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映像で読み解く(27)ドラマ『孤独のグルメ』(2012~)

シーズン1から11年を迎える
テレ東の看板ドラマ

『孤独のグルメ』は、
久住昌之(原作)、
谷口ジロー(作画)による
マンガ作品です。

’94~’96年に『月刊PANJA』、
'08~'15年に『SPA!』に掲載され、
'12年に深夜ドラマとして
映像化されました。

ドラマの方は、
現在もシリーズが続いており、
昨年の放送でシーズン10を迎え、

ここ数年は、大晦日のスペシャルも
恒例となっています。

内容は、輸入雑貨商を営む
井之頭五郎(松重豊)が
仕事の合間に訪れる飲食店での
食事をメインにしたドラマです。

本編終了後には、
毎回、舞台となったお店に
原作者の久住昌之が訪れる
「ふらっとQusumi」なる
ミニコーナーもあります。

このようなグルメを主体にした
テレビドラマが長く放送されるのは
異例のことで、

深夜ドラマでありながら、
今ではテレビ東京を代表する
コンテンツの一つです。

そんな人気ドラマの映像の
隠された魅力に迫ります。

遠近の使い分けでメリハリをつける

本編は正味20分程度の
短いドラマとなっています。

しかしながら、その中には、
人間ドラマもあれば、
おいしさを伝える魅力的な
料理の映像もあるんですよね。

これらの異なる要素を
一つの作品としてまとめるには、
それなりの技巧が必要です。

ほとんどの回の冒頭は、
井之頭が仕事で訪れる
さまざまな土地の外観から
はじまります。

外の風景では、
引きのショットが多用され、

主人公から見た世界だけではなく、
その土地ごとの空気感が
伝わってくる映像です。

最初に注目したいのは、
「遠近」の使いわけですね。

前述したように、
本編の序盤では引きのショットを多用し、
広い画面が印象的です。

そうすると、必然的に
画面に映る人物は
小さくなるわけですが、

そこから一気に画面を引き寄せて、
人物を大きく映し出して、
メリハリを付けています。

もっとも特徴的なのが、
毎回必ずあるくだりで、
観たことのある方ならば、
おなじみのシーンですが、

劇中で井之頭が急に
「お腹が空いた」
というカットが挟まれます。

このセリフの前には必ず、

遠めのショット、
中間くらいのショット、
顔のアップという構成の
カットが挿入されるんです。

この時は BGM が無音になり、
「ピン」「ポン」「パン」
といった効果音が
画面の変化に合わせて流されます。

この斬新なカットの組み合わせは、
本作ならではの特徴です。

このカットのあとは、
リズミカルな BGM に切り替わり、
井之頭が食事をするお店を
探すパートに移行します。

ナレーションと演技の
タイミングがバッチリ

メインともいえる、
食事風景のパートでは、
料理のおいしさが際立つような
ショットが多く出てきます。

店員とのやりとり、
常連客の立ち振る舞い、
といった描写を挟みつつも、

井之頭の口数は少なく、
おもに心の声を反映した
ナレーションによって
ドラマが展開されていきます。

食事をする演技と
ナレーションのタイミングが
バッチリ合っていて、

あまりにもピッタリなので、
どうやって撮っているのか、
気になって調べてみました。

すると、食事パートでは、
台本を決め過ぎず、
主演の松重豊が実際に
食事をした感想をもとに、

その場で脚本を書き換え、
俳優のアドリブなども
積極的に取り入れているようです。

しかも、ナレーションの収録も、
撮影が終わってすぐに、
ロケバスの中などで行われています。

だからこそ、食事風景と
ナレーションの熱量が
ピッタリ合って、
臨場感が感じられるのでしょうね。

見過ごされがちですが、
劇中の音楽は原作者の
久住昌之が率いるバンドが
演奏したもので、

ギター、ウクレレ、縦笛など、
さまざまな楽器を使って、
演奏された幅広いジャンルの
楽曲になっています。

特に、ブルース色の強い楽曲は
味があっていいです。

実写化作品の音楽まで
やってしまうとは、
なんとも多才な原作者ですね。

番組最後の原作者による
食レポもシンプルに
料理やお店の良さを伝える

素朴なコーナーになっていて、
好感が持てます。

このコーナーで毎回のように、
お酒を飲む久住の表情も
また、たまりません。

【作品情報】
2012年~放送
制作国:日本
演出:溝口憲司、宝来忠昭
出演:松重豊、久住昌之
放送局:テレビ東京

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