見出し画像

貴族のつぶやき(上流階級ギャグ・プルーストのメモ)

(3年前に書いたwordファイルを見つけて面白かったので、掲載する。これ、プルースト「失われた時を求めて」を読みながらメモをして、そのメモをおもしろおかしいギャグにしたやつだったと思います。たぶん本文の原形をかなり保ってるのが多いです。だから放っておいて忘れてたのかな。3巻くらいで読むのを辞めたけど、面白い表現の宝庫だった)

貴族のつぶやき
 
①おれがすぐに笑わなくなったのは本気で笑って笑い疲れたからだ。見せかけの笑いのあいつはいつまでも笑いつづけている。HAHA。おれはやつを笑っている。
 
②君がエサをあげた鳩、飛び方がおかしくないか。「ホットワインに浸したパンくずを与えたのさ」それは洒落てる!
 
③おれと君の仲じゃないか。タバコくらいでいちいち許可をとることはないのさ。「パイプはいいの?」もちろんさ。
 
④感動的な音楽はやめてくれ。泣きすぎて、鼻風邪ひいて顔面神経痛をしょいこむのはごめんだね。医師の診断書ももっているのさ。
 
⑤ハンバーグの森林浴って知ってるかい?レストランの前でだーっとヨダレを垂らしながら指をくわえて店内を見るセラピーなんだ。いま君だけが注文してハンバーグを食べてるわけだけど、気にせず食べ続けてくれ。
 
⑥やきもちを焼くって乗馬に乗るって言うのと同じことだろ。
 
⑦この前、ブロンズ像の股間を無意識に撫でてて、はっとして気まずくなったよね。おれもブロンズになりたいと思った。
 
⑧おれの鼻の穴がふくらんでいたのは、バラの香りが漂ってきたからだよ。
 
⑨ペットのヒトコブラクダ。目にルビーのコンタクトをいれてる。
 
⑩この怪獣はペットのキマイラ。激辛料理を食べて火炎のようなベロをしている。


キマイラ


 
⑪いけね。シガレット・ケースを忘れてきたわ。
 
⑫(これなんてどう見ても本文そのまんまだ)おれには大画家の描いた作品の中に、知り合いの顔の個人的な特徴をあてはめて喜ぶという特殊な性ヘキがある。はるか昔に描かれた肖像と、そこに描かれているわけではない現実の人との類似に気がついた時、個人的特徴はその個人から遊離し、一般的な意味をもつようになる。接吻の時に触れ合う彼女の頬も、その肉の柔らかさではなく、繊細で美しい線の錯綜として鑑賞する。彼女をつくるその線をたどる作業は肖像画を仕上げるようなものだ。やがて彼女の身体にもフレスコ画の断片を見出すことで、この類似はますますの美しさを彼女に授けたが、視線が自分のだらしない身体に及んだ時、急速にこの美術鑑賞欲というか性欲は減退し現実へと引き戻された。つまらない射精をした。
 
⑬恋という神聖な病。
 
⑭旅人が出発の日に二度と見ることのない景色を目に焼きつけるかのように君を見る。
 
⑮おれは貴族だからビンタした時に、「顔に花粉がついてたから掃ってやったぞ。カトレアの花の」と言う。
 
⑯貴族だからエッチすることを「カトレアをする」と言う。これは、彼女の胸に刺したカトレアの花を直してあげた時に思わず胸を触ってしまったからである。花の匂いを嗅いだ時には、胸に顔をうずめてしまい、それをきっかけに始まった愛撫、この愛撫が発展して愛の営みをするようになっても、カトレアという言葉だけは隠語として残り、ふたりの間の肉体所有の行為を「カトレアをする」と言うようになったのである。お分かりいただけたか。貴族でごめんなさい。
 
⑰志村けんが白鳥のパンツを履いていたけど、貴族は一角獣のパンツももっている。一角獣は獰猛だけど純潔な処女を前にするとおとなしくなる。
 
⑱貴族はスカンクの毛皮のマントを持っているが、これを臭いんじゃないかと思ってしまうやつは貴族ではない。ニセ貴族もしくは、鳥貴族である。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?