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(24)育成機能に特化した組織を作る(レーター期)

スタートアップ「レーター期」の5番目の記事です。
※レーター期:一般的には「事業が安定し継続成長が実現しIPOが視野に入る段階」を意味します。

今回の記事は、課題(24)「育成機能に特化した組織を作る」です。

課題24育成機能に特化した組織を作る


①「育成する」と「稼ぐ」を両立するための施策

アルー株式会社の業績成長のドライバーは、企業研修サービスという事業特性から「営業担当=人材育成コンサルタント」の熟達でした。

企業の人材育成課題は、個社ごと多種多様であり、時代ごとに変化します。
紋切型のソリューション提供では顧客に価値を提供できません。
お客様企業の状態をアセスメントし、各社ごとに解決課題を設定し、処方箋となる適切な人材育成施策を企画できる、熟達したコンサルタントとなることが営業メンバーには求められます。

当社の営業メンバーは、入社したばかりの未経験状態から、戦力化=一人前になり、熟達者になっていく階段登っていきます。
営業部長陣、グループマネジャー陣は熟達者として活躍されています。
基本的には、コンサルタントとしての熟達度合いにより、営業メンバーの生産性も変わってきます。


営業部全体の生産性を高めていくためには、
(1)未経験者の方に、いかに短期間で戦力化していただくか
(2)熟達者・戦力化メンバーの生産性を下げないか

の2点に取り組む必要がありました。

未経験者の方の早期戦力化のためには、会社組織としての育成活動が必要になります。
中途および新卒で入社し、営業部に配属されれば、まずは営業部としての基本的なオンボーディングトレーニングが存在し、その後、実業務にアサインされる中で、配属部署のマネジャーやOJTトレーナーといった方と実業務を通じた経験を積んでいただくことになります。

この時に「教える側の育成活動」には、相応の工数が掛かります。
懇切丁寧に教えたり、ロールプレイングをたくさん行ったり、商談・提案に対する密なフィードバックを行うことで「教えられる側」の成長スピードは早まります。
一方で教える側がそれだけの工数を掛けていますので、その方の営業生産性は基本的に低下することになります。

未経験者の方を早期に育成することと、教えることができるベテラン側の工数を掛けず高い営業生産性を発揮していただく、矛盾の両立が必要になります。

この解決策として「育成機能の専任化」という施策が考えられます。「育成する人」と「稼ぐ人」を分けることで、上記の(1)(2)の両立を狙うというものです。


②育てられる人数には限界がある

育成機能の専門化という施策を行わなかったとしても、部署に受け入れる新メンバー数が適正な人数であれば、営業活動と並行して生産性を落とさず育成をすることができます。
どのくらいの人数が適正なのかと言えば、例えば、新メンバーがトラブルを起こしたとしても、既存のベテランメンバーがカバーをすることができる水準です。

私が以前大手戦略コンサルティング会社の経営者から伺った話では、

「6人のチームに1名の新人を入れる」

という拡大が生産性を落とさずサステイナブルに成長をさせられる水準とのことでした。
組織拡大の成長率としては116%(7÷6)です。
戦略コンサルティングというビジネスも、個々人のコンサルタントの熟達が求められます。個人力が重要になる業界では、この「6人のチームに1名の新人を入れる」という水準は適正と考えます。

一方で、採用を加速化し、一度に多くの人数の新メンバーを営業部に迎え入れ、新メンバー数が組織の育成負担の限界を超えた場合、既存メンバーが育成・マネジメントやトラブル対応に取られてしまいます。
・育成が追いつかない
・未経験者によるトラブル対応に工数を割かれる
・営業活動に支障が出てしまい、既存メンバーのモチベーションが下がる
という 負のスパイラルに入ってしまいます。

当社のミドル期初期(2007年頃)では、ベテラン(戦力化人員)5名程度に対して、未経験者を一気に15名ほど増加させました。
営業部立ち上げの重点投資という位置づけではありましたが、結果は既に別の記事で語っている通り、その年の売上は前年比でほぼ変わらず、一方で営業生産性は前年比25%に落ち込んでしまいました。

数字だけではなく、ベテラン(戦力化人員)に掛かる負担は極めて大きく、その後の退職や組織問題を生じる原因となりました。

営業組織拡大戦略を実行するにあたり。組織的に新メンバーを育成できる限界を常に考慮にいれることは、極めて重要なポイントと考えます。


③育成機能専任化の進化の流れ

組織が大きくなると、育成を担当する機能を専門化していくほうが効率的になるタイミングが来ます。

アルー株式会社の事例では、前述の2007年頃に営業組織の立ち上げし、数年間苦闘の末、一定の組織化が実現しました。その後の育成機能専任化については、以下の3ステップがありました。

第1段階:部署内でOJT担当者をアサインする
当社は毎年の新卒採用、および中途採用を行い、組織拡大を進めておりましたので、営業組織が少しずつ拡大していきました。
2009年頃には、2007年に参画した新メンバーの方々も2年程の時間が経ち、戦力化がされていきました。そのタイミングにおいて営業組織では「OJT担当者」を任命するというところからスタートしました。
この時点では、営業活動と並行して、部署内で新メンバーを育成するという体制です。

第2段階:育成専門の期間限定のプロジェクトチームを組成する
2011年頃に取り組んだ施策として、その年の新卒入社営業部配属メンバーを全員一つの部署に集めた「育成プロジェクトチーム」を組成する取組を行いました。
2006年末に御入社された中田はるなさん(現ソリューション部門グループマネジャー)が、チームリーダーとなり、2011年入社新卒社員の方の育成担当となられました。
この取組みが当社にとっての最初の「育成専任組織」という取組みでした。
この時点では、育成専任組織アサイン期間は半年程度あり「重点的なオンボーディング施策」とも言える内容です。


2014年頃では、その取り組みを拡大し、新卒及び中途入社の新メンバーを一定期間、育成プロジェクトチームにて集中的なオンボーディング施策を行うように発展しました。

※ちなみにこの取り組みを経て、新卒入社メンバーの方と、中途入社メンバーの方のオンボーディングは、結論から言えば別々に実施する方がメリットが大きいと考えています。

新卒入社・中途入社一体育成運用についてメリット・デメリット
・メリット:チームが大きくなるので社内のネットワークが広がりやすい。立ち上がりが早いメンバー(多くのケースでは中途入社の方)が、OJT指導側のサポートに回れる。

・デメリット:新卒入社メンバーと中途入社メンバーは、そもそも社会・ビジネス経験が異なるため、一律育成は双方にマイナスが多い。中途メンバーにはスピード感が遅く感じられたりする。新卒メンバーには高度過ぎる要求と認識される可能性がある。


第3段階:育成役割を持った恒常組織を組成する
2015年、営業部長3名体制をスタートしたタイミングで、その中の一つの部署を「育成機能を持つ部署」として役割を設定しました。特に新卒入社メンバーは、この部署にのみ配属をすることにいたしました。(中途入社メンバーは、他2つの部署に配属していました)
この部署のグループマネジャーの方には、若手育成を得意とする方/想いを持つ方を配属し、育成ミッションを目標としても担っていただきました。


育成は一朝一夕にならず、時間が掛かる中期施策です。
営業組織を作っていく中での人材育成は「導入のオンボーディング」と「恒常組織における指導育成(OJT)」が、育成される側にとって十分に行われる体制・仕組みを如何に構築するかが肝要です。
一方で短期業績の最大化、育成側の短期負荷を下げるということも同時に実現する必要があります。
この舵取りを間違えると、業績未達による経営悪化や、メンバーの離職の重なりによる組織崩壊、中長期成長エンジンを構築できずその後の低迷が続く等の結果を招くことになります。


本記事のまとめ

◆営業部全体の生産性を高めていくためには、
(1)未経験者の方に、いかに短期間で戦力化していただくか
(2)熟達者・戦力化メンバーの生産性を下げないか
◆「育成機能の専任化」:育成(中長期成長)と稼ぐ(短期業績)を両立させる打ち手
◆育成可能人数には限界がある。新メンバー数が組織の育成負担の限界を超えた場合、既存メンバーが育成・マネジメントやトラブル対応に取られる
◆育成専任組織が作られるまでの流れ
第1段階:部署内でOJT担当者をアサインする
第2段階:育成専門の期間限定のプロジェクトチームを組成する
第3段階:育成役割を持った恒常組織を組成する


次回の記事は・・・・

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