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2018年3月の記事一覧

はかなき寄辺をはなれて〜大辻隆弘『景徳鎮』書評

 前歌集『汀暮抄』から五年、大辻隆弘の第八歌集『景徳鎮』が刊行された。一見平明にも思える歌のかずかずをよく見てみれば確かな技巧が幾重にも重ねられており、深みを増した文体とともに独自の境地へ辿り着こうとしているようである。
 五十代後半の茂吉について思いを巡らせたり、その茂吉の本歌取りをしたりと、どこか自身の年齢を意識している印象のある本歌集であるが、背景としてやはり死を前にした父の姿があるだろう。

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