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歩きだす速さで

君の体温が僕の中から消えようとしている。
その消失を僕は喜んだり悲しんだりしている。
これから先の
たくさんの季節の中に
僕は君を探すかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
どっちでもいいんだ。
君の言葉が
あの夏に留まっている限り。

愛と呼ばれるものは
ついに君の心を映さなかった。
出会いと別れの数が
等分になるように
さよならを積み上げていく。

歩きだす速さで
僕は生きていこう。
君を忘れられるように。
忘れることを覚えていけるように。

君がくれた言葉の意味が今更分かったような気がする。
それを君に置き換えてみるとまた分からなくなるんだ。
これから先も
たくさんの言葉の中に
僕は君を探すかもしれない。
そうじゃないかもしれない。
どっちでもいいんだ。
君の言葉が
僕の中に留まっている限り。

愛と呼ばれるものは
ついに君の目に宿らなかった。
幸福と不幸の数が
等分になるように
さよならを積み上げていく。

歩きだす速さで
僕は生きていこう。
君を忘れられるように。
忘れることを覚えていけるように。

あの夏の一瞬が
君と僕の全部だった。
代わり映えしない暑さだ。
空も雲も濃い緑も
全部どこかで見たようなんだ。
それでも忘れられないんだ。
あの夏にしかないように思えるんだ。
どうしてだろう。
全部君がいたからか。
そうじゃないのなら。
いや
そうとしか思えないんだ。

歩きだす速さで
僕は生きていこう。
君を忘れられるように。
忘れることを覚えていけるように。

君の体温も
君の言葉も
君のありきたりな悲観も
君の月並みな諦念も

もういいだろう。

歩きだす速さなら
僕は大丈夫だから。


貴方のその気持をいつか僕も 誰かに返せたらなと思います。