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2020年5月30日

先日Twitterでもお伝えしたけど、札幌のSPiCEというライブハウスの存続支援プロジェクトの一環として、コンピレーションアルバムに参加する。

随分前に解散したmondaysickのメンバー5人が集まり、未発表曲1曲の制作をすることにした、その理由や経緯、今思うことについて、少し話しておきたくて、この記事を書いてます。

きっかけは、ベーシストのユッキーからの相談だった。

彼はPAエンジニアとしてSPiCEに勤めており、想像に難くないだろうけど、新型コロナウィルスの影響から職場が危機的な経営状況に陥ってしまった。

支援へのリターンとしてコンピを作るので、mondaysickか、ame full orchestraとして、かつてのメンバーに協力してもらえないだろうか? との問いに、ame full orchestraに関しては連絡が取れないメンバーがいるから、〆切までの短い期間にどうこうすることはできないが、mondaysickであれば協力できるかもしれないと、僕は答えた。

相談があった翌日の朝、一番古いハードディスクを引張り出して、なにかなかっただろうかと、まるで整頓されてないファイルの山を掘り起こしていった。

そして、その膨大なデータの中に、お世話になった全国のライブハウスの名前を、たくさん見つけた。

セットリスト用の事前提出資料や、ライブ映像、皆で夢を追い、旅をした記録が、幾つも幾つも見つかった。

可能なら、その場所すべてが失くなってしまうことなく、ずっとそこにあってほしいと願うけど、それは僕にとって、海に落とした砂を一粒残らずかき集めるような絵空事だから、できない。

でも、困ってるメンバーのためだったら、微力だとしても力になれるはずだ。

バンドは、協力し合って進むものだから。

こういったコンピレーションアルバムに収録される音源として、多くの人が想像するのは、デモだったり、ライブテイク、リリースタイトルのアウトテイクの類だろうと僕は邪推してしまうんだけど、mondaysickにとっては8年振りの新作発表になるわけだから、過去の作品と同等か、それ以上のクオリティーにしたいなと思い、札幌随一であるHIT STUDIOでのレコーディングセッションに絞って、データを捜すことにした。

すると、おもしろそうなファイル名が目に留まった。

日付は、セカンドミニアルバム『九月七日座』のツアーファイナル後のもので、僕自身、ようやく記憶が呼び起こされたのは、3曲の楽曲名を見た時。

『“大人の階段” 最終回』『将来の夢』『九十九折りの返信』

それらは、次作をメジャーで発表するという水面下の時系列の中で行ったプリプロダクションのデータだった。

プリプロダクションというのは、正式な原盤制作に入る前に、実際にレコーディングしてみて、アレンジの確認などをするために行う作業なので、未完成だったり、ラフだったりするんだけど、唯一『九十九折りの返信』のみ、フルコーラスの緊張感ある楽器隊の一発録りセッションが残ってた。

再生した時、自画自賛で恥ずかしいけど、鳥肌が立って、涙が落ちた。

言葉に尽くせない感情が蘇って溢れたというのも、もちろんあるけど、「ああ、こんなかっこいい音楽やってたんだ」と、包み隠さずに白状すれば、僕は、その音楽に圧倒された。

バンドをやめてから、「ひとりでもやれる」と言い聞かせて積み上げてきたDAWの知識やスキルは、遠い昔の自分に蹴飛ばされて、粉々になって、長い年月の道端に見事な破片が転がった。

だからこそ、この音に今の鎌ちゃんのボーカルを乗せて、残しておきたいという気持ちに至ったんだと思う。

5人でやり取りしてたら、なんだか昔に戻ったみたいだった。

ほぼ毎日スタジオに入っても飽きることなく5年半を一緒に走り抜けたあの頃に、一瞬だけ戻ることを許されたような、不思議な時間を過ごした。

あのバンドは最高だったし、たとえば世界を知らない5人の兄弟が己の力を疑うことなく信じきる気概というものは、囲いの外に出ても、そこそこ通用する場合があって、出会ってからの僕たちはそんな兄弟みたいに生きたから、あんなにかっこいい音楽を奏でることができたんだと思う。

あくまで今回は支援プロジェクトへの参加という形なので、全国のレコードショップで手に入るというわけではないけど、8年前の楽器隊セッションに2020年最新のボーカルテイクをオーバーダブし実現した、mondaysickの未発表曲『九十九折りの返信』、正真正銘僕たちの新作なので、ぜひ皆さんに聴いてみてもらいたいです。

そして、再結成や復活を望んでくれる声は本当に光栄だし、メンバーも、叶うのなら、もう一度やってみたいという気持ちがあるのは事実だけど、何度も何度も自問自答を繰り返して、僕は個人的に、今の5人が、あの頃の自分たちよりも優れた音楽を制作したり、演奏したりすることはできないと思ってる。

ひとつは物理的に離れ離れになりすぎたということ、ひとつは人生を懸けて突き進んでた自分たちが、今の自分たちと対バンするとしたら、きっとこう言うと思うから。

「負けるわけねえだろ」

あと、僕は、バンド人生の最後に残しておきたい作品のイメージがあって、それはmondaysickのようなサウンドではなく、もっと隙間のあるシンプルなもの。

だから、仮定としてmondaysickが活動を再開するようなことがあっても、僕が残しておきたい別軸の音楽は発表していく。

mondaysickが昔のようにライブ活動をするというのは現時点で非現実的だけど、オンラインでやり取りしながら曲を制作してリリースしたりと、そういった可能性はないとも言えないし、未来のことはわからないというのが正直なところです。

ただ、僕たちは全員が互いを尊敬し合ってるから、尊重し合えるという間柄で、今でも連日LINEグループで笑い話をしたり、言うだけ自由の夢物語を話してる。

過去にリリースしたタイトルを最近になってサブスク解禁した理由は、この時代、僕たちの作品に触れようと思えば、レコードショップに足を運んで、わざわざ注文しなければならないわけで、それは敷居が高いから、現代のリスニングスタイルに沿う形で、また聴いてもらいたい、その希望を当時のレーベル関係者の方々に伝えて、お願いをしたということです。

僕にとってはライブハウスが青春だったし、人脈のほとんどはバンドが繋げてくれたものだから、また日々が平穏を取り戻し、あのステージから音楽が鳴り響くことを心から願ってます。


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