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「時代性」が強く出た笑い スネークマンショー

芸術における三要素のうち、
(私なりの理論)

芸術性の三要素
・普遍性がある
・言葉で表現できないもの
・哲学的な題材

「普遍性」にまつわる
話を書いていきます。

前回の記事では、

'80年代に流行った
漫才ブームのネタ、
『ひょうきん族』について
触れました。

前回の記事で書いたことを
要約すると、

それらは20年後の私から見ると、
「旬を過ぎた笑い」に感じた
という話でした。

一方で、私は、
同じく20年前に流行っていた
YMO にもハマっていました。

YMO の普遍性については、
また別の記事に改めるとして、

YMO の作品の中にも、
お笑いの要素が
あったんですよね。

それが'80年に発表された『増殖』

'83年に発表された
『サーヴィス』
という二つのアルバムでした。

これらのアルバムには、
曲と曲の間に、
コントが挟まれた
構成になっているのです。

『増殖』には、
スネークマンショーが
参加しています。

スネークマンショー
桑原茂一、伊武雅刀、
小林克也によるユニット。
'70~'80年代に
ラジオでコントを披露した。

スネークマンショーは、
ラジオ番組がきっかけで
結成された限定的なユニットで、

そのラジオ番組も
音楽との結びつきが強い内容でした。

そんなこともあって、
番組のファンだった細野晴臣、
高橋幸宏のリクエストで

アルバムに
彼らのコントが
収録されることになったのです。

メンバーの桑原茂一は、
アメリカのカルチャー誌
『ローリング・ストーン』の
日本版の編集に携わった方で、

その後、'82年には
原宿のクラブ
「ピテカントロプス・エレクトス」を
開業するなど、

音楽畑に属するプロデューサーです。

伊武雅刀は、現在も俳優として
活躍していますし、

小林克也は、
『ベストヒットUSA』でも
おなじみの DJ ですよね。

『ベストヒットUSA』
'81~'89年にテレビ朝日系列で
放送されていた音楽番組。
洋楽の MV を紹介していた。
'03年から BS朝日で復活し、
現在も放送されている。

つまり、スネークマンショー
というのは、
お笑い畑でない人たちによる
コントだったんですね。

これも私は17歳の頃に出会って、
よく聴いていました。

最初は、正直言って、
意味がわからなかったんです。

意味がわからないけど、
おもしろいという感じですね。

「シュール」というやつです。
「ナンセンス」ですね。

それで、20歳の頃の私には、
この辺の所が
まだよくわかって
いなかったんですが、

スネークマンショーのコント
というのは、
ナンセンスギャグでは
あるんですけど、

突拍子もない設定でもないんです。

当時の時代の空気感を
取り入れた時事ネタでも
あったんですよね。

例えば、『増殖』の
最初に収録されたコントは、

日本の首相が
アメリカの大統領と
おぼしき人物と
会談するコントなんですね。

(劇中にそういった状況の
 説明はほぼない)

二人は英語で話すのですが、

首相の方は、
何か質問をされても、
要領を得ない返答しかしません。

要領を得ないどころか、
自分の話している言葉の中に

「A」とか「B」
といったアルファベットが
出てくるたびに、

発音しづらそうに、
どもる感じなんですね。

(この辺りの大袈裟な芝居は、
 はじめて聴いた時から、
 おもしろく感じた)

会話が進むうちに、
どうやらこの人は英語が
まったくわかっていない
と判断した大統領は、

日本人をバカにするような
発言を連発します。

(「Japanese is pig!」
 日本人は豚だ!
 「Japanese is yellow monkey!」
 日本人は黄色い猿だ!)

それに対しても、
日本の首相は意味がわからず、
愛想笑いをするばかりです。

つまり、このコントは、
痛烈な社会風刺も
入ったコントなんですね。

劇中に登場するのは、
大平首相で、
(名前に「O」が入っているので、
 自分の名前すら、どもる)

実際に英語が苦手だったかは
定かではありませんが、

演説や答弁の際に
「あー」とか「うー」
といった声を発する人
だったそうです。

これはスネークマンショーの
一つのコントの話ですが、

このように、
スネークマンショーのコントは
ナンセンスギャグでありながらも、

当時の時代背景がわからないと、
完全にはおもしろさが
わからないネタが多いんですね。

社会風刺とか、
ナンセンスといった
尖った笑いが

当時の YMO の音楽には
非常に合っていたんです。

ただ、『ひょうきん族』
と同じように、
20年後にはじめて聴いた
私からすると、

やはり完全には
理解しがたい笑いでした。

(ナンセンスの部分には
 普遍性が感じられる。
 舞台背景に
 時代性が強くあるのは、
 普遍性とは真逆の志向)

長くなってしまったので、
『サーヴィス』に収録された
コントについては、
次の記事に書きましょう。

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