見出し画像

幸せになる準備ができたら、カードキャプターさくらを読むといい

# 60 書き手:アケル

 2人とあまり話せない間、漫画カードキャプターさくらを読んだのでその感想です。

 カードキャプターさくらは、世代的にはドンピシャなのだけど、読む機会がなくてなかなか読んでいなかった。
 クリアカード編から、YouTubeに数話アップされるようになったのがきっかけで、クリアカード編の14巻とYouTubeの最新話、そして無印…と呼んでいいのか分からないが、小学校時代の12巻を読んだ。

 タイトルに書いた通り、この話は今の自分だからこそ最後まで読めて、新刊も予約して感想を書くくらい満足できる読み物になった。
 ただ、この話のテーマは、幸せな世界を信じることができなかった頃に読んでたら挫折していたと思う。
 世代ドンピシャだと言ったものの、当時のぼくは幸せなんて要らないと思ってたし、一生苦しみながら生きていくのだと決めてかかっていたから。

 なんてスレた少年時代を生きてたんだと苦笑いするけど、どこにも安全な場所がない子供時代だった。
 少年漫画が好きだからというのもあるが、殺し合い、奪い合う世界の物語の方が「世界なんてそういうもんだろ」と共感できてしまったのだ。(その過程で兄貴分のタツと出会ったのだから、人生どう転ぶか分からない)

 だから、読み進めるにつれ、何度か昔の自分の“幸せな一生なんてなくていい”という気持ちに向き合わなくてはならなかったし、“こんな安心できる世界なんてあるはずない!”という気持ちも何度も起こった。

 この物語は、絶望や苦しみの只中にいる人間を助けることは難しいと思う。ただ、幸せになりたい、どこかに幸せがあるはずだ、と一歩足を踏み出した時、この物語はお守りになる。なんというか、鞄の中に入れて、ふと表紙の可愛いさくらちゃんと目を合わせたくなる。


※ここからはネタバレ含む感想です

【クリアカード編のテーマ:幸福は、ただ好きな人と一緒にいるだけで得られる】

 このテーマは漫画の台詞の中にあるわけではなくて、「貴方にとって『幸せ』とは何かしら?」という問いかけなどから読者が窺い知るようにできているから、言語化すると無粋だとは分かっている。

 でも、読み手としてあえて言葉に表すなら、ただ好きな人と一緒にいられることが幸福で、どんな困難も乗り越えられる、というのが、カードキャプターさくらのテーマなのだろう。
 ただ、今までの物語と違って、クリアカード編は「でも、そうは思わない天才的な魔術師が、自分を犠牲にして完璧に幸福で安全な世界を渡した時、どうなるんだろう?」
と、ccさくらの愛の信念が初めて揺らいだ。

ユナ・D・海渡は悪意も敵意もなかったはなかったが、物語のテーマ…確固たる愛を覆す初めての存在となった。
 
魔法が完成され彼がいなくなった代わりに、過去の一切の苦悩から解き放たれた秋穂ちゃん。さくらちゃんと双子になり、優しい父と頼れるお兄ちゃんと木之本家で幸せな日々を送る。
 それでも、なにかがおかしい。その幸せは、かつて心から感じた幸せとズレている。


 彼女の選択は最新刊15巻でぜひ読んで欲しいが、あえてテーマが一度壊れた世界を提示して、その上で「貴方にとって、その幸せは本当の幸せなのかしら?」と問いかける。

 書き手の伝えたいことは既に分かっていて、行ってしまえば予定調和だ。
 ただ、それでもこの訴えは胸に響く。
 
 ぼくは元々幸せになる気もなくて、誰かにとって自分がどれほど大切かなんて考えもしなかったから、どちらかといえば海渡の気持ちの方が納得できる。

 海渡は“好きなもの・大切な存在”がいなかった…本当はいたけど、それを感情として気づかないようにしていた…から、自分が好かれている・大切に思われていることも感じられなかった。

 ぼくのようにスレた人間でない以上、秋穂ちゃんに自身が与えた幸せを突っぱねられた時に、素直に共に幸せになることを応じて欲しい。 


【兄貴分のタツと、桃矢お兄ちゃんの共通点】

※兄弟としての惚気を含みます

 全巻通して読んでるうちに、なんだかうちのタツゴロウとさくらのお兄ちゃんの桃矢くんが似ているなぁと思ってしまった。
 うちの不遜かつ乱暴な兄貴と比べるのはなんとも申し訳ないが、1番似てるのは、大事な人を守り過ぎずその選択を尊重できるところだ。

 男目線になってしまうが、好きな女の子がいると、何よりも庇護欲が生じてくる。“守ってやりたくなる”というわけだ。
 良くも悪くも男性らしさであり、男らしさにこだわると自分が守るべき存在を常に欲してしまう弱さだと、ぼくは自戒を含めて思っている。
 桃矢のさくらに対する好きは、恋愛ではないけれど、物語のキャラに悉く「シスコンだからね」と言われるくらいに充分に庇護欲がある…はずだ。
 でもこのシスコン兄貴、とても健全である。

 さくらがカードキャプターとして危険な目に遭ってることは、薄々気づいている。
 それでもさくらを過度に守ろうとしたり、カードキャプターを辞めろと言わない。辞められないことも、あるいはさくらが自分の力をコントロールする
修行と思っていたのかもしれないが、それにしたって、世の不健全なブラコン・シスコンを見ると、あまりに物分かりが良すぎる。
  

 物語の始まりから桃矢くんはバイトに明け暮れていて、必ずしもさくらちゃんにひっついてるわけではない。その点も、記号的なシスコンとは異なると感じる。

 桃矢くんがバイトしてる理由は、自分の学費は自分で払いたいのと、さくらちゃんが好きなことをする時の足しに、と作中で言われていたが、ぼくとして 
は彼にも葛藤があって、どこかの過程で
「いずれさくらが大切な人と出会って別の道を進むから、妹離れしよう」
と決めてさくらちゃんと離れる時間を作るようになったのではないかと妄想している。

 
 尤もこの邪推は、兄貴のタツの影響だ。再会してから昔ほど格好つけず葛藤や自分の感情をぼくに見せるようになった。

 ちなみに、ぼくが桃矢くんを推すように見ていると
『そいつがにいちゃんの方が良かったんか…?』
といじけたことを言ってきたので
「この人をいいなと思うのはお前に似てるからだよ」
と返してやったら、やたら嬉しそうだった。


うざい表情のタツ(ここら辺は桃矢くんとは全く似てない)


 そんな感じで、今回は最近読んだマンガのレビューでした。もしccさくら のワードでファンの人が読んで、「なんか合間にタツゴロウとか知らん人出てきたぞ?」とかなったらすみません、身内の話です。
 もし興味がありましたら、こちらもご覧ください。



【おまけ:いつも読んでくれてる方向けのつぶやき】

 ちなみに漫画はクレオも一緒に読んでいた。
 影響を受けたのか、急に『おれ、ケロちゃんみたいなマスコットポジションがいい!』と言い出して姿を小さくしたり、架空の生き物に変身したり色々と研究している。


結局、白い孔雀になった。空想の孔雀かな?と思ったら、白孔雀というのは実在していた。しかも神の遣いだとか。
クレオ『ほら見て!神々しいでしょ!神々しいでしょ!!』
アケル「やかましいわ」
 孔雀はガチで鳴き声が五月蝿い。そこらへんまでリアルに合わせんでいい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?