見出し画像

蒸し暑い雨にすずやかな魔法を

こんな雨の夜。まだ雨上がりが少しむっと蒸し暑くて、雨の後に嬉しい涼しさがやってくるわけでもないのに、何で急に雨降るねん、と思ってしまいそうな晩夏の雨に、思い浮かべてすずやかな気分に浸っている歌がある。

(魔法のように心の中で口ずさむようにしている)

夏と秋と 行きかふ空の かよひ路は
かたへすずしき 風や吹くらむ

──みな月のつごもりの日よめる
古今和歌集 凡河内窮恒

夏と秋が行きかう空の路(みち)は、片方に涼しい風が吹くのだろうか。

という意味。詞書(ことばがき、歌を詠んだ日付)には「みな月のつごもりの日よめる」とあり、水無月、6月。旧暦の夏の最後の日に詠んだ歌だ。

それだけ路が行き交っているなら、雨のひとつやふたつ急に降ってもくるだろう、と思い、ふふーん♩と気をとりなおしている。

傘を持たずして雨に濡れて夜ふかしをしている人に。明日からの三連休の雨空を、頬を膨らませて見上げている人に。魔法のお裾分けです。
私は秋がとびきり大好きだから、その足音に耳を澄ませている時間はたまらなくうきうきして、こんなにもよく効いちゃうのかもだれど。

おやすみなさい。
花のような夢が見られますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?