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言葉をめぐる世界で本質を見つめる

私は今、生後1ヶ月の小さな命とともに暮らしている。
当然のごとく、彼はまだ、言葉を持っていない。
何かを伝えたいとき、彼はただ、泣く。
手足をバタバタさせて、顔をしわくちゃにして。
ただ、全力で。

母である私は、彼のメッセージを受け取り、
自分なりに解釈して、行動する。
そこに言葉は存在しないけれど、通じ会えたとき、
確かな安心感が生まれる。

もちろん、通じないこともあって。
そんなときはお互い、なんとも言えず悲しい気持ちになる。
そしてもう一度、言葉にならない言葉を伝え、受け取り、確かめ合う。

この言葉を介さない対話を重ねることが、
私たちの間に、確かな信頼関係をかたちづくっていくのだと思う。

私がインタビューライターとして行っていることは、
これによく似ていると思う。

もちろん相手はちゃんと言葉を話してくれる方なのだけど、
私が受け取り、文章として表現するのは、
相手が口にしたいわゆる「言葉」だけではない。

そのときの仕草、表情、間合い、話すテンポ、醸し出す空気。
すべてを全身で感じ取り、自分の中で咀嚼し、
伝えたいメッセージの本質を見出して、また言葉として世に贈り出す。

その一連の行為が、私が考えるインタビューライターの働きだ。

「本質」なんておこがましいようにも思うけれど、
ただひたすらに相手と向き合い、言葉にすることで、
そこに信頼関係の小さな芽が育まれているように思う。

でも今、言葉をめぐる世界には本質的ではない議論が横行している。
ありとあらゆるところに言葉が溢れ、
言葉尻を捉えて揶揄する人が現れたり、
ちょっとした言い回しが攻撃の対象となったり。
そんな場面に出会うたび、私はとても空虚な気持ちに襲われている。

私にとって、「水澄む草青む」をともにつくる4人は、
いつも言葉をめぐる本質的な話ができる大切な仲間。
共通する「大切にしたいもの」を感じ取り、
議論を重ね、このメディアをともに立ち上げることを決めた。
ここに参加できることに、私は心からの喜びを感じている。

私たちがここで表現していくものが、誰かの心に、
言葉の世界に対する信頼感の小さな火を灯しますように。

そう願って、歩み始めたいと思います。

貴重な時間を割いて読んでくださったこと、感謝申し上げます。みなさんの「スキ」や「サポート」、心からうれしく受け取っています。