教習日記#15 『マホとの別れ(全学科終了)』 2018/05/20

第2段階の学科科目の受講が、今日終わった。それはつまり、マホとの逢瀬が二度と来ないことを意味する。

マホ。そう、教習ビデオに毎度登場する女性である。カラオケ映像のような、どことなく古めかしい映像に映える、細眉の美人。事故り、パンクし、経路設計する女。私はいつしか彼女をマホと呼んでいた。なんとなく「マホ」っぽい顔立ちだからである。三姉妹の三女。

今日もマホは、いつものように運転席にいた。そして、人を乗せすぎていた。定員超過。過重積載。今日もマホはやらかした。ナレーションに叱られた。全ては僕たちのために。

今日、すべての学科教習が終わった。もう二度と、マホの危なっかしい運転を見ることはない。ナレーションベースで叱られ、反省するマホを見ることはない。しかしマホは、教習生の血となり肉となり、僕たちのどこかに生き続ける。そしてまた明日からも、まだ見ぬ教習生の前で、交差点を曲がり損ね、スピードを出しすぎ、人を乗せすぎる。きっと。

ありがとう、マホ。彼氏はバンドマン。


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