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"柔軟剤"のタオルへの使用を、なぜ私たちはおすすめしないのか。

IKEUCHI ORGANICの阿部です。

タオルは購入から時間が経つと、品質が悪くなる”消耗品”のイメージがありませんか?

お店で触った時はすごく良かったのに、洗濯したらすぐにヘタった、固くなった、ふわふわ感が消えた…。こういった声をよく耳にすることがあります。でも、せっかく気に入って選んだタオルですから、長く、気持ちよく使いたいですよね。

実は、洗濯・乾燥・干し方などのメンテナンスのやり方次第で、タオルの状態は使えば使うほど良くなります。私はこれを「タオルを育てる」と呼んでいます。

私は、社長の他に「タオルドクター」という肩書きを持っておりまして、みなさまに長くタオルをご愛用いただけるように、タオルのメンテナンスについて日々研究を続けています。

以前、こちらの記事では、自宅でできるオススメのタオルのメンテナンス方法を紹介させていただきました。

そして今回、タオルを長くご愛用いただくために、改めてお伝えしたいことがあります。

それが、“柔軟剤”との付き合い方です。

洗濯で衣類をやわらかく仕上げたいときに使う柔軟剤ですが、タオルが固くなってしまう要因として多いのが、タオルの繊維に柔軟剤の成分が堆積してしまうことです。この問題は以前から言われていて、今治のタオル会社でも「できるだけ柔軟剤の使用を避けることをおすすめします」とお客様に伝えている会社は少なくありません。

タオルを長く愛用いただくために、柔軟剤および洗濯と、どう付き合うといいのか。今回、私たちなりの考えを改めてまとめさせていただきました。

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柔軟剤により“吸水性”が損なわれる

はじめに、タオルにおける柔軟剤との付き合い方に気を配るべき理由からお伝えします。

まず、タオルに吸水性を求める人は、柔軟剤の使用はオススメしません。

なぜなら、柔軟剤がタオル本来が持っていた吸水性を奪ってしまうからです。下の動画を見ると、その違いをご理解いただけるかと思います。

買ったばかりの衣類は、なめらかでしなやかな肌触りです。ですが、着用・洗濯・乾燥を繰り返すうちに、繊維が細くなったり、毛羽立ったり、ごわごわになったりと、肌触りが損なわれていきます。それを少しでも防ぐために使用するのが柔軟剤です。

一般的な家庭用の柔軟剤には「陽イオン界面活性剤」が入っています。この成分によって繊維のまわりを薄い油膜が覆うような形で仕上がります。その結果、繊維と繊維の摩擦抵抗を弱め、滑りが良くなり、柔らかい肌触りとなります。

一方、繊維を油膜が覆うということは、水を弾く結果となります。つまり、タオルに備わっている吸水性をダウンさせてしまうのです。また柔軟剤の油膜が張ると、洗濯をしても汚れや洗剤がしっかりと落ちずに、生乾きや劣化の原因にもつながります。


看過できない“安全性”の問題

また、タオルへの柔軟剤の使用をオススメしない理由のひとつに、化学物質過敏症の問題もあります。

化学物質過敏症とは、洗剤・柔軟剤・芳香剤などの日常生活で私たちが使用しているものに含まれる化学物質に接触することで、頭痛や倦怠感など多岐にわたる症状があらわれる疾患です。 発症すると、ごくわずかな化学物質に対しても敏感な状態となります。この症状に苦しんでいる方が、年々増えていると聞きます。

タオルは身体に直に触れるものです。そして、赤ちゃんからご高齢の方まで幅広く使用されます。そのタオルに身体に影響を与える成分が含まれてしまうことは、やはり、よろしくありません。

IKEUCHI ORGANICでは「最大限の安全と最小限の環境負荷」というポリシーを掲げて、ものづくりをしています。そして、創業120周年にあたる2073年までに、赤ちゃんが食べても安全なタオルづくりの実現を目指しています。

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現在、有害物質の影響をなくすことを目的とした試験・認証システムである「エコテックス規格100」において、一番厳しく審査されるクラス1をクリアするところまではきました。まだ赤ちゃんが食べても大丈夫とは言えませんが、赤ちゃんが口に含んでも安全ですと確信をもって言い切ることのできる根拠はこれです。

同時に、食べても安全なタオルを実現するために「ISO22000」という食品安全マネジメントシステムの国際規格の認定も受けました。なぜタオル会社がこの認証をと驚かれることがありますが、食品を扱う会社と同じレベルで厳しく衛生管理を行っています。

このようにタオルにおける安全性を大切にしている私たちからすると、柔軟剤により安全性が損なわれてしまうことは、看過できないのです。


衣類とタオルを分けて洗うべき理由

では、どうしたらいいのか?

一番オススメしたいのは、タオルと衣類を分けて洗濯することです。

柔軟剤の優れているところは、繊維の摩耗を柔げるので、よれよれの服を整えたりと型崩れの防止ができることです。また、乾きが早くなるので、天日干しをされているご家庭だと乾燥にかける時間が短くなります。シャツやアウターなどには吸水性は求められませんし、時と場合によっては柔軟剤は活用すべきだと思います。

一方、タオルの洗濯の際には、柔軟剤の使用は控えていただけたらと思います。また、直接肌に触れて、吸水性が求められる肌着も、タオルと一緒に洗濯したほうがよろしいかと思います。

タオルと衣類を分けたほうがいいのには、柔軟剤の成分以外にも、もうひとつ理由があります。

それは、洗濯時の水が足りなくなる問題です。

タオルは吸水性が高いので、衣類と一緒にタオルを入れて洗うと、タオルが水をたくさん吸い込んでしまい、洗いもすすぎも十分な量の水を使えていないことがあります。

また、一般的な家庭用洗濯機は必要な水の量を自動で計測していますが、大抵は洗濯物の重さで決めています。そのため、乾いたタオルが何枚か入っていると、かさはあるけれど重さがないため水の量が少なく設定され、きちんと洗えていないことがあります。


柔軟剤を使用せずとも“肌触り”は保てる

このような話をすると、柔軟剤を使用せずに、タオルの手触りを気持ちいい状態に保つことはできるのかと疑問に思われるかもしれません。

結論からいうと可能です。

タオルのふわふわとした肌触りや弾力性をつくり出しているのは、タオル生地の”パイル”です。このパイルを良い状態に保つことが大切です。

こちらの記事に詳しく書きましたが、下の3つを実践するだけで、パイルの状態はかなり良くなります。

(1)洗濯機に入れる前に、タオルをビショビショに濡らす。
(2)脱水が終わったら、タオルを風になびかせる。
(3)過乾燥に気をつける。

また、洗剤の種類にも注意が必要です。合成洗剤を使用すると洗う力が強すぎて、綿本来が持っている脂分を全部奪ってしまい、ゴワゴワになってしまいます。

そのため、タオルや肌着の洗濯には液体石けんがオススメです。私がよく使っている液体石けんは木村石鹸さんの『SOMALI』です。

一点留意いただきたいのが、私が紹介したやり方と柔軟剤を使用した洗濯ではアプローチが違うので、当然、仕上がりに違いがでます。これまで柔軟剤を使って、タオルのふわふわ感を楽しまれていた方からすると、「いつもの感じとちょっと違うな」「いつものやり方のほうが自分は好き」と思われる人もいるでしょう。

結局は、タオルをどの観点から評価するかだと思っています。ご自身の手や身体が濡れていない乾いた状態で触れた時に、ふわふわと柔らかい感触を味わいたいという人もいると思います。ただ、タオルは濡れた身体を拭く用途として生まれたものですので、タオルメーカーとしては、ここを評価軸にしたいのです。「摩擦させて水を吸わせるのか」「濡れた部分に置くだけで水を吸わせるのか」の違いと言えば、分かりやすいでしょうか。

タオルをつくり、タオルを長く愛用していただきたいと想う私たちからすると、ご紹介させていただいたやり方を一度は試してもらえると嬉しく思います。


“洗濯代行”という選択肢も視野に

ただ、洗濯を2回に分けてやるなんて、忙しい日々のなかで無理と思われた方も少なくないでしょう。

ですが、冒頭でもお伝えしたように、モノを大切にし、少しでも長く愛用しようという想いがある人が現在増えてきていると思います。そういうモノとの関係を大切にしたい方に、こういう選択肢があるということを、まずは知っていただきたいと考えました。

また、近年のリモートワークの促進で、自宅にいる時間が増えた方も多くいらっしゃいます。以前なら洗濯を2回にわけるなんて、非現実的な選択だったのが、おうち時間が増えた今なら選択肢として持てる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

とはいえ、洗濯や家事にかける時間が限られていたり、そこに時間をかけるなら他のことに時間を使いたいという方もいらっしゃるでしょう。

そういう方は、”洗濯代行”を選択肢に入れてみてください。

現在、IKEUCHI ORGANICでは、全国に1200店舗以上のコインランドリー『Baluko Laundry Place』を運営する(株)OKULABと提携して、タオルメンテンスを受け付けています。

みなさまの愛用されているタオルをお預かりし、蓄積したダメージや汚れをリフレッシュして、お戻しするというサービスです。

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このタオルメンテナンスコースは私も監修に入らせていただきましたが、タオルにとって最適なケアが行えるオリジナルのプログラムで洗濯していきます。

洗剤も、タオルに適した石けんベースのものを選定し、乾燥工程前にはタオルの繊維を立ち上げる作業をおこない、プロの手で1点1点仕上げます。タオルが生まれ変わったかのような驚きを感じていただけるのではないかと思います。

洗濯を2回に分けて行うのが難しいという方や、ご自身でケアを行うのが不安という方は、このタオルメンテナンスを定期的に行っていただくことで、タオルを長く愛用できるようにケアすることができます。

ご自身のライフスタイルにあわせて、一番フィットする選択肢を見つけてもらえたらと思います。

(▼)『Baluko Laundry Place』代表・永松さんの洗濯やタオルメンテナンスへの想いを取材した記事です。


洗濯やタオルケアに“選択肢”を届けたい

ここまで、柔軟剤と洗濯について語ってきましたが、いかがでしたでしょうか?

今回、ご紹介した内容は、タオルケアにおける確固たる正解というわけではありません。あくまで、私たちが考える最適なケアの形にお伝えしたものです。

「洗濯とは、こうしないければならない」「タオルは、こうケアすべきだ」みたいな感じで、正解を押しつけるようなことをしたいわけじゃないんです。「こういう風にケアしたほうが、気持ちよくありませんか?」という提案なんです。

IKEUCHI ORGANICにしても、「オーガニックとは、こうでないといけない」みたいなことを世の中に言うつもりはなくて、「ぼくらは、こう考えています」というものをただただ形にしているだけ。その考えに共感いただいている方々が、ぼくらを応援してくださったり、繋がりをもってくださっています。

だから、今回の話も、「この人たちが唱える最適なタオルケアって、どんなもんだろう?」という気持ちで、一度試してもらえたら幸いです。やっぱり、体験してみたいとわからないことって沢山あると思います。

おそらく洗濯やタオルケアについて考える上で、ひとつの基準点にはなると思います。

私たちのやり方を気に入ってくださったら、継続的に衣類とタオルを分けて洗濯していただきたいし、『Baluko Laundry Place』とのタオルメンテナンスを定期的に利用していただくのもオススメです。また、ちょっと違うなと感じられたら、ご自身でやり方を追求されてもいい。

今回の記事が、洗濯やタオルケアについて考える興味の入り口に少しでもなれたら嬉しく思います。


<編集協力:井手桂司>

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