仮装敵
毎日が途切れ途切れに進んでいる。
全てがその場限りである。
だから爆弾が必要である。
誰かが小説の中で、何の変哲も無い檸檬を置いて去ったことを爆弾を仕掛けて去ったかのように感じてワクワクした、と書いた(はず)。
日々そのものだ。
人生そのものだ。
人生なんて演劇だ。
私はこの前、中国女という映画を気まぐれに見た。よくわからなかったが、映画の中の男は言った。
"少年が包帯を顔にぐるぐる巻きにしてマスコミの前に出て行った。人々が食い入るように見る中、包帯をゆっくり外していき、遂にその顔が現になったが、傷も火傷も何一つ無かった。そのことに記者たちは激怒した。彼らは何も理解しなかった。これが演劇だということを。"
私たちがいつでも本当を生きていると思うか?
違う。
私たちはいつだって何かを隠してなにかの罪を背負って生きているはずだ。
今日だって誰かに何か嘘をついたろう。
気づいていないだけで、そうやって積み重なった嘘はいつの間に臓器いっぱいに溜まって、私たちを死の世界へ引きずり込んでしまう。
今この瞬間も確実に何かが壊れている。
分かりやすく言えば地球環境が壊れていること。
難しく言えばあなたの心が誰かの言葉や自分の行動に静かに壊されていること。
戦争なのかどんちゃん騒ぎなのか分からないくらい
銃声なのか歓声なのか分からないくらい
バカでかい音が街を駆けずり回っている。
そんな世界でこんなちっぽけな存在の私がどれだけ嘘をつこうと同じだ。どれだけ本当のことを言おうと同じだ。
だから、誰かに頼まれてレモンを置きに来たなんて思わなくていい。私を苦しめたあいつを爆死させるつもりで、悪意ある笑みをいっぱい浮かべてレモンを置けばいい。
あいつのうるさい返事が、悲鳴に聞こえるくらい、世界は圧倒的に平和になるだろう。
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