エッジ

あなたの「エッジ」はどこですか。

「私のエッジから観ている風景―日本籍で、在日コリアンで―」を読了。http://www.bunanomori.jp/index.php 

帰化は小学一年生のとき。当時の夢は警察官になること。
おばあちゃん子で育った25歳日本籍在日コリアン3世が綴る自分や家族の日常と、日本社会の交わる風景。
おいしいキムチやチャンジャにはしゃぎ、デマサイトやヘイトスピーチに憤り、
多様性や寛容さが失われつつあるこの国のもうひとつの声に耳を傾けてください。
(ぶなのもり、紹介ページより抜粋/http://www.bunanomori.jp/new.php#myedge)

同書を、著者である金村詩恩さんからご恵贈いただき、少しずつ読み進めていました。普段はわりと速いスピードで読書する方なのですが、同タイトルの「ブログをまとめた」というライトな語り口で書かれた文章は読み終えるまでに私としては長めの時間を要することになりました。

金村さんと私には共通点があります。
日本国籍の在日3世
という共通点が。

一方、私たちの間には違いも存在しています。
金村さんは在日として生まれ育ち、小学生の時に「帰化」をしていること。私は生まれながらにして日本国籍を有していて、在日であることを中学生まで知らずに育ってきたこと。

私が金村さんの著作をスムーズに読み進めることができなかったのは、私と金村さんの間の「違い」が思っていた以上に、大きなものであることを、本書を読み進めるにしたがって鋭く突き付けられることになったから。

同じ「在日3世」の枠組みの中にあっても「韓国籍を持つ人」「”朝鮮籍”を持つ人」と「帰化した人」と「もともと日本国籍を持って生まれた人」との間には差違があって、さらにそれぞれの生まれ育った環境や家庭や個人で民族や個人のアイデンティティの立ち位置も異なる。

こう書いてしまうと当然でしょ、と思えるこの違いは、同じ「エッジ」を共有できないほど深いものであり、いかに私自身が「マジョリティ」として彼らの直面する困難に無関心であったか、身近でありながら思っていた以上に遠くに位置しているものであったか、と思い至らせるほどのものでした。

こうしてうまく言葉を紡げないのは、読後、至極個人的な領域でまだ消化しきれない想いを抱えているからです。

金村さんと私との間に横たわった差違は、日本国籍を持たない私の家族と日本国籍を持つ私との間の、決して埋まることはない、近づきがたい「距離」を思い起こさせます。(とても仲の良い家族であるのにもかかわらず・・・)

この「私のエッジから観ている風景」に綴られた金村さんの言葉の数々がこれほどまでに響くのは、きっと、それが真っ直ぐで、等身大で、偽りのない日々を切り取ったものだからです。同じ空の下に生きている人間の息遣いが間近に感じられるものだからです。

その清々しさとエネルギーをまざまざと感じさせるテンポの良さは、「読み物」としてぜひ読んでみてください!と周囲に勧めたい良書でもあります。

この生々しい発信。マジョリティである人も、マイノリティである人も、どちらでもあり、どちらでもない人にとっても、この本の中で語られる「風景」の前に立ち、自らのエッジはどこであるかと探す旅路はきっと、奥深く、意義深い。


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