越えてまでして、大切な人に美味しいお菓子を食べて欲しい。そんな気持ちの時、私は「アルプス」を目指す。

バスを降りて駅の西口から、線路の北側商店街を通ってお店に立ち寄って、駅の正面口から改札を抜けて電車に乗ると、無駄のない動きができたなぁと少しいい気分になる。

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