教習日記#4 『坂道発進』 2018/03/14

前回まで、右左折をひたすら訓練した。やさぐれ教官の助言で右左折攻略の光明を見出した私は、なんとか、次のステップに進むことを許された。

次のステップ、そう、坂道発進である。前評判ではここは簡単らしく、次のS字クランクが難関とのこと。しかしこれまでの教習で何かを「簡単だ」と感じたことのない自分にとって、そんな下馬評はなんの意味も持たない。「坂道発進」、漢字が4個も連なっている。見るからに手強そうじゃないか。

今回の教官は、2度目の女性。妙齢。この前の妙齢淑女とはまた雰囲気の違った人だ。高く太い声。優しそう。

助手席に乗り、坂道発進の説明を受ける。「楽勝やんと思ったかもしれません。何一つ難しいことはありませーん。」とのこと。

そのスタンスでこないでほしい、と思った。どんなに簡単でも「初心者には難しい」という体裁を保ってほしい。そうでないと、「できて当たり前だ」という共通認識による嫌なプレッシャーのもと運転をしないといけない。自動車教習とは、「全くの初心者が、できないことをできるようにする場」である。決して「できる人をもっとできるようにする場」ではない。どんなこともまずもって「できない」のが教習を受ける者の原理的な性質であり、その前提を教官が共有するのは教習所における最低限の倫理のはずだ。、、、大げさである。

さて、坂道発進である。やってみると、確かになんてことはない。
・坂の頂上付近で止まる
・サイドブレーキを引いて
・アクセルを軽く踏みながらサイドブレーキを解除
・そのまま発進、ブレーキで調整しながら下る

文字にすると、さらになんてことない。楽勝である。俺を見くびるな。

平常時は敬語の教官が、ガチの時に命令口調になるのが怖かった。「建前」の仮面が破れる瞬間を見てしまったような。「止まれ止まれ」と言われた。





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