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浴衣の記憶

浴衣には特別な思い入れがある。
幼い頃からどんな浴衣を着たかをよく覚えている。
白地に色とりどりの花の浴衣、藍色の朝顔の柄のもの、そのあとは母の紺の浴衣を着たと思う。
着道楽の素養も多少あって、たぶん好きだったのだと思う。
浴衣には短い夏の思い出がよく馴染んでいる。


思春期は部活や勉強で忙しかったり、引きこもり生活を満喫していたせいでお友達と出歩く生活もしていなかったせいか、夏に浴衣を着て出かけることもなかった。
その頃は夏のコミケくらいは出かけてたかな。
でもそれ以外は完全なる引きこもり。
高校1年の夏は日本にいなくて、それ以降の夏はほぼ勉強したり、引きこもって本ばかり読んでいたせいか夏らしい記憶は大学生の後半になるまであまりなかったりする。
大学生になっても前半は完全なる引きこもりを満喫していて、後半にいきなりキャンパスライフを始めたのは今思い返すと笑ってしまう。
コミュニケーションが下手くそで、頭を抱えることが多かったけど、イベントらしいことにようやく参加できて、浴衣を着て花火を見にいったのを思い出した。

今、手持ちの浴衣はピンク、黄色、青、黒の4枚なのだけど、どれも深い思い入れがある。
2枚は長野の小諸の街の呉服屋さんで買って、後の2枚は京都で買った。
なかでも、写真に載せてるピンクの浴衣は特別な思いがある。
これは黄色の浴衣と一緒に小諸の呉服屋さんで買ったものだ。
高3の夏、だったと思う。

長野県には冬のスキー以外縁がなかった私だが、この年の夏は勉強の合間をぬって家族で小諸に来ていた。
冬に受賞の連絡があった、とある文学賞の表彰式があったからだった。
この文学賞への応募は、物好きな学校の先生が毎年夏の課題として出していたエッセイのうちお眼鏡にかなったものをピックアップして出していたものだった。
優等生的な文章はあまりうまくなかったのだけど、なぜだかその先生とは気が合って、国語の担当がその先生になってからは窮屈な文章を書くことから解放されて、のびのびと書きたいように書けるようになったあとのエッセイだった。
ほら、一応提出する文章なので変な内容だと思われないようにしようとか、教科書的な文章にしておこうとか色々考えるじゃないですか。
学校の課題は特に。
そういうものから解放されて、かなり自由に書いたものだと思う。
その頃はそれなりに時間があり、趣味としてインターネット(Web)に文章をあげたりしていたので、文章を書くというのは当時の自分にとっては呼吸のようなものだった。
学校は結構長い期間その賞に応募していたはずだけど、なかなか2次だか3次だかの選考を突破できなくて、出し続けてきてその年にはじめて入選したらしかった。
そういえば選考ではけっこう揉めたらしい?というのを表彰式の後の会で聞いた気がする。
いわれてみれば連絡がきた時は、とりあえず最終選考に残ったので入選はするけど何の賞になるかはわからない、という話だった。
下読みがあって選考がある、らしい。
なるほどそういう仕組みなのか、と興味を抱いた記憶がある。
ちなみに私の書いたエッセイは、その後暫く私の通っていた学校で教材として使われていたらしいというのあとで後輩からきいて知った。
あんな恥ずかしい文章に解説つけたの!
いいけど。


ともかく入選したので、折角だから勉強の休息がてら行ってこいと送り出されてしまい(担当の先生は気楽な夏休みをとってるというのに!笑)、やってきたのが小諸だった。
まあせっかくなのでと言うことで家族旅行にして、車出してもらって、観光したりもしましたが。
小諸は案外コンパクトではあるけどちゃんと城下町で、あちこち史跡をみてまわるのは当時から日本史好きだったこともあって楽しかった。
長野の街の関係性とかもなんとなくわかって、得るものがたくさんあったと思う。

このピンクと黄色の浴衣はその時の小諸の呉服屋さんで一目惚れして買ったもの。
全面窓のところにディスプレイしてあって、どうしてもピンクの浴衣が着たくなってしまったのだった。
ちなみにお店の中に黄色の浴衣がセール品として売っていて、うさぎ柄とあまり見ない色合いに惹かれて一緒に買ったのだった。
その後そもそも外出しないので出番があるのか危ぶまれる時期もあったけど、20代になってからはそれなりに着たおしている。
黄色のうさぎ柄の方はアラサーになってようやく着るようになったので、10年くらいは箪笥で寝ていた計算になる。
年を重ねていい塩梅で着られるようになったので、最近はよく着ている。
ピンクの方はそろそろ着るのには年齢的に実はクエッションがついても不思議ではないけど、この前着てみたらまだまだ組み合わせ次第で着られそうだったのでちょっと安心している。

ちなみに当時書いた文章は水にまつわる話だったんだけど、ここ数年趣味に加えた銭湯やサウナの話でしょっちゅう水風呂の水質がどうだとか感触がどうだみたいなことを書いたり話したりしているので、昔から大して変わってないな…?と思っている。

小諸の呉服屋さんにディスプレイ一目惚れだったピンクの浴衣


最近はこっちの色もよく着ています


タイトルの写真は最近着たもの。
背中に皺が寄ってしまっていてあまり美しく着られてはいないのだけど、趣味で着ているものなのでそのへんはご容赦願いたい。

#夏の思い出 #浴衣

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