前田道路の決算にみる買収防衛は出来るのか

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今日見ていくのは前田道路株式会社です。
その名の通り道路の舗装など、道路工事をメインにしている会社ですね。

さて、このようなニュースがありました。

前田道路が捨て身の焦土作戦、535億円の特別配当実施へ

筆頭株主の前田建設工業に敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けられている前田道路が、とんでもない奇策に出た。2020年3月期に500億円以上の特別配当を実施し、手持ちの現金のほとんどを吐き出すというのだ。前田建設の狙いは前田道路の持つ豊富な現預金ともいわれる中、自らその魅力をなくしてしまえば前田建設がTOBを断念するのでは、というものだ。だが前田建設が本当にTOBを撤回するかは分からない。前代未聞の「捨て身の焦土作戦」は通用するのか。
前田道路は2月20日、1株当たり650円、総額535億円の特別配当を20年3月期に実施することを臨時株主総会に付議すると発表した。これまで計画していた配当を含めると今期の配当総額は約615億円にもなる。19年末の現金及び現金同等物は連結ベースで850億円超という前田道路。手元にあるお金の7割超を一気に吐き出すことになる。単体で見るとおそらく手元資金のほとんどを放出することになるだろう。まさに大盤振る舞いだ。
前田道路株を24%強持つ前田建設は、51%を上限とする株式買い増し、つまり前田道路の子会社化を目指してTOBを実施中だ。これに対して前田道路は反対意見を表明し、敵対的TOBとなっている。前田建設のTOB成立をなんとか阻止したいという前田道路の思いが詰まったのが、今回の奇策だ。

前田道路は、同系列の前田建設からTOB(株式公開買い付け)を仕掛けられていたのですが、その対抗策として多額の配当をすることで企業価値を下げTOBをやめさせようという作戦に出たようです。

今回はそもそもどうして、前田建設は前田道路に対してTOBをすることを決めたのか考えていきましょう。

先ほどのニュースでは買収防衛策として多額の配当をするとのことでした。逆に考えるとTOBをかけられることになった理由が現金をたくさん持っているから、つまりキャッシュリッチな会社だからという事になりますよね。
実際に前田建設と前田道路は事業上のつながりはほぼ無く、今回の買収によるシナジーは少ないと言われており、前田道路がキャッシュリッチな企業であることが今回のTOBの理由だと考えれれます。

ですがただキャッシュリッチであればそれだけで買収する理由となるわけではありません。

例えば特に事業はしていないけど現金を10億円持っていて借金もない会社があったとします。
現金は豊富ですが、この会社が20億円で売られていたら当然買いませんよね?

ですがこの会社が5億円とかで売ってればどれだけ借金しても買いますよね、つまり割安であるなどは買う理由になるという事ですね。

では割安だから買収を決めたのでしょうか?

それではこちらの資料をご覧ください。

純資産は2090億円な事が分かりますね、実際は全く違うので何とも言い難いのですが、基本的に現在の企業の価値は純資産と考えられます。

つまり前田道路の現在の価値は2090億円とかんがえます、現在の発行済み株式数は約8300万株ですから1株当たりの理論的な価値は2500円ほどになります。

さて、今回の前田道路のTOB価格は3950円です。

あれ、どうやら割安だからTOBをしたわけではなさそうですよね?

それではどうしてなのでしょうか?

では割安でない金額で買収したとしてもどうして得をするのか考えていきましょう。

こちらの資料をご覧ください。

丸で囲んだ部分が、現金もしくはすぐに現金化可能な項目です。
アンダーラインを引いた部分が、近々金銭的な支払いが必要な金額です。

丸で囲んだ部分の金額から、アンダーライン部分の金額を引いてみます。
そうすると1150億円ほどになります、実は投資有価証券についてはすぐに現金化するのが難しい部分もあるので多少割り引いて考えても1000億にはなると考えていいでしょう。

前田建設は前田道路の株式をすでに約24%保有しています、今回のTOBでは51%を目指すという事ですから今回は27%分を購入すればいいわけですね。

そのために必要なのは、今回の買い付け上限である2181万1300株です。
これにTOB価格である3950円を掛けてみましょう。

すると約860億円になります。

どうして前田建設はTOBをしたのか

ここまでくればどうして前田建設が、前田道路の買収を決めたのかがはっきりと分かりますよね。

子会社にするという事ですから、当然買収した企業の会社のお金を自由に使えるようになります。

つまり860億円出したら、少なく見積もっても1000億円の自由に動かせる資金が手に入るわけで買った時点で得しているのですね。

さらに前田道路は安定して数十億の利益を出している優良企業ですし、もちろん会社には資金以外の他の資産もありますからそれもついてくるわけです。

という事で前田建設が前田道路にTOBを仕掛けた理由は、860憶円出したら1000億円以上のお金を動かせるようになるからです。

だからこそ615億円もの配当をすることが、強い買収防衛策となり前田建設はTOBを取りやめる可能性が非常に高くなるという事です。

会社としては500億以上の資金を無駄に失うことになりましたから、今後拡大していくというビジョンは見えなくなりました。
今後は経営効率を上げて、安定経営を目指していくのではないでしょうか。

前田建設の買収取りやめを予想します!!

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