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Beck - Sexx Laws 8ビットPSG風カバー

昔の8ビットパソコンのPSG風サウンドで、ベックの曲を鳴らしてみました。ジャンクSPORTSのあの曲ですよ。

PSGっていうのはファミコンにも搭載されていたシンセサイザーで、MSXとか昭和の8ビットパソコンに搭載されがちなものでありました。

そのサウンドを再現して遊べるサイト(PSG for Web)を見つけて以来、ちょいちょい遊んでいます。このサイトの震えるところは、当時のBASICのPLAY文のプログラムソースを入力してPSGソックリな音を鳴らすことができるっていう点です。

その辺の話は、過去にも何本かテキストに書きました。

というわけで、今回はベックのセックス・ロウズをフルコーラス、PSGアレンジによるカバーって具合でやってみました。

ベックなんで、歌メロ部分の入力が難儀でした。ふわふわ歌ってるのをデジタルで、しかも手打ち入力でとなるとけっこうたいへん。

しかも原曲は普通のバンドサウンドに豪華なブラス・セクションを加えた厚いアレンジですから、3音しか出せないPSGでの再現は不可能です。

ただ、それだけに出す音と諦める音の選別とか、たとえばベースのチャンネルの音が鳴ってない部分を使ってバッキングの一部を割り込ませるみたいな、普通のDTMだと全くやる必要のない苦労を楽しみました。

こっから先は、大半の人にとってチンプンカンプンな話ですから、暇すぎて困ってる人のみお付き合いくださいませ。

聴いていただくとわかる通り、ピコピコ音のショボい音源となっていますが、当時はこの程度でもデジタルと音楽の融合という感じで、未来を感じたものです。

ちなみに、同じPSGでもレトロPCの場合とファミコンの場合はちょっと具合が違ったんです。ファミコンは矩形波、三角波、ノコギリ波といった波形を選択して、音色を少し変えることができたとか、ノイズ用として1チャンネル余計に使えたとか、機能が充実していたんです。

レトロPCの場合は、簡単にプログラムできるBASICでは波形選択もできず、ベンドとかポルタメントも使えなかったんです。そしてその仕様はBASICのソースで動かすPSG for Webでも同じです。要するに非常に制約が多いんです。

PSG for Webは簡易的に遊べるようにはなってるし、各種パラメーターの設定も当時のレトロPCでやっていたことと全く同じことができるようになっていてけっこうなのですが、3分を超えるような曲を入力するのはたいへん。本来そこまでガッツリやる用のサイトじゃないんです。

当時みたいに、手打ち入力することによってレトロPCをシーケンサーにするっていう遊びを体験するには、PSG for Webで遊ぶ他には、実機を中古で購入するとか、MSXのエミュレーターを使うなんて方法もありますが、それはそれで問題が。

レトロPCの実機はそう安く買えるものでもないです。ソコソコ安価に入手できそうな機種にPCー6001というのがあるんですが、当時のパソコンですからハードディスクなんて搭載してません。

全てオンメモリで動くんですけど、PC-6001のメモリ容量は16キロバイト(!)作文用紙4枚分です。今回の曲みたいに、3チャンネルフル使用で3分超えとなると、16キロバイトじゃ足りません。

今回は2万文字くらい打ってますから、20キロバイトくらいあるんです。

MSXのエミュレーターを使うという方法も、ある部分ではPSG for Webよりも楽かもしれませんが、データとして使える文字列の長さに制限があったり、色々問題があるんです。何より、コピー&ペーストが使えないのが痛いです。

そんなもろもろの問題を、コツコツ時間をかけるという1点のみで突破して入力したのが今回のセックス・ロウズなわけです。たったこんだけのピコピコで数十時間費やしてます。アホというか変態というか。

パシャパシャ音でパーカッションのパートを作るのはそこまでたいへんじゃありませんが、たいへんなのはそれ以外の2つのパート。

主旋律とベースのパートは、全ての音について音量の上げ下げを細かく連続的に繰り返して、音の減衰パターンを調整しています。PSGは普通にならすと平坦なプープー音なので、この調整をしないとどうにもならないんです。

ハードウェア・エンベロープという機能を使っても音の減衰パターンは指定できるし、実際パーカッションのパートではそれを使っているんですが、旋律を奏でるパートでそれを使っても良い効果が得られないんです。

そもそもエンベロープは3チャンネルで独立してかけることができないっていう仕様なんです。もしそれをやると、他のパートのエンベロープに引っ張られてしまいますから、パーカッションのパート以外は全部手動でやるんです。ほとんどマゾ的行為ですが、避けられないんです。

何いってんだかわからんという人、それは実に正しい反応です。ただ、この程度のピコピコサウンドで音楽を鳴らすだけで、昔はこんな苦労してたんだよっていう話です。昭和のDTMは根気一本勝負だったわけです。

PSGで遊ぶシリーズのテキストは何本か投稿していますが、メインテーマは苦労を楽しむという部分にあります。

近頃はDTMに限らずコスパだタイパだと、効率を重視する考え方が主流で良しとされているようですが、こういう無駄なことをする時間というのは逆に人生を豊かにすると思います。

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