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映像で読み解く(26)MV『Virtual Insanity』(1996)

ファンクの最大ヒット曲、
長きにわたって親しまれる

イギリスのジェイ・ケイによる
ソロ・ユニット、ジャミロクワイの
最大のヒット曲で、

この MV は、’97年の
MTV Video Music Awards で
4冠を達成しています。

(最優秀ブレークスルービデオ賞、
 最優秀ビデオ賞、
 最優秀視覚効果賞、
 最優秀振付賞)

また、本楽曲を収録したアルバム
『Travelling Without Moving』は、
全世界で800万枚を売り上げ、

(うち日本での売り上げは140万枚)

「世界でもっとも売れた
 ファンクアルバム」として、
ギネス認定されています。

日本でも’97年に MD ウォークマン、
’10年に日清カップヌードル、
’17年にトヨタ・カローラフィールダー、

と、ほぼ10年間隔で、
複数の CM に使われていたため、
耳馴染みがある方も
多いのではないでしょうか。

地下に暮らす未来の人類

この楽曲は日本とも
繋がりが深い楽曲でもあります。

というのも、ジェイ・ケイが、
この楽曲を手掛けたのは、
札幌を訪れた時でした。

’95年の2月、真冬のことです。

彼は、人通りが少ない街を見て、
不審に思い、たまたまそこに通りかかった
地元の老夫婦に尋ねました。

すると老夫婦はジェイ・ケイを
地下街に案内したそうです。

さっぽろ地下街「ポールタウン」
(Wikipediaより引用)

そこにはたくさんの人たちが
行き交うもう一つの街の風景が
ありました。

この光景にインスピレーションを受けた
ジェイ・ケイは、そのままホテルに戻り、
すぐに歌詞の制作に着手したのです。

たしかに『Virtual Insanity』の
歌詞を見ると、
地底で生活する未来人のような
描写があります。

Oh now there is no sound,
for we all live underground
(あぁ 音も聞こえない
 地下で暮らす僕達にはね)

『Virtual Insanity』歌詞より

そして、MV のイメージも
これに通じるものがありますね。

よ~く見て!動いてるのは床じゃない

この MV は、ほぼ一つの部屋で
撮られたもので、
画面の視点もほぼ全編にわたり
固定されています。

真っ白な部屋の中で、
ジェイ・ケイが歌いながら、
踊るシーンが続き、

時折、画面が上下に切り替わり、
別の部屋らしきものも出てきますが、
その切り替えは
数えるほどしかありません。

よく見ると、床が動いているように
見えますが、
実際には、床は動いていません。

壁の方をよく見てみると、
グラグラ揺れているのが
わかるでしょう。

実は、この MV は、
ベルトコンベアーのような
床が使われているのかと思いきや、
セットが動いているのです。

このセットの外側には、
何十人ものスタッフがいて、
彼らが一斉に一方向へと壁を押し、
セットを動かしているんですね。

床が動いて見えるのは、
ジェイ・ケイの巧みなステップの
せいでもあります。

彼の足運びは、
まるで地面を滑っているように
スムーズなため、

地面が動いているかのように
錯覚するのです。

視点をほぼ固定にしていも、
これだけの躍動感が出せるのは、
彼のパフォーマンス力の高さが
あってのものでしょうね。

視点を固定させたことによって、
時折出てくる画面の切り替えの
心地よさも、際立っています。

【作品情報】
1996年公開
制作国:イギリス
アーティスト:ジャミロクワイ
監督:ジョナサン・グレイザー
レーベル:ソニー・ミュージックエンタテインメント


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