SeikinTV ノベライズ版 水晶の上で肉って焼けるの編


第一部 商品紹介編
「Seikin Music ah Seikin TV Oh yeah」
軽快な音楽とともにデフォルメされた男性が運動、料理、歌唱をしているアニメーションが流れSeikinTVの始まりが告げられた。
「はい皆さんこんにちはSeikinTVセイキンです。」
そう彼こそが日本一のYoutuberと呼び声の高いヒカキンの兄であり、また自身も登録者400万人を超える人気Youtuberであるチャンネルの主、セイキンである。
「焼肉好きな人が多いんじゃないでしょうか?」
セイキンは問いかける。
「そうこれからね、バーベキューなんかもやりやすい季節ですよね。」
ちなみにこの動画の投稿日は五月の中旬である。確かにセイキンの発言通りバーベキューをすることに適している時期といえよう。
「SeikinTVでも数々焼肉の動画やってきたと思うんですけど、今日はねまた一風変わった焼肉をやりたいと思いますそれがこちら。」
セイキンは手を一回転させたかと思うとその手には巨大な円形の水晶が存在していた。
「水晶プレートで焼肉!」
本日の企画の発表を行うセイキンの左側では水晶の影響で歪んだ登録者十万人記念の銀の盾が映し出されている。
「はいこちらご覧ください。ただのガラスじゃないんですよ。水晶なんですよ。見ての通り凄い透き通っているからわかると思うんですけど。」
セイキンは水晶プレートの角度を変えて見せることでいかに透き通っているかをアピールしている。
「ほらこんな感じで中にこう模様がはいってますよね。」
セイキンはカメラに近づきどのような模様が入っているか示している。
「これが水晶プレートなんですよね。この上で焼きにやると非常においしくできるらしいですよ。で、これ横から見るとはい、結構分厚いんだよね。」
セイキンは水晶を90度傾け見せつける。厚さはおよそ2㎝といったところである。
「まぁなんか綺麗ですよね。」
セイキンはてきとうな誉め言葉を口にしている
「重さはね、まぁまぁ重いねずっしりしています。この水晶プレート何がいいかっていうと石とかよりも遠赤外線が豊富らしいんですよね。それでふっくらジューシーに焼きあがるということなんですよ。」
セイキンは遠赤外線と言うときに手を振っているがこれが何を示唆しているのかは分からない。
BGMがより明るい音楽に代わり第二部が始まる
「ちなみにこれお値段は一枚一万円です。なかなかいい値段ですね。」
セイキンは何故か急にカメラに顔を近づけた。
「なんですけど、人工か天然かはちょっと分かりません。まぁね水晶は水晶なので早速使ってみましょう。」
この発言は水晶が好きな人間には無視できないものなのではないだろうか。このような行動の積み重ねで人間は好感度を落としていくのだ。セイキンは自ら犠牲に実践することで私たちにそのことを伝えようしているのではないだろうか。
第二部 使用編
「ちなみにこれ水晶プレートとスタンドがついて一万円でしたね。使い方としてはスタンドの上にこれを置くってことだよね」
セイキンはスタンドの上に水晶を置く
「こういう感じですねきっと。よくこれ見るとまっすぐじゃなくてちょっと傾斜になってるんですよね。こういう風に傾いていて油が流れるようになってるんですよね。」
傾ている水晶に手を這わせ傾斜がどの程度あるか分かりやすく説明している。
「いまこれガスコンロの上にセットしてみたんですけど、この上で肉を焼くということでここ油が垂れてきたらこのお皿に落ちるという…そういうイメージですね。それでもってこちら。」
突如画面の前にサシの入った高級な雰囲気のある牛肉と三種類程度の野菜が現れる。
「お肉と野菜が美味しく焼けるのかやっていきましょう。」
「じゃあね肉をセットしていきます。はいこんな感じかな。お肉セット完了しました。果たして焼けるのでしょうか。いきます ホイッ!」
セイキンはガスコンロのつまみ盛大に回す。
「今火を点火しました。なんかいきなり強火にするとパリィンとか言って割れそうだからちょっと弱火にして…なんかこう透明なプレートの上で焼くっていうのも不思議なものですね。焼けんのかな、これ。」
「今これに端の方に野菜も乗せてみました。」
ピーマンを二切れと椎茸を一切れしか乗せていないことを考えると彼がいかに動画映えを重視しているかが分かる。
「はい、この辺ご覧ください。ちょっとグツグツいってますよね。」
肉がアップで表示される
「ほらほらほら徐々に温まってきてますね。」
「これ今裏側から見ているんですけど、ちょっと焼け具合が分かるんですよね。これが透明な奴のいいところですよね。」
カメラのアングルが変わり、肉が焼けていることがこれ以上なく映し出されている。
そしてもとのアングルに戻り肉と野菜がアップで撮影されており、肉の焼ける音も聞こえる。
「どうかな?」
セイキンは肉を一切れ返す。
すると肉の表面は見事に焼けており、セイキンも
「焼けてきてる!焼けてきてるぅ!」
と大絶賛である。
「おおいいじゃん。結構すぐ焼けるね。」
セイキンの称賛は止まらない。
セイキンは数切れ肉を返したかと思うと、プレート上でもひと際大きな肉を返しにかかる。
「おぉー!良いかもしれない」
セイキン称賛は留まることを知らない。
プレートの端の方にある肉を返すと半分ほど身が赤かった。
「ちょっと端っこの方は時間がかかりますね。」
自分に不都合なことが起こっても決して責めない。これがセイキンという人間である。
「この辺もうOKじゃない?うんOK,OKちょっと箸を変えて。」
調理用と食事用の箸を使い分ける配慮を持つ。これがセイキンという人間である。
「これもういいでしょ。非常にいい感じに焼けております。はいじゃあこれね、タレにつけて、はぁーい美味しそう。」
肉を一切れ箸で取り、焼き肉のタレに肉を絡める。
「じゃあね焼きたていただきます。」
口に入れて三秒ほどためた後
「うんめぇ。」
と端的な感想を述べた。
「うんめぇこれ。うまぁ凄いふっくらしているけど。」
感想は止まらず具体的な良さまでセイキンは語り始めた
「しかもね、油がこれ垂れてきてますよ。」
セイキンは前述の傾斜により油が集まる機能を実際に目の当たりにして感動しており、さらに解説を続けようとした。
「もう垂うっ」
しかしセイキンは感想を言い終えることができなかった。セイキンの右目に跳ねた油が直撃したのである。後にこれが「狙撃されるセイキン」としてインターネットで大流行することを彼はまだ知らない
「あぁー。あはっはっはっは」
過剰に苦しむわけでも起こるわけでもないこれがYoutuberである。
「はいもう一気に焼けてきてるのでどんどん食べましょう。」
セイキンの食欲は留まることを知らなかった
「あぁーん、おいひ。」
「ちょっと焦げ目つきすぎたと思ったんですけど、それでも結構柔らかいです。ふっくら柔らかくジューシーに仕上がってますね。まぁこれ結構いいお肉使ってるのでだいぶレアでも行けると思うんでけど。僕はどっちかっていうと焼いた方が好きなんだよね。」
「うわ、もうこれ十分いいでしょこれ。」
セイキンは先ほどのひときわ大きい肉を返しながら言った。
「はいこんな感じでね野菜にはさんで食べるのもいいですよね。」
セイキンは突如現れたサニーレタスに肉を挟みながら意気揚々と言った
「柔らかぁーい。凄く美味しい。このね、野菜がいいんだよねまたね。」
「すいませんね、飯テロで。失礼いたします。」
セイキンは一切の誠意感じられない声で謝罪をした。
「バランスよく野菜も食べないとね。」
セイキンは肉の量の一割程度しかない野菜を食べながら言った。
「ちなみにこれ、一枚五百円です。かなりいい肉ですよこれは。」
肉を一切れ箸で持ちながら彼はいった。自らが富裕層に位置することを隠さず発言するこれが大物Youtuberの器量である。
「お!レベルちげー、柔らかぁーい。まぁこのプレートのおかげもあるんだけど肉いいなぁ。いや水晶ですよこれはきっと。」
良い肉だから柔らかいとわかってはいても水晶の手柄にする。これが彼なりの配慮なのだろう。
「あのー火を止めて五分以上たつと思うんですけど、まだずっとジュウジュウ言ってるんですよ。これが遠赤外線効果なのでしょうか。ちょっと詳しくはわかんないけど、よく焼けてますねこれは」
カメラが焼けた肉にクローズアップされ、肉の焼ける音が聞こえる
「あのねこれだと焦げてる感じに見えるじゃないですか。これでもめちゃくちゃ柔らかい。これ肉がいいっていうのもありますよ。これ一枚五百円だから。肉も重要だけどふっくら焼けるんでしょうね。」
セイキンは再度肉の値段を言う。
「それからこれ。これ油なんですけどよくたまっているんですよね。」
油をためるための皿が表示される。
第三部 感想&洗浄編
「ごちそうさまでした。」
セイキンは手を合わせながら自分のために犠牲になった命に感謝を述べる。
「実際使ってみた感想なんですけど。まずお肉ふっくら仕上がります。それから油が横に落ちるのがいいですよね。油がここに落ちることによって、網だったらどうしても煙とかが出るじゃないですか、どうしても。それが一切ないんですよ。室内に適しているなぁと思いました。あとは片付けなんですけど、洗い物簡単ですよねこれ。お皿みたいにこのまま辛苦に持って行ってバァーって洗剤つけて洗っちゃえばもう簡単。」
セイキンは淡々と感想を述べる。そして画面の左下には「※個人の感想です」の注意書きもしっかりとなされている。
「ちょっと実際に洗ってみたいと思います。」
場所が変わりシンクへ移動しており、シンクには水晶プレートがたたずんでいる。
「まずは高洗剤をかけて。水を流しながらこうざぁーっと。」
セイキンが早送りで水晶プレートを洗っている。そして明言はされていないがセイキン家で使用されている洗剤はどうやらフロッシュのようだ。
「はぁーい、元通り。」
「はいということなんですが、豪快に焼きたいという人には向かないと思うんですけど、あの透明なプレートの上で焼くっていうのがまた上品ですよね。だからきれいにやりたいっていう人にはいいかもしれません。」
「それではまた次回のSeikinTVでお会いしましょう。See You Next Time。」
セイキンはグッドサインをしながら華麗に動画を締めくくった。
エンディング始まり、セイキン&ヒカキンの代表曲「雑草」が流れている。
画面下部にはTwitter、InstagramのID上部には「チャンネル登録してね」という文字が赤くフォントのサイズが30はあるのではないかと思わせるほど大きい。チャンネル登録に対する絶対的な意思がそこにはあった。
かくして本日の動画は終了するのであった。

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