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新しい達成感

2021年10月3日(日) 晴れ
カウンセリングで話したことをすべてまとめようと思ったのに、書きたいことの一部しか書けなかった。そんなことなら天気の話とか銀杏の話とかするんじゃなかったとも思ったけど、それはそれで違う気がする。今回は10月3日のカウンセリングについて確実にまとめる。

①アルバム作りが終わってホッとしました
そう報告したら、その「ホッと」の中身について掘り下げていくことになった。達成感はなかった。達成感はなかったけどいいものができたと思う。納得している。達成感はなかったけど終わってしまう寂しさがあった。今回はへとへとにならなかった。
それに対して先生は言った。「感情的なコストを支払うと達成感が生まれるんです。やっと終わったって。今回は感情的なコストを支払っていないので達成感はない。だけど、いいものができたと思えているし、納得している。もしかしたらそれは達成感と呼べるものなんじゃないでしょうか?五十嵐さんにとって新しい達成感」と。

「グレーゾーンの感覚」とも先生は言った。おそらく鬱のときは世界に対する解像度が下がっているので、自分自身の微細な感覚にも反応できず、肯定感も否定感も極端なものになってしまう。極端でなければ感じられないから余計に完璧な成果を求める。創作活動においても、達成感を得るために感情的なコストを惜しみなく支払う。実際は、感情的なコストと作品の仕上がりに相関性がなかったとしてもだ。そのうっとりするようわかりやすい成果を人間関係に求めれば、その歪みは自傷行為や共依存のかたちで現れることになるのかもしれない。
つまり、俺はその幻想からいくらか自由になったのだと思う。完璧もないし、完成もない。でも自分ができることはやったし、それが空気を振動させることを知っている。目にみえるようなわかりやすい達成感が不要になって、もっと説明しづらい新しい感覚のなかに留まっている。そういうことなのかもしれない。

②歌詞が審査にひっかかりました
配信手続きで歌詞の修正を求められた。友人の力も借りているので、以前よりもイライラせずに対処できている。今は再審査の結果待ちだが、歌詞を変更して録音し直したので、いっそもう一回審査にひっかかってほしいと思っている。昨年のアルバムと同じ日付での配信を計画していたけれど、それが延期することに対してもあまり抵抗がない。以前よりも思い入れが減っている。
「その思い入れも、感情的なコストを支払った結果に生まれるのだと思います。今回は縛りの少ない状態で自分のペースで活動出来ていた。コストを支払ってないから対価も求めない。制作して、何かトラブルが起きて、対策をとる。今回は制作を楽しめたから、トラブルや対策のなかに楽しみを見つけられている。不思議なもので、起きていること自体は変わっていないんです」というようなことを先生は言った。つまり、変わったのは俺の感覚だということ。なんだか自分が100点の答案を見せびらかしているような気がして背筋を丸めてしまった。

③なんか、良い報告ばかりですみません
俺が先生にそう言ったのは照れ隠しみたいなものだと思う。数年前は泣きながら助けを求めて、いつだって答えを焦っていたくせに、って。
それに対して先生は言った。「何もなかったってことは、何もなかったんじゃないんです。”これまで積み重ねてきた結果として何もなかった”なんです。たとえば、特に女性に対して言うことが多いんですが、結婚して幸せになりたいなんて無理だよ、って。結婚して幸せになれるなら僕はカウンセリングじゃなくて結婚相談所をやります。自分が幸せになるように自分で積み重ねていくしかない。五十嵐さんはそれをやってきた。他人から幸せにされようと思わなかった。その結果として今があるんです」と。
その言葉を聞いて、心が弱っているときだったら泣いていただろうな、と思った。照れ隠しで謝る必要もないのだ。きっとこれから何度も受け止めることになるだろう。恵まれたんじゃなくて、自分で勝ち取ってきたんだってことを。

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