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毎年800(480-1270)万トンのプラスチックごみが海へ排出されている!

海洋プラスチック問題は、いま喫緊となっている環境問題の一つだ。
Jambeck et al. 2015, Science, 347, p768は、太平洋、大西洋、インド洋、地中海、黒海に面している国の、海岸線から50km以内に住んでいる人々から排出されるゴミを起源として、毎年何トンのプラスチックが海洋に流れ込んでいるかを2010年の統計データを用いて推定した。

Jambeckらの手法は以下のとおりである。
[1年間に海洋に運ばれるプラスチックごみの量]
=[海岸から50㎞範囲内の人口]
× [年間一人当たりが排出する廃棄物量]
× [廃棄物のうちのプラスチックの割合]
× [プラスチックごみのうち不適切な処理がなされた割合]
× [不適切な処理がなされたプラスチックごみのうち海へ運ばれるものの割合(15%~40%)*]


*:In Jambeck et al. supplementary materials, section "Estimating the input of mismanaged plastic waste to the ocean", the last sentence says "In our study, we assumed a more conservative range of conversion rates (15%, 25%, 40%) of …."
という計算を国ごとに行い合計するという手法だ。

 沿岸国192か国それぞれの、[海岸から50㎞の範囲において、不適切な処理によって排出されたプラスチック廃棄物の量]と、[海洋へ運ばれたプラごみの量](不適切な処理によって排出されたプラごみのうち25%(15-40%)と仮定)についてまとめたものが、以下の表である。


https://www.science.org/doi/suppl/10.1126/science.1260352/suppl_file/1260352_supportingfile_suppl._excel_seq1_v1.xlsx
をもとに改変

Jambeck論文の世界全体のプラスチック廃棄物に関する推計は以下の様にまとめられる。
・沿岸国192か国に暮らす64億人の人々(世界人口の93%)が排出した固型廃棄物量は、2010年一年間で2.5ビリオントンに上る。
・そのうちのおよそ11%、275メガトンがプラスチック廃棄物である。
・全プラごみ量を、沿岸国に暮らす人々のうち海岸から50㎞の範囲に住んでいる人々の割合でスケールすることで、海岸から50㎞の範囲内で生み出されるプラスチック廃棄物量は99.5メガトンと推計。
・そのうち31.0メガトンのプラスチック廃棄物が不適切な処理がなされた。
・不適切な処理がなされたプラスチック廃棄物のうち25%(15~40%)が海に流れ出ると仮定すると、2010年の一年間で海に流れ出たプラごみの総量は、8.0 (4.8 ~ 12.7 )メガトンであると推定される(表のGlobalのところに相当)。

各国の[海岸から50㎞の範囲において、不適切な処理によって排出されたプラスチック廃棄物の量]をマッピングしたものが下図である。

図 Jambeck et al.2015, Fig.1.

国別でみると海洋ゴミの増加に最も寄与しているのは中国で、年間2.2 (1.3 ~ 3.5 )メガトン。日本は30位で、年間4 ( 2 ~ 6 ) 万トン のプラごみを海洋に排出していると推計されている。

 環境に排出されたプラスチックごみは分解されずにそのまま残り、毎年排出されたものがどんどん蓄積されていくものである。日本の責任も決して小さくないはずである。

タイトル写真 WWF(https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/3776.html)より

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